米、グアム移転予算削除/日本は『米軍基地の国外移転』と『対等な日米関係』という"普通の国"を目指すべき

2011-12-14 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉

普天間固定化に現実味 民主党政権、無為無策のツケ
産経ニュース2011.12.13 23:59
 米議会による在沖縄海兵隊のグアム移転経費の削除合意は、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)移設計画の実現性に公然と疑問符を突きつけたに等しい。これに伴い、政府は平成24年度予算案からグアム移転関連予算を大幅削減せざるを得ないが、沖縄県との交渉の根拠を失うことになりかねない。民主党政権の迷走と無為無策のツケはあまりに大きい。(半沢尚久)
 「非常に残念だ。日米合意に基づき移転が円滑に進むよう米政府に働きかけを強める必要がある」
 一川保夫防衛相は13日の記者会見でそう述べたが、もはや働きかけの時機は逸した。政府は、23年度予算でグアム移転関連予算を約520億円計上したが、24年度予算案では100億円未満となる見通し。23年度予算の米側への年度内拠出も見合わせる方向で調整している。
 これにより野田佳彦首相の目算も大きく狂った。11月の日米首脳会談では移設進展の証しとして名護市辺野古への移設に関する環境影響評価書の年内提出を対米公約に掲げ、20日をメドに評価書を沖縄県に提出する方針だったからだ。
 ところが、米議会の合意には、支出凍結解除の条件として普天間移設での「具体的な進展の保証」を示すことが明記された。評価書を提出しても地元の同意を得られる見通しはなく「進展」にあたらないと見透かされていたわけだ。
 それだけに首相は、評価書を年内提出すべきか再考を迫られている。前沖縄防衛局長の不適切発言などで沖縄県は態度を硬化させており、この状況での評価書提出は反発を増幅させかねないからだ。グアム移転関連経費削減も「普天間移設だけをゴリ押しするのか」との批判を招きかねない。
 沖縄県の仲井真弘多知事は13日も「辺野古では時間がかかるから日本国内の別の場所の方が断然早い」と県外移設を重ねて求めており、評価書を受け取っても辺野古埋め立てを許可する可能性は小さい。沖縄県選出の国民新党の下地幹郎幹事長も「日米両政府は計画をリセットした方がいい」と突き放した。
 しかも米議会は、普天間飛行場と米空軍嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)の統合案の再考を意図しているとされる。ここで地元同意の見通しのない嘉手納統合案まで検討対象に含めれば収拾がつかなくなる公算が大きい。
 米政府は、海兵隊をオーストラリアなどに分散配置することで東シナ海と南シナ海の全域で即応態勢を敷く計画だった。それだけにグアム移転と普天間移設の停滞はアジア・太平洋の安全保障の根幹を揺るがしかねない。その混乱の元凶は民主党政権によってもたらされたといえる。
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クローズアップ2011:グアム移転費削除 普天間、袋小路に
 米上下両院の軍事委員会が12会計年度(11年10月~12年9月)の在沖縄米海兵隊のグアム移転予算の全額削除で合意したことは、セットとなった米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設計画と合わせ、日米双方で、在日米軍再編計画が根底から揺らいでいることを浮き彫りにした。米議会が普天間移設の遅れを予算削除の理由としたことで、日本政府は同県名護市辺野古への移設に向け、早期進展に向けた結果を見せるほか道はなくなった。しかし、県外移設を求める沖縄県を説得するめどはまったく立たない袋小路だ。
 ◇沖縄説得、政府すべなし
 「何か変更があるということではない。グアム移転を含む現行の日米合意に基づいて取り組む」。藤村修官房長官は13日の記者会見で、政府が同飛行場を辺野古に移設するための環境影響評価書を年内に沖縄県に提出する方針を示した。
 グアム移転事業は、12会計年度予算が削除されても、11会計年度までの予算のうち未消化の予算が残っているため当面は継続が可能だ。ただ、来年6、7月にもまとめられる13会計年度予算でも移転関連予算が認められなければ、計画は根本的な見直しを迫られ、セットとなった普天間移設への影響も必至。今回は、米議会が日米両政府にカネを出すだけの根拠を強く求めた「最後通告」と言える。
 日本政府は評価書提出に続いて、来年6月に沖縄県の仲井真弘多(ひろかず)知事に、移設に必要な辺野古周辺の公有水面の埋め立て申請を行うことで進展を演出するシナリオを描く。だが、足元はぐら付いている。先月、前沖縄防衛局長が沖縄県民や女性を侮辱したと受け取れる発言で更迭され、沖縄との関係は一気に冷え込んだ。一川保夫防衛相も参院で問責決議を可決されてリーダーシップを発揮できる状況にない。グアム移転について日本政府は11年度予算で518億円を計上。12年度予算案の概算要求でも同額を計上したが、年末の予算編成では518億円から大幅に削減する方針だ。
