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お金の流れで見る明治維新(大村大次郎 PHP文庫)

2024-02-23 10:24:33 | 日記

お金の流れで見る明治維新(大村大次郎 PHP文庫)

 歴史の転換期にだれがどんなことを言いどんなことをしたかは勿論面白いが、そのエピソードをどれだけ読んでもなにかしらじらしい印象を受ける。それは、例えば隣の家で夫婦喧嘩が絶えない、それはそれで世間の耳目を集めるがその夫婦の収入支出の状態が分かってるともっと面白いようなものである。

 この本では、西南雄藩がどんな風に財政改革をやって討幕資金を蓄えたかと、いよいよ討幕が佳境に入った時に軍を動かす費用を贋金造りによってしのいだこととを描く。前者は様々の講談本に描かれている通りだけど数字が詳細に出ているのでこの本の方が説得力ある。後者はどこかで読んだことがあることだけど、具体的にどの藩でどのような偽金を作って最後はどう処理されたのかまで書かれていて興味深い。(最後は明治政府が外国人に対しては正貨との引き換えをしたらしい。内国人に対しては踏み倒し同然であったらしい。)

 過剰な贋金を作るとインフレが起こって収拾がつかなくなりそうだが、当時は金属貨幣であるのでその金属の価値で贋金も評価されたと書いてある。そうすると、贋金で武器を売った商人や贋金で糧秣を売った農民が損したということになるのか。戦争の悲惨さは裏側でこんなことも引き起こしているのか。今のような電子帳簿上に載る貨幣では同じようなことが起こった際には果たしてどうなるのか。

 江戸幕府は開府以来の貯蔵していた金塊が尽きた時に政権を失ったらしい。その政治体制が変わるときは多少の戦乱がある。戦乱中は土方歳三とか木戸孝允とかの男前が活躍してそこ見せ場だからいくらでも物語が作られる。その物語に注目が集まりすぎている。そうではなくて、なぜ金塊を失った時が政権を失うことになるのか。金塊を失わなくて済む方法は無いのかなどの物語をこの本は書きかけている。もっと詳しくそこを書いてほしかった。

 そこで思い出した。フランス革命は宮廷の財政破綻が原因という。ドイツの第一次大戦後のナチス勃興は一次大戦の賠償による財政破綻が原因という。その後両国は、ナポレオン戦争や第二次大戦などの対外膨張をした。わが明治維新も日清日露の戦役をひきおこした。これらは関係があるのか。財政破綻で革命がおこるのはまあ分かるけど、なんでそのあと対外膨張したくなるのか。秀吉さんも天下統一なったあと、朝鮮討ち入りしたくなったのはこれが原因か。またはアメリカは大恐慌から第二次大戦を経て大きくなった。そのあと対外戦争をしている。革命起こして折角の破たん状態から脱出したあとは、天下泰平を楽しむのがお得なように思うのだが。きっとこれもおカネの流れから説明できるんだろう。是非この続編を書いていただきたいと思う。「お金の流れで読む日清日露戦争」や「お金の流れで読む朝鮮討ち入り」などである。



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