夕刻 青和大学 教室にて
寺内一(謎のフリーカメラマン)-小池徹平 が 講義後の後片付けをしている。
現在は、青和大学の臨時の事務職員となっているからだ。
話したいことがある。
そう言って、教室にやってきた高槻。
御用でしたら順番にお願いします。
大学の先生は、人使いが荒くて大変なんですよ。←それだけじゃねーぞ、そんなのマシな方だぞ!
席に置かれたプリントを回収しながら、講壇に向かって降りていく寺内。
君が神隠しにあったのは、いつだ?
13歳の誕生日。
警察には、その記録がない。
その頃、親が借金を抱えて一家で逃げ回ってたんですよ。
刑事のお友達がそれくらい調べてくれたんでしょ。
当時、ご両親が離婚前。
君は「鈴木一」だった。
それを聞いて思い出した。
僕は、母が「鈴木さんの奥さんと息子さん」と呼ぶ2人に会ったことがある。
一度だけ・・・。
たった一度でも、あの日のことは忘れない。
熱にうかされたような表情で、その時のことを思い出す寺内。
清花が開いたサロンで
女性たちが、彰良少年(幼少期:高橋來)を「天狗様」と呼び
両親の事、子どもの受験の事などで相談をした際の礼を、口々に述べている。
母に手を引かれた一少年は、それを見ている。
***********************
貴方は輝いてた。
あの日、君は聞いたね。
***********************
彰良少年の前に歩み出る、一少年。
どうしたら、貴方みたいになれますか
***********************
貴方みたいに神隠しに遭えば、僕も大人に振り回されずに生きられると思ったんですよ。
でも違った。
そう言った寺内の目が青く光る。
君は・・・、本当に。
彼の青い目の光は、徐々元に戻る。
あの時、僕は言った筈だ。
**********************
椅子から立ち上がり、一少年の耳元で彰良少年はこう告げた。
僕みたいにならない方が幸せだよ。
**********************
苦笑いをし、寺内は教室から立ち去ろうとする。
もう一つ言っておく。
深町君には近づくな。
いいですよ、やっぱり僕に必要なのは先生みたいだから。
(高槻の方を振り返り)
そうだ、神隠しと言えば・・・最近も起こってるみたいですね。
小春さん、早く見つかるといいですね。
そう言って、寺内は教室をあとにする。
オープニング
研究室で、尚哉(青和大学文学部の学生)神宮寺 勇太 のマグカップにコーヒーを注ぐ高槻。
この前はごめんね、深町君を巻き込んでしまって。
気にしないでください、あの程度でビックリしてたら先生の助手はできません。
胸を張り、凛々しく答えるワンコ・・・いや、尚哉。
逞しくなったんだね。(そう言って、尚哉の腕を軽くたたく。)
いや、まぁ。(照れくさそうにする。)
部屋をノックする音がする。
先生っ!
意気揚々と生方瑠衣子(高槻の研究室に所属する大学院生) - 岡田結実 が
戻って来た。どうやら、紀遠助(きのとおすけ)についての調べが済んだらしい。
その様子だと何か見つけたんだね。
生方によると、高槻の言った通り紀遠助の話は「今昔物語集」の中にあり
今昔物語集の他に、「美濃の国の紀遠助」という本が、テーブルに並べられた。
さらに調べると、千葉県内にも似たような話が伝わっており
小春の家の近所「かがみがわ神社」にも「開けるな」という箱が祀られているというのだ。
すばらしっ!
高槻が嬉しそうに称えると、生方は喜ぶ。
二人の間に割って入るのが申し訳なさそうに、尚哉が紀遠助について尋ねる。
話は、遠助が京から美濃の国、今の岐阜県の南部に向かう途中で
出会った女から「箱を届けてくれ」と頼まれることから始まるんだ。
(小春が百物語で話した様子が出てくる。)
尚哉:小春さんの話と同じですね。
遠助が女に聞いた。
「どういう人に渡せばいいんですか?」
女は答えた。
「相手はさる女性です。貴方が橋のたもとに行けば、向こうから現れます。」
「ただ、この箱は決して開けてはいけません。」
尚哉:そこも同じですね。
そこから先が違うんだ。
小春さんの話では自分で箱を開けていたけど、遠助は自分で箱を開けていない。
尚哉:えっ?
