「ロストケア」 前田哲監督 ○ ☆☆
葉真中顕(はまなか あき)の社会派サスペンス小説を映画化しました、
ある朝夜勤から帰宅した家族が自宅で介護センターの所長の遺体が発見されます。犯人として介護センターで働く斯波(松山ケンイチ)が容疑者として浮上してきます。斯波は介護士として他のスタッフにも利用者家族にも信頼されていました。しかし、検事の大友(長澤まさみ)は事件を調査するうちに斯波が務める介護センターだけが突出して利用者の死亡が多いことを突き止めるのでした。
映画誌などで話題となっている松山と長澤の激突シーンは期待通りでした。殺人を「救い」という斯波に対し当初は完全否定するだけの大友が次第に自身の老いた両親への対応を深く省みることで引き起こされる変化を微妙な表情で演じわけています。とかく派手なアクションやおおげさな濡れ場(今は使っていないかな)ばかり騒がれますが、観客と共にじっくり考えさせるセリフのやり取りは俳優の真の力量が試されます。見応えがありました。
冒頭で大友に「お願いだから刑務所に入れてください。」と懇願する高齢女性の役を綾戸智恵が名演しています。
社会が抱える問題を娯楽映画として観客に考えさせる秀作です。
辻信一監修「ハチドリのひとしずく いま、私にできること」(注)の絵本が印象的でした。
タバコは、なし。無煙です。また、殺人の手段にタバコのニコチンが使われていて普通に売られていることへの疑問も感じさせられます。
(注)森が火事になっている時、一滴ずつ水を運ぶハチドリに対して、森から逃げた動物たちは「そんなことをして何になるんだ」と笑います。それに対して、ハチドリは答えます。「私は、私にできることをしているだけ」と。