 沖縄では米議会の動きに警戒感と期待感が入り交じる。県幹部は「県外移設を求める沖縄の立場は変わらない」と強調し、辺野古移設の強行や普天間固定化につながらないよう今後の動きをけん制する。ワシントンのシンクタンクなどから情報収集も開始した。
 一方でこの日、米議会の調査スタッフが沖縄入りし、県や名護市の幹部らと次々と面会した。普天間移設の状況を聞き取ったとみられ、米議会の関心の高さをうかがわせた。
 県議会の玉城義和副議長(名護市選出)は「辺野古移設を疑問視する米議会の判断は常識的なもの」と受け止める。その上で「沖縄は米議会と連携し、まずは移設問題を振り出しに戻すことを目指すべきだ」と語る。
 日本政府内では来年6月以降を見据え、開き直りに似た意見も聞こえ始めた。政府関係者の一人は「6月までは淡々と作業を進める。日米それぞれで、その先どうなるかわからないから」。【坂口裕彦、井本義親】
 ◇米議会、「進展」求め圧力
 オバマ大統領は、先月のオーストラリア訪問などでアジア太平洋重視の姿勢を鮮明にし、米国の財政削減論議が「地域の安全保障に影響を与えることはない」との立場を強調してきた。グアムは米軍の西太平洋の拠点として整備が進み、オバマ政権としては、海兵隊移転を含むグアム増強方針を変更するのは避けたいところだ。このため、議会側に「同盟国に対する誤ったメッセージになる」と繰り返し警告を発し移転費の復活を要求してきたが、与党・民主党が多数派の上院からはねつけられた形となった。
 12会計年度の国防権限法案は、米上下両院の軍事委員会の修正合意通り、グアム移転の関連予算約1億5600万ドル(約120億円)を全額削除した内容で、近く両院本会議で可決され、大統領の署名を経て成立する見通しだ。
 実際には、上下両院が合意した案では、あくまでも米政府が要求したアンダーセン空軍基地拡張とフィネガヤン地区の水道施設の2事業、計1億5600万ドルは「年度内に支出が必要ない」として、グアムのインフラ整備が遅れていることを表向きの理由としている。議会筋によると、これまで計上されたが工事の遅れで未消化となっている予算については支出を可能とする内容が含まれており、移転費の「全額削除」という厳しい判断を下しながらも、現時点では、海兵隊のグアム移転計画を白紙撤回する意思がないことを同時に示したものと言える。
 一方で、両院の合意案は、上院案通り、今後の移転費支出の条件として普天間移設の「目に見える進展」を挙げた。13会計年度の国防権限法案の原案が議会でまとまるのは例年6月ごろ。6月には沖縄県議選が予定されており、それまでの間に米議会が納得するような「進展」を望むのは困難だ。日米両政府が来夏以降、米議会と沖縄の双方からの圧力で、普天間移設先を含めた抜本的な米軍再編計画の見直しを求められる事態も想定される。【ワシントン古本陽荘】
毎日新聞 2011年12月14日 東京朝刊
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グアム予算削除 辺野古見直しの好機だ
2011年12月14日 中日新聞 社説
 米上下両院が在沖縄米海兵隊のグアム移転関連予算を削除することで合意した。普天間飛行場の名護市辺野古への移設も暗礁に乗り上げている。これを機に現行計画を全面的に見直してはどうか。
 住宅や学校に囲まれた米軍普天間飛行場(宜野湾市)の日本返還は必要だが、辺野古での代替施設建設が進まないので、現行の在日米軍再編計画が妥当かどうか一度立ち止まって再検討してみよう。米議会はこう考えたのだろう。
 辺野古への県内移設と、沖縄に駐留する米海兵隊員約一万五千人のうち約八千人とその家族約九千人を米領グアムに移すことは「パッケージ」とされている。
 どちらが欠けても普天間返還は実現しないとして、日米両政府は現行計画に固執してきた。
 在日米軍基地の約74%が集中する沖縄県民の基地負担を軽減するためにグアムへの「国外」移転は一つの方策かもしれない。一方、辺野古に新しい基地を造ることには、もともと無理があった。
 藤村修官房長官は記者会見で、予算削除合意が現行計画に及ぼす影響を否定してみせたが、見込み違いも甚だしい。
 地元の反対が強く、実現困難な辺野古移設に固執し続ければ、グアム移転も進まず、普天間返還も実現しない。世界一危険とされる飛行場を米海兵隊が使用し続ける最悪の事態は避けねばならない。
 そのためにも、辺野古への移設を早々に断念して、現行計画全体の見直しにできる限り早く着手する必要がある。米議会がグアム移転関連予算を削除したことは、在日米軍再編計画をつくり直す好機だ。これを見逃してはならない。
 野田内閣は、辺野古移設のための環境影響評価書の年内提出を強行すべきではない。
 かつて米国防次官補として普天間返還問題に関わったジョセフ・ナイ氏は、海兵隊の豪州配備を「賢明な選択だ」と指摘し、マイク・モチヅキ米ジョージ・ワシントン大教授らは在沖縄米海兵隊の米本土移転を主張している。
 これらに共通するのは、沖縄に基地を新設するのは県民感情から難しいということ、海兵隊は沖縄に常駐する必然性はないということだ。海兵隊の沖縄駐留が抑止力になるという論法はもはや説得力を失っている。