嫉妬深い奥さんが、「さては、誰かほかの女に贈るつもりだな。」
疑って箱を開けてしまったの。
尚哉:中にはくり貫いた目玉・・・。
そして、切り取られた男性器が入っていた。
(尚哉、股間を押さえて立ち上がり後ずさりする。)
で、遠助は慌てて、すぐに箱を閉じて橋に持って行ったの。
すると女が現れて「箱を開けましたね。」と見抜いた。
遠助は「開けてません。」と言い張って、そのまま家に帰ったの。
尚哉:へっ、無事に?
家に戻ると病気になって、苦しみぬいて亡くなったの。
尚哉:小春さんの話と似てるけど、全体的にエグ目ですね。
そうなんだ、小春さんだって百物語で話すんだから怖い方がいいって思うはずなんだが
なのに奥さんの嫉妬とか、面白そうな部分は全部省かれていた。
そこが気になるんだよね。
小春の家の近くにあるという 神社
神職と思われる男性が、高槻ら3人を案内する。
彼によると、小春が百物語で話した内容は、この神社に伝わる話とは違うといい
この神社の話は「今昔物語」の紀遠助の話をそのまま、名前を「そう衛門」と入れ替えた話だと言う。
案内されながら、各地に似たような話があるというのは、珍しいことではないという高槻。
本殿の奥には、朱色の布に包まれ紐で括られた箱が祀られている。
素晴らしいっ!
いつもの調子で箱に近づこうとすると、神職が声を荒らげて入らないようにと
高槻を留めた。
僕はバチが当たるとかは気にしないので、寧ろ怪異が体験できるなら開けてみたいっ!
うぁぁぁぁぁっ!✖2
今度は神職と尚哉の二人がかりで高槻を押し留め、尚哉が高槻をなだめる。
あのぉ、近くで見るだけでも・・・ダメですか?
神職は、「ちょっと、いろいろあった後ですので・・・。」といい、
生方がそれについて尋ねると、少し前に箱が盗まれてしまったというのだ。
戻っては来たものの、誰かが開けてしまったらしく箱を包む布の結び目が
変わっていたと言うのだ。
開けてはいけない箱を開けた人間がいる・・・ということですか。
神社を後にしながら、高槻は
百物語の時に
難波要一(尚哉の同級生) - 須賀健太 と 谷村愛美(尚哉の同級生) - 吉田あかり が
それぞれ「やってはいけないことをやって、人が消えた話」をしていたことを、2人に話す。
もちろん、生方と尚哉はそれを覚えており
難波:男の子が一人消えてしまいました。
谷村:近くに住む人が消えちゃった。
という場面が再現される。
やってはいけないことをやる。
つまり禁忌を破った人間がいて、そのあと人が消える。
なにか関係があるかも知れないね。
高槻の研究室にて
難波と谷村がやってきて、それぞれ神隠しが起こった原因と噂される
禁忌があった様子をそれぞれスマホの画像で見せにくる。
難波は御神木のしめ縄が切られたもの、谷村は神社の賽銭箱に落書きがされたものだ。
この行為の犯人は、まだ分かっていないといい。
生方は「普通に考えれば、悪いことをした人にバチが当たるんだけど・・・。」というが
難波に言わせれば「居なくなった中学生は、悪ふざけをするようなタイプではなくて真面目な子だったらしい。」
とのことで、谷村も「こういうことをしそうにない人」が行方不明になったというのだ。
高槻は、寺内がこれまで話していたことを思い出していた。
★神隠し・・・最近も起こってるみたいですね。
★人間を超えた存在として、迷う人たちを救ったり、道を踏み外した人を罰したりしなきゃ。
★僕はもう始めていますよ、高槻先生。
★一緒にやりましょう。
何を・・・。
高槻の独り言に、驚く一同。
あぁ、ごめん。もう少し考えさせて。
立ち上がり、改めて自分のデスクの前に座り直す。
