「闇サイト殺人事件」名地裁 2被告に死刑、1被告に無期判決 

2009-03-18 | 死刑/重刑/生命犯

<闇サイト殺人>2被告に死刑、1人に無期判決 名古屋地裁
(毎日新聞 - 03月18日 12:22)
 名古屋市千種区の派遣社員、磯谷利恵(いそがい・りえ)さん(当時31歳)が07年8月、拉致・殺害された事件で、強盗殺人などの罪に問われた闇サイト仲間の3被告に対し、名古屋地裁の近藤宏子裁判長は18日、神田司(38)、堀慶末(よしとも)(33)両被告に求刑通り死刑、川岸健治被告(42)に無期懲役(求刑・死刑)を言い渡した。検察側は「3人の刑事責任は等しく重大だ」と訴えたが、近藤裁判長は「神田被告が主導的役割を果たした」と認定した。
 判決は、3被告が事件当日の07年8月24日、名古屋市緑区のレンタルビデオ店の駐車場の車内で強盗を計画した際、堀被告が「どうしても30万円が欲しい」、神田被告が「今日中に女性を拉致・監禁して(銀行口座の)暗証番号を聞き出し、金を引き出そう」と提案したと認定。その際、「最後は殺してしまうけどいいですか」との神田被告の提案を、他の2被告が了承したとして、事件前に3被告が殺害を計画していたと認めた。
 また3被告はこの後、同市北区のファミリーレストランに移動して話し合いを続けた。判決は、強盗殺人の共謀の成立時期については「遅くとも午後7時ごろ、ファミリーレストランを出発した時」とした。
 殺害の計画性を巡っては、検察側が論告で「当初から拉致・殺害を認める合意があり、事件当日に再確認した」と強調。一方、弁護側は「寄せ集めの集団で、意思の通じ合いがない行き当たりばったりの犯行。事前に具体的な殺害方法や場所を決めておらず、殺害も突発的だった」と計画性を否定していた。
 日本弁護士連合会によると、最高裁が83年に「永山基準」と呼ばれる死刑の判断基準を示して以降、被害者が1人の殺人事件で死刑が確定したのは、身代金目的誘拐や仮釈放中の事件が大半を占める。だが検察側は「無差別に拉致・殺害し、社会を震撼(しんかん)させた」と死刑を求刑。弁護側は「過去の死刑確定事件に比べ、特別悪質とは言えない」と訴えていた。
 判決によると、携帯電話の闇サイトで知り合った3被告は07年8月24日未明、名古屋市千種区内の路上で帰宅途中の磯谷さんを車内に連れ込み、25日未明、愛知県愛西市内の駐車場で頭を金づちで殴り、首を絞めるなどして殺害。現金約6万2000円などが入ったバッグを奪った。【秋山信一】
 【ことば】▽永山基準▽ 最高裁が83年7月、連続射殺事件の永山則夫元死刑囚への判決(永山判決)で示した。(1)事件の罪質(2)動機(3)態様(特に殺害手段の執拗=しつよう=性・残虐性)(4)結果の重大性(特に被害者数)(5)遺族の被害感情(6)社会的影響(7)犯人の年齢(8)前科(9)事件後の情状--を総合的に考慮し、責任が極めて重大でやむを得ない場合に死刑選択が許されるとした。
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〈来栖のつぶやき〉
 峻烈な被害者感情・社会状況から、死刑を選択しないわけにはいかない苦渋の決断となるのかなと思っていた。一人に死刑、二人に無期懲役で凌ぐのかな、と。
 が、裁判長、積極的だったようだ。この判例は、今後に影響力を持つ。原告、被告側双方が控訴するのではないか。高裁の判断は、どうだろう。
 「木曽川・長良川殺人事件」の判決を思い出した。
“「凶悪犯罪」とは何か”「三人の元少年に死刑判決が出た木曽川・長良川事件高裁判決」
村上 名古屋の事件というのは、いわゆる木曽川・長良川事件といわれるリンチ殺傷事件(1994年)で、19歳前後の少年たちが、大阪で1人の若者を死に至らしめ、その後愛知に移って、愛知の木曽川で、1人の若者を死に至らしめ、そして長良川河川敷で2人の若者を死に至らしめた事件であります。
 その前に、名古屋では大高緑地アベック殺人事件(1988年)というのがあり、当時、少年または少女たちによる凶悪犯罪として大きく報道され、それに続くものとして、この木曽川・長良川事件が起きましたので、名古屋では相当衝撃的な事件として報道されていたわけです。
 この事件は、少年たちが出会って集団になってから20日前後から1ヵ月半程度しか経っていない段階でこの犯罪が起きているというのが特徴的です。
 この木曽川・長良川事件は、1審で1人が死刑で、2人が無期となりました。そして、そこで、死刑と無期に分かれた論理は、主犯格か従属的な立場だったかが主な形で区別されたわけです。その後、控訴され、検察官は3人ともに死刑を求刑し、名古屋高裁におきまして3人とも死刑判決が下されたのです。
 裁判をやっていくなかで、私が一番感じたことですが、この木曽川・長良川事件以外の他の事件の中で被害者の方の意見陳述という制度が導入されてきまして、被害者感情が裁判にそのまま導入されてきているなぁというイメージがありました。でもそれは、犯罪事実の認定だとかそういうことには影響しないと言っているんですけれども、被害者遺族が被害感情を強く法廷で言うことによって、裁判官は、被告人にとって一番シビアな犯罪事実の認定を選ぶというような効果があるのではないかという危惧感をもっておりました。
 当時、この木曽川・長良川事件で自分が担当している被告人に対して死刑判決はないと確信しておりました。証拠調べが終わった最後に、4人の遺族の代表的な方が、被害者意見陳述で痛烈に被告人3人を非難しました。そこでは、死刑という言葉は使われてはいません。ただ、この3人は絶対許せないという形で、法廷にそのままの形で感情が入ってきました。そのときに、この被害者意見陳述が裁判所にどういう影響を与えるんだろうと危惧感を感じました。実際、判決を聞いたときに、被害者意見陳述の内容がそのまま判決の構成になっているというのを感じました。


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