時遊人~La liberte de l'esprit~

優游涵泳 不羈奔放 by椋柊

空也十番勝負5 青春篇 ~未だ行ならず~(下)

2019-02-12 | 読書
大坂中也として
長崎で
武者修行を続ける
坂崎空也のもとに
薩摩藩八代目藩主
島津重豪元御側御用人
渋谷重兼と
その孫娘にて
空也に
想いを寄せる
渋谷眉月が訪れる
平穏に
武者修行を続ける空也だったが
恨みを抱く
東郷示現流酒匂一派の影が迫っていた
同じ頃
薩摩藩の江戸家老から
呼び出しを受けた
薬丸新蔵改め
薬丸長左衛門兼武は
初めて
江戸藩邸に出向くが…

前薩摩藩主・島津重豪
現当主・島津齊豪の
立会ならじの通告を無視
藩から離脱し
打倒坂崎空也
打倒薬丸新蔵を
追う東郷示現流一派

ここにきて
東郷示現流一派が
薬丸長左衛門兼武のみならず
坂崎空也に
怒りの矛先を向けたのか
その理由が判明
酒匂兵衛入道の嫡子・太郎兵衛は
生れながらにして
口が不自由だったらしいのです

其之壱
具足開きの折り
薬丸新蔵と立会をし
東郷示現流を挑発した

其之弐
口がきけるにも関わらず
周囲を欺き
口を閉ざしていた
空也の態度が
嫡子・太郎兵衛を愚弄した

其之参
その小賢しい考えで
麓館の渋谷重兼の懐に入り込み
薩摩剣法を盗んだことが
酒匂一派の逆鱗に触れた

空也からしてみれば
とんだ言いがかりでございました

今更
後には引けない

と言う事で

江戸では
薬丸新蔵 対 酒匂次郎兵衛
長崎では
坂崎空也 対 酒匂太郎兵衛

対決致しました
流れ的に
空也と新蔵が
負けるはずもなく
勝ちました


勝ってめでたく
青春篇が終わりました
とは参りませんでした

まずタイトル
「空也十番勝負 青春篇」
五番勝負で終わりました
だから
サブタイトルが
『未だ行ならず』なんでしょうけど


残りの勝負は
青年編にして続くのか?
と思いきや
終わり
その理由は
あとがきで
佐伯泰英氏自身が
語っておられました
「空也十番勝負 再起編」の構想が
無いわけではない
とも…

とは言え
何なんですか?
この中途半端な
終わり方は!

以下
本文より一部抜粋

空也の盛光が
太郎兵衛の首筋を断ち切り
太郎兵衛の刃が
空也の胴に切り込まれて
二人はその場に
絡み合うように
倒れこんだ

中略

空也は
初めて死を意識した
(われ 未だ行ならず)
「坂崎空也 生きるのよ」
麻衣の声だった
「高すっぽ そなたは勝を得たのだ 生きよ」
と寅吉が命じた
麻衣の眼には
空也が
笑いかけたように思いえた
その直後
空也の意識が途絶えた
寛政十年師走の未明
聖寿山崇福寺の大雄宝殿の石畳に
空也は血に塗れて
転がっていた

空也十番勝負 青春篇 了


続きがないかもしれないならば
なおのこと
読者が
空也の未来は
きっと希望に満ちているだろう
と思わせてくれる
余韻をもって
終わって頂きたかったです
最後の最後で
裏切られた気がして
残念です