産経ニュース 2016.6.28 05:03更新
【主張】「人殺し予算」発言 現実的な防衛論が必要だ
国民の生命と安全を守る現実的な論戦が国政選挙には求められる。常軌を逸した扇動的発言は百害あって一利なしだ。
共産党の政策責任者である藤野保史政策委員長がNHKの討論番組で、防衛費を「人を殺すための予算」と語った。番組後に「不適切だった」と撤回した。
自衛隊を「人殺しの組織」と決めつけたかったのだろうか。暴言の撤回は当然である。命をかけて国民を守っている自衛隊員を侮辱したことにもなる。本人も政党としても謝罪すべきだ。
共産党をはじめとする戦後日本の左派陣営の多くは、自衛隊を「違憲の組織」と決めつけ、国と国民を守る役割を否定してきた。防衛力整備にもいつも反対し、予算を削減し、他の政策に回すよう要求してきた。
これでは、国と国民を守る現実的な方策を論じる共通の土俵には立てない。この機会に、今までの不明を国民にわび、自衛隊は合憲であり、日本には防衛力が必要であることを肯定してはどうか。
発言を撤回した藤野氏の釈明もよく分からない。「戦争法(安保法制)と一体に海外派兵用の武器・装備が拡大している」という限定をつければ、問題発言にはならなかったという認識らしい。抑止に必要な武器の攻撃力について、「人殺し」との発想は消えていないではないか。
自衛隊の海外派遣装備が、防衛費の性格を左右するほど拡大している事実もない。
そもそも、安保関連法の本質は共産党がレッテル貼りする「戦争法」とは異なる。日米同盟を強化し、平和を保つための戦争抑止法である。
番組では、自民党の稲田朋美政調会長ら他党の討論者も発言の訂正などを促したが、民進党の山尾志桜里政調会長がコメントしなかったのはどうしたことか。
「民共協力」を考慮して批判的な見解を避けたのか。共産党との共闘そのものに無理があることを露呈した場面といえよう。
安保関連法廃止を唱える野党4党の主張は、日本を取り巻く安保環境を的確に認識せず、日米同盟の抑止力を強化する具体策を語らない点で、現実性を欠いている。与党側も積極的に安保論議を行うことには慎重だ。国政選挙だからこそ、具体的に掘り下げた政策をぶつけ合ってほしい。
◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です