わたしは六百山

サイゴンでの365日を書き直す 

口紅 ベトナム便り 97

2006年08月04日 | 日本語教師
こちらv-603.

86号で紹介した、--- ~ています --- の表現ですが、他のクラスでもこの表現を勉強することになりました。以前は 男性が多いクラスでしたが、今度は女性が5人男性はひとりです。
ですから、『社会の窓』は 出てきません。
かわりに、『口紅』が活躍しました。
「あっ、口紅がついていますよ」という表現です。
このとき、Dさんがいいました。
「先生、I LOVE YOU. は何ですか」
「アン ニユウ エム です」
「ちがう ちがう、日本語で 何ですか」
「私は あなたを 愛しています」私は 黒板に書きました。
そして、そのあとに、

  から(     )

と書きました。
つまり、あなたを 愛していますから(     )ます/です。
と言わせようとしました。
すると、Dさんがすかさず 言いました。
「愛していますから、キスします」

ああ、どこの国でも、女性はきわどいですね。

それなら、と
「私は先生を愛していますから・・・・」と言って、あとを続けさせようとしました。
そしてSさんを さしました。するとSさんが言いました。
「私は、先生を」
「先生を?」
「愛していません」
教室中が笑います。
私は、がっかりしてみせます。
「じゃ、Dさんは?」
「わたしも、先生を愛していません」
また、大笑いです。
「わかりました。わかりました」
「じゃ、Bさん(男)は」
といわれたBさんは 困ってしまいました。
すると、Pさんが、「いいです、いいです。Bさんは愛しています」
おとなしいBさんは、どうしたらいいかわかりません。

この課での、--- ~ています--- という表現は、状態の継続ではなく、スイッチを入れたその瞬間の動作によってその後の状態が続いている、というような表現の練習です。
ですからここは、
愛しています。それで キスをしました。 
それで 口紅がシャツについています。
というところまでもっていって、はじめてこの課の指導が達成されます。
そこで、この『口紅がついていますよ』という表現まで言わせて--- ~ています ---の違いを理解してもらい、使えるように指導していきました。

さて、この日の授業が終わったとき、いつものように雑談をたのしみにみんなが私の周りに集まってきました。
そのとき、Mさんが とつぜん、私のシャツの袖に口づけをしたのです。
「あれれれ、Mさーん」驚いている私に、茶目っ気たっぷりの顔でMさんは、にこっと笑うと、「先生、さよなら」と 出て行ってしまいました。
「先生、シャツに口紅がついていますよ」
あとに残った学生たちが 大騒ぎです。

やれやれ、次の授業がなかったからよかったけど、・・・・。


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