日本昔話 こけしと竹とんぼ
むかしむかしおとうさんとおかあさんが山の中に住んでいました。昔のことですからスマホもテレビも新聞もありません。流通している少しのお金はありましたが、今みたいに銀行はありません。
おかあさんは毎日男の子と女の子のためにご飯を作りました。自分の分を減らしてでも二人の子がひもじい思いをしないようにと心を砕いて作りました。おとうさんは秋の深まったころ、男の子のために竹とんぼを作りました。その子は刈り取の終わった田畑を竹とんぼを追いかけました。冬になって外に出られなくなっても、土間で竹とんぼを追いかけました。お父さんはまた女の子のために大きな赤い着物を着たこけしを作ってあげました。女の子は毎晩こけしを抱いて眠りました。その次の冬もまたその次の冬も同じこけしを抱いて眠りました。毎年冬になって雪が降って暗い家の中から出られなくなっても、雪の重みで屋根がみしみし音を立てるようになっても四人の毎日はとても楽しいものだったのです。病気や冷害や借金取りの恐ろしさはありましたが。
幾世代かをへて、あれだけ子供好きだったのに大勢の人が子供嫌いになりました。学者は「子供より楽しいものが身に周りにあるから。」と分析しました。それもありますがそれだけではありません。男も女も「楽しいことはいけないことだ。苦労して給料を稼ぐのがことがイイことなのだ。」という思想に毒されてしまったことが原因なのです。今、「人生大いに楽しまなくては。」なんて大きな声でしゃべると白眼視です。冷たい抜け目ない目をして働くことが正しいことなのです。抜け目ない人は自分の一番の楽しみをさえ犠牲にして平気なのではと疑います。
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