考え込む高槻の顔に、不安になる生方。
佐々倉古書店
2階にて、生方は佐々倉健司(警視庁捜査一課の刑事・高槻の幼なじみ) - 吉沢悠
と尚哉に、天狗について調べたことを報告する。
天狗とは何か
生方は「天狗絵巻」という本を取り出す。
天狗という言葉は、中国では「凶事」つまり悪いことが起きる前兆である「流れ星」を指す言葉だったと言われていた。
それが日本に伝わり、山で修業をする「山伏」の姿と結びついて、現在の天狗の姿になったと言われている。
この姿の天狗は自由に空を飛べると言われていた。
(尚哉「だから、背中に翼がある。」)
天狗は、京都の鞍馬寺・高尾山の薬王院では、祀られる信仰の対象ではあるが
昔の人たちは、起こる多くの怪異を「天狗の仕業」と考えていた。
「天狗攫い(てんぐさらい)」は、その中でも有名だという。
生方は、高槻が心配だと言う。
寺内が現れてから、高槻は調子を乱されているというのだ。
寺内の隠れ家
ベッドに座り、写真を眺める寺内。
元の場所にそれを置いて、どこかへ出ていく。
写真には、泥だらけの子どもが二人楽しげに写っていた。
青和大学キャンパスにて
尚哉が歩いていると、向こうから遠山宏孝(千葉県警広報官・尚哉と同じ怪異を体験している)-今井朋彦
が歩いてくる。
尚哉が駆け寄って挨拶をする。
久しぶりに会う二人。時期は違うとはいえ、あの青い提灯の祭りを体験した二人だ。
尚哉がそれなりに大学生活を楽しんでいることを、彼に伝える。
声の歪み無くその話が聴けて、嬉しそうにする遠山。
自分と同じ能力を持つ尚哉が、大学生活を楽しく暮らせていることに
気にかけてはいたものの、驚いているようだ。
今日は高槻に用事があるといい、尚哉を置いて研究室へ向かっていった。
研究室で向かいあって座る二人
遠山が取り出したのは、とある場所をプリントアウトしたものだった。
八幡の藪知らず・・・有名な禁足地ですね。
昔から立ち入ると神隠しに遭うと言われいて、現在でもこのように柵が設けられている。
今日は、この場所に関して教えていただくために来ました。
八幡の藪知らずの由来は諸説ありますが、平将門本人の墓であるとかその家臣の墓だと言う説が有名です。
でもこの程度のことは御存じなんでしょ。
わざわざこちらにいらしたのは、なぜなんです?
遠山は、ぬいぐるみを抱いた少女の写真を高槻の前に置いて見せた。
長谷部千里(行方不明になった4歳の女の子)永尾柚乃 ちゃんといって
4歳の女の子です。
この子が現在、行方不明になっています。
両親の説明によると、家族3人で買い物からアパートに帰った際
千里は、一人家に上がらずアパートの前の子ども用プールで水遊びを始めた。
母親たちは先に家に上がったが、母が千里を呼びに行くと
その場所にもう千里はいなかったらしい。
近所の人が警察に通報し、現在マスコミと報道協定を結び警察が行方を捜しているそうだ。
子どもがいなくなったことと、八幡の藪知らずがどう関係するのかを高槻が尋ねると
あくまでネットの噂ですが・・・。
そう言って、遠山はタブレットを手に立ち上がり
高槻にある動画を見せる。
タイトルは、「神隠しの掟」
どこかの屋上で撮影されたものらしく、オレンジ色のライトに照らされ
フードを被った人物が、加工された音声で喋っている。
もし女の子がいなくなったら、八幡の藪知らずに入ったことと関係している。
禁忌を犯したら神隠しに遭う、それが掟だ。
(そう言って、画面を見ている相手に向かって右手で指をさす。)
遠山さんには、この声が歪まずに聞こえるわけですね。
えぇ、この男は嘘をついていない。
これは本当に神隠しだと思いますか?
