応報の行方 海外注視
中日〈東京〉新聞2012年8月26日 朝刊
李明博・韓国大統領の上陸以降、海外からも注目が集まっている竹島問題。日韓両国と同盟を結び、北朝鮮や中国の動向を注視する米国は、日米韓の結束のほころびを懸念する。欧州メディアの一部も、竹島問題の歴史的経緯などを紹介。東南アジアでは、南シナ海で中国と南沙諸島の領有権を争うフィリピンが「身近な問題」として関心を寄せている。
米国 対北連携乱れを懸念
米政府は日韓の対立激化にいら立っている。いずれも重要な同盟国だけに一方を擁護するわけにはいかない。とはいえ関係悪化を放置すれば、北朝鮮の核・ミサイル開発問題に対処する日米韓の結束がほころぶ。米国としては、両国に対話を呼び掛けるほかないのが実情だ。
米国務省のヌランド報道官は二十三日の記者会見で「日韓の不和は気分のいいことでは当然ない」と言い切った。「問題を対話で解決してほしい」と繰り返し日韓両国に要請。「われわれはこの問題で特定の立場を取らない。二国間の解決を望む」とも強調した。
日本は国際司法裁判所(ICJ)への提訴に米政府の支持を取り付けようとしている。訪米した外務省の杉山晋輔アジア大洋州局長は二十二日に米当局者と相次いで会い、日本政府の方針を説明。米国は中立の立場を崩さなかったとみられる。
両国との同盟は米国がアジア太平洋重視の政策を進める土台だ。北朝鮮の脅威に加え、台頭する中国をにらんだ米軍再編も日米韓の緊密な連携が前提になる。日韓の対立は米国の世界戦略にも影を落としかねない。(アメリカ総局・竹内洋一)
欧州 仏紙「冷戦の雰囲気」 雑誌 事実に絞り報道
フランスの日刊紙リベラシオンは十六日付紙面で現状を詳しく伝え、二十四日付でも尖閣諸島、北方領土を含む日本の領土問題について、まるごと一ページを使って報じた。
「冷戦時代の雰囲気」と、日本と周辺国の緊張関係を形容し、竹島問題の背景に、植民地支配以来の日韓関係がある点を強調。日本は謝罪してはいるものの真剣な反省に欠けるとし、「過去が現在を毒し続けている」としている。
また、アジア専門家の見方として、韓国などは、日本の野田政権の力をはかっているが、野田政権側は経験に欠け、領土問題で手詰まりになっているとの分析も紹介した。仏ルモンド紙は二十一日付で、竹島問題が日韓経済に悪影響を与える可能性を指摘した。
ドイツの週刊誌シュピーゲル(電子版)は十日付で李明博大統領の竹島上陸を速報。オーストリアのデア・シュタンダード紙は二十四日付の電子版で、韓国が野田佳彦首相の親書を返送したことを報じ「外交慣例上あり得ない」との藤村修官房長官の発言を引用。両メディアの報道とも事実関係に絞った内容だった。いずれの欧州メディアも記事中で「竹島」と韓国名「独島(トクト)」を併記している。 (パリ支局・野村悦芳、ベルリン支局・宮本隆彦)
フィリピン 中国と摩擦「身近な関心」
南シナ海で中国と南沙諸島の領有権を争うフィリピン在住の政治学者ラモン・カシプル氏は、日本が国際司法裁判所への共同提訴を韓国に提案したことを評価。中国との領有権問題を国際海洋法裁判所に持ち込もうとしているフィリピンと同じ立場と捉えるからだ。
「領有権問題は国際機関の判断を仰ぐべきだ。自国の主張が正当ならば、国際機関に訴えることができる」と指摘する。野田佳彦首相の親書が韓国側から返され、日本側も受け取りをいったんは拒んだことを「稚拙」としながらも、「領土問題は、このようなやりとりはある程度避けられない」と、一定の理解を示した。
一方、地元のジャーナリストは「一般市民が竹島問題に関心を寄せている。中国との領有権問題を抱えているため、身近な問題として受け止めているようだ」と説明する。
フィリピン外務省は、本紙の取材に対して「まだコメントする段階にない」と、静観する構えを示した。(バンコク支局・寺岡秀樹)
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◆ 日本が「大国」中国の領土欲をはねつければアジアの国々に勇気を与え、屈すれば信用はがた落ちとなる 2012-08-23 | 政治〈領土/防衛/安全保障〉
【産経抄】
産経ニュース2012.8.22 03:04
日露戦争で日本が大国ロシアを破ったときは、アジアの人々に大きな勇気を与えた。ベトナムやインドの独立運動を強く刺激したことは間違いない。当時15歳だった後のインド首相、ネールがその感激を著書『父が子に語る世界歴史』に書き残したことは有名である。▼尖閣諸島や竹島をめぐる「事件」に対する東南アジア諸国の反応がその歴史を思い起こさせてくれた。中国の南シナ海での覇権拡大に直面するベトナムやフィリピンが注視しているからだ。とりわけ日本が中国にどう対応するのかへの関心は強い。▼本紙、青木伸行記者の報告によれば、ベトナムの元外交官は「日本とベトナムは中国相手に似た状況にある」と言う。だから「情報の交換、共有など協力すべきだ」と述べたそうだ。ベトナムは南沙諸島などの領有をめぐり中国との対立が激化している。▼フィリピンの政府筋も南シナ海の関係国と日本との協力を呼びかける。そうすれば「中国への『鉄拳』になる」と激しい。中国の覇権主義にいかに悩まされているかである。一方でベトナムの元外交官は韓国に対しても「助言」を忘れない。▼韓国が竹島で過熱しているのは「中国のわな」だというのだ。中国はいずれ韓国と係争中の離於島に矛先を向けてくる。そのために韓国の目を日本に集中させているという。だが韓国も「早晩そのことに気づき日本との関係維持に動く」と、シビアに見る。▼日露戦争時と今とではアジアの情勢は全く違う。だが日本が「大国」中国の領土欲をはねつければ、同じようにアジアの国々に勇気を与える。逆に屈するようなことになれば信用はがた落ちとなる。野田佳彦首相らはその点も肝に銘じるべきである。
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◆中国 増長する威圧経済外交~南シナ海紛争/「永遠の摩擦」覚悟を~東シナ海の尖閣諸島 古森義久 2012-08-11 | 国際/中国
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