2016年12月29日
<事件事故ファイル2016>(上) 興正寺問題
「中京大へ売った土地代は、もうなくなっているらしい」
高野山真言宗の別格本山、八事山興正寺(名古屋市昭和区)の関係者の間で、こんなうわさがささやかれたのは昨春のことだった。
二〇一二年の中京大への寺所有地売却を巡り、総本山の金剛峯寺(和歌山県高野町)が、興正寺の梅村正昭(せいしょう)前住職(68)を罷免。だが、前住職は現在も寺を実質管理し、高野山側との訴訟に発展していた。正常化を求める檀家(だんか)の一人が、匿名で名古屋国税局に通報したという。
国税局の税務調査で、寺が六億六千万円の申告漏れを指摘されたことが今年七月に判明。調査は、土地売却代百三十八億円の使途も浮かび上がらせた。
金の大半は、NPO法人役員の男性(73)が代表を務めるコンサルタント会社(東京都港区)など多方面に億単位で流れ、寺の預金口座の残高は十一億円余になっていた。無利子や無担保の貸付金もあり、業務委託費の一部は国税局に「実態が不明瞭」と判断された。
「許し難いことだ」。興正寺の特任住職に就いた総本山の事務方トップの添田隆昭(りゅうしょう)宗務総長(69)は八月中旬、名古屋市内で開いた記者会見で憤った。
総本山側の弁護団は翌九月、前住職やNPO法人役員らが八十億円余を不正に支出したとして、業務上横領と背任容疑の告訴状を名古屋地検に提出した。
一方、前住職の弁護人は「合理的な契約に基づいて支出されており、なぜ刑事告訴の対象となるのか理解できない」と主張する。契約はいずれも前住職名義で契約書や公正証書が作成され、刑事責任を問うハードルは高いとみられる。
巨額資金の最終的な行方などの全容解明は道半ば。寺の明け渡しや罷免の取り消しなどを求める、総本山と前住職側の訴訟合戦も続く。「寺が正常に戻りさえすれば、もうそれでいい」。寺関係者からはそんな嘆きも漏れる。 (安福晋一郎)
◎上記事は[中日新聞]からの転載・引用です
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◇ 高野山側が告訴状提出 八事山興正寺 梅村正昭前住職、横領容疑など 2016/9/14
◇ 八事山興正寺 寺の正面にプレハブ「本堂」…罷免前住職に実効支配されているため 2015/11/25 落慶法要
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