今はまだ分かりません。
でも・・・必ず纏めて解決します。
小春が最後に目撃された橋の上
高槻が歩いてくる。
小春が立っていた場所はこの辺りだろうか。
最後に目撃したと言う女性に、話を聞くことができた。
小春は、橋の真ん中でうつむいていたのではなく
橋の向こう「たもと」の辺りに立っていたという。
小春の家族は、川に飛び込んだのではないかと心配していたことを伝えると
落ち込んだ様子で、うつむいていたことは本当で(目が合ったら話しかけようと思ったが)
小春に話しかけてはおらず、背中越しに見ただけだから・・・というのだ。
高槻が似たようなポーズをとり
こんな感じですか?というと、そぅ、そんなカンジと答えた。
果たして、そのポーズとは
橋のたもとで、持っている小箱を見つめる(エア)ポーズだった。
高槻の脳裏には、神社から持ち出された箱を持った小春がいた。
緊張した様子で、そっと箱を開ける小春。
研究室に高槻・生方・健司・尚哉の4人
開けてはいけない箱を開けたのは、
栗本小春(青和大学の食堂の栄養士・『百物語』の参加者) - 田辺桃子 さんだ。
おそらく、他の失踪者も自分で禁忌を犯したんだと思う。
尚哉:なんのためにそんなことを
健司:何のためかは知らないが、関係あるかも知れないことならある。
どういうこと?
健司:少し前からいくつか失踪事件が起きていて、そのうちの何人かが鞍馬で見つかってる。
そこが気になって、ネットで調べたらこんなものを見つけた。
例の「Yamoo質問箱」の書き込みだ。
【質問】失踪した人は、やってはいけないことをやったってほんとですか?
【回答】なし
生方:でも、失踪しても戻ってくるって、禁忌を犯した罰としては中途半端じゃありませんか?
もちろん、発見された場所が彰良先生と同じ鞍馬だっていうのは、気になりますけど。
高槻:(へっ?)瑠衣子くん、僕が鞍馬で見つかったって、どうして知ってるの?
生方:たまたま新聞記事で見つけて・・・。
(声が歪みまくってて、至近距離でキツイ尚哉。)
高槻:たまたま?
生方:(てへっ、焦)
健司:俺が教えた。
高槻:健ちゃんが・・・。
健司:寺内一のことがどうも気になってな。怪異がどうのこうのいうのは、俺にはわかんないから。
協力してもらってる。
高槻:深町君も一緒・・・?
尚哉:(うなずく)
そっか、僕のためなんだね。(3人まとめてハグッ!)
ありがとっ!
尚哉:行きます、すいません。
ちょっとぉ、逃がさないよ。(後ろから抱きつく)
あっ、ちょっとちょっと、先生。←でも、そんなに嫌がってないっす。慣れか、慣れなのかっ!
寺内の隠れ家で
テレビのニュース速報が流れる。
長谷部千里ちゃん行方不明のニュースだ。
目撃者情報をテレビで募集しており、画面の左上には連絡先が表記されている。
それは、高槻の研究室でも流れており、健司はこれで目撃情報が出てくるかなと
言っている。高槻はそれを見ている。
寺内は、千葉県警へ目撃者情報をスマホからかけている。
僕、誘拐された女の子をバスで見ました。
えぇ、もちろん。いくらでも捜査に協力します。
*************************
研究室では、4人があの動画「神隠しの掟」を見ている。
生方は、この人物が寺内に似ているという。
おそらく、繋がっているんだよ。
すべてがね。
森の中
栗本小春と思われる女性が歩いている。
長谷部千里ちゃんが行方不明のときの服装のまま、一緒に歩いている。
二人は手をつなぎ互いに見つめ合って微笑み、また歩いていく。
エンディング
なんで、行方不明をわざわざ誘拐って言うんでしょうね、徹平ちゃん。
そして、来週も殿きまーすっ!