死刑判断「2人殺害」焦点 碧南夫婦強殺事件
讀賣新聞 2015年12月13日
愛知県碧南市の民家で1998年6月、夫婦を殺害し、現金などを奪ったとして、強盗殺人罪などに問われた住所不定、無職堀慶末(よしとも)被告(40)の判決が15日、名古屋地裁で言い渡される。死刑判断について最高裁が示した永山基準に沿って、検察側は死刑を、弁護側は死刑回避をそれぞれ主張しており、裁判員の判断が注目される。
主な争点は、パチンコ店役員の馬氷一男(まごおりいちお)さん(当時45歳)への殺意の有無と、妻・里美さん(同36歳)殺害について、堀被告の共謀が成立するか否かだ。2人殺害か、偶発的に1人を死亡させてしまったかで量刑は大きく変わる。
検察側は論告で、堀被告は馬氷さんの知人を装って共犯の男2人と共に押し入り、共犯者に里美さん殺害を依頼したと指摘。里美さんが殺害された後に外出先から戻り、帰宅した馬氷さんを口封じのために殺害したとして、「2人への強盗殺人が成立する」とした。
強盗殺人罪は死刑か無期懲役だが、検察側は2人を殺害したことや、極刑を望む遺族の処罰感情を考慮して「無期懲役では不十分」とした。
弁護側は里美さん殺害について「共犯者が勝手にやった」として共謀を否定。馬氷さんを死なせたことは認めたが、暴れたのを押さえようとした偶発的な結果で強盗致死にあたるとし、「死刑は回避すべきだ」と主張した。さらに、2人への強盗殺人罪が認められたとしても、「無期懲役が妥当」とする。過去の裁判例で、事前に殺害の計画性がなく2人が死亡した強盗殺人事件15例のうち、10例が無期懲役になっているためと主張した。
堀被告は2007年に名古屋市千種区で帰宅途中の女性を拉致して殺害するなどした「闇サイト殺人事件」で無期懲役が確定している。
永山基準では、前科の有無も判断材料とされるが、堀被告は碧南事件を起こした時点では、闇サイト事件を起こしていないため、検察側も言及しなかった。
ただ、南山大の丸山雅夫教授(刑事法)は「闇サイト事件の衝撃が大きかっただけに、裁判員も先入観をぬぐい去るのは容易ではないだろう。検察側と弁護側の主張も対立しており、裁判員は難しい判断を迫られる」と指摘している。
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◎上記事は[讀賣新聞]からの転載・引用です
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◇ 「凶悪犯罪」とは何か(1~4) 【4】裁判員制度と死刑事件について
◇ 「凶悪犯罪」とは何か(1~4) 【3】裁判の重罰傾向について
◇ 「凶悪犯罪」とは何か(1~4) 【2】 光市事件最高裁判決の踏み出したもの
◇ 「凶悪犯罪」とは何か(1~4) 【1】3人の元少年に死刑判決が出た木曽川・長良川事件高裁判決
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