 沖縄県民の米軍基地負担を抜本的に軽減するためには、そろそろ「抑止力論の呪縛」から離れた議論が必要ではないか。
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新防衛大綱;「動的防衛力」へ/田母神俊雄著『田母神国軍』2010-12-17 | 政治〈領土/防衛/安全保障〉 
 田母神俊雄著『田母神国軍 たったこれだけで日本は普通の国になる』(産経新聞出版)(p2~)
 “また、鳩山氏の『対等な日米関係』という口ぐせは、現段階の日本にとっては非常に空疎なものです。日米同盟というのは名ばかり同盟で、同盟国・アメリカに非常事態が起っても、カネは出せても彼らを助けるために駆けつけることはできないからです。
 「集団的自衛権は保有するが、行使できない」という世界中探しても日本でしか通用しない理屈で、いちばんの友人の危機に何もできないわけです。
 そんな国が、「明日から対等な関係でよろしく」と言ったところで何の説得力もありません。

 しかし、長期的に考えれば、鳩山氏が当初公約としていた『米軍基地の国外移転』と『対等な日米関係』を日本は目指すべきです。独立国なら、そうあるべきです。
 そのためには我が国が放置してきた問題にも手をつけなければなりません。それは何か。
 自衛隊を国軍にする
 たったこれだけです。
 自主憲法を制定し、憲法第九条の二項で、自衛隊を軍隊として明確に位置づけるだけで、日本は独立国としての道を歩み始めることができます。
 逆に言えば、この自衛隊の国軍化ができなければ、永遠に日米関係は対等ではない。つまり、日本は独立国たり得ないということです。 ”
 “日本人が自国軍をきちんと軍隊として認め、独立国としての体裁を整えたいと毅然と示せば、そのほうが米国軍人にはわかりやすい。米軍だけでなく、世界中にとって、そのほうがわかりやすいでしょう。
 もちろん、アメリカであれ、近隣諸国であれ、日本が真の独立国として立ち上がろうとすれば、政治的には叩いてくるのは火を見るより明らかです。が、そこをくぐり抜けなければ、在日米軍が国外に移転することもなければ、対等な日米関係をきずけるはずもないのです。” 
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一触即発の中国・朝鮮半島情勢。米・韓・中、そして北朝鮮とどう渡り合えばいいのか2011-01-12  (抜粋)
 自分で自分を守る"大人の国"
三原 アメリカとの付き合い方をより真剣に考えていかなくてはいけない段階に入ったと思うんですが、特に尖閣事件では、日米安全保障条約の第5条(注5)の話が出ましたが、はっきりしたことは、日本の自助努力なくして日米同盟はあり得ないという事実だと思いました。そのへん、日本人の認識は甘いですね。
田母神 日本国民のほとんどが知らないと思いますが、第5条で日本が攻撃を受けたらアメリカが自動的に戦争に参加して日本を守ってくれることにはなっていません。まず、大統領が日本を守るよう軍に命令を下さなければ米軍は行動できません。さらに大統領命令は、有効期間は2ヵ月に限定されています。
 それを過ぎると、連邦議会の同意が必要となります。反日的な法案が年がら年中通る議会で、すんなり日本を守る法案が通るはずがない。仮に日本を助けるなんて言ったら、中国は「米国債を全部売りましょうか」「ワシントンに核ミサイルをお見舞いしましょうか」と脅すでしょうね。尖閣問題が、アメリカがリスクを負ってまで乗り出す案件でないことは確かです。
  注5:日米のいずれか一方に対する武力攻撃が起こった場合、両国はそれぞれ自国の憲法上の規定などに従い、共通の危険に対処すると定めている
三原 普天間基地の問題がクローズアップされて、多くの国民は沖縄県民に負担が傾斜していることを実感しましたが、同時に尖閣のことがあって、沖縄本島にアメリカ軍がいる限り、中国が沖縄本島に手を出してこないことも実感したのではないでしょうか。日米安保が抑止の機能を果たしているのは事実です。
田母神 日米関係を維持しながら、自分の国を自分で守る体制がある"大人の国"、あるいは"普通の国"を目指すべきなんです。アメリカの介入をまず望めない国際的な衝突が起きることを、私たちは目の当たりにした。だからこそ、日米安保による抑止の問題とは切り離して、まずは日本の自衛隊が国を守るべく行動できる法整備を考えなくてはならない。
三原 仮に、北朝鮮が今回以上の攻撃行動に出た場合、自衛隊はどこまで動くことができるのでしょうか。
田母神 日本は戦争に出掛けることはできません。朝鮮半島に進出した米軍は、軍人を輸送機で近い日本に運ぶでしょう。その輸送機を北朝鮮の戦闘機が追いかけてきて撃墜するかもしれない。日本のF-15は米軍機を守ろうとするでしょうが、今の法体制だと、北朝鮮機だろうと撃ち落とせば殺人罪が適用されます。
 米軍の輸送機を見殺しにすれば、この瞬間、日米同盟はジ・エンドです。要は、自衛隊も軍なのだから、国際法に基づいて動けるようにしたらいいんです。
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