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大吉原展(東京藝術大学大学美術館)①

2024-04-17 21:48:55 | 日記

大吉原展(東京藝術大学大学美術館)①

 見るのはおじさんばかりだろうと思っていたら、着飾った若くて姿勢のいい若い女性が押すな押すなの行列をするのに驚いた。歌麿の絵を見ていると横から若い女性が覗き込んでくるから、昔と今の美女を一遍に鑑賞することができて有難いとも思うが、折角の歌麿の浮世絵が頭に残らないで観客の女性の印象ばかりが頭に残る。これではこちらは得したのか損したのか分からなくなる。おじさんはいないわけではないが、大抵は夫人に連れられていやいや見に来た感じのヒトが多い。(この女性たちは吉原が、当時の日本文化の粋でありながら苦界であったことを認識しているのか疑問である。)さらには、高校生もたくさん見に来ている。若くして文化の香りに触れられるのは幸せなことで、きっと大人物に育つだろう。がり勉点取り虫はどうもいけない。

 歌麿は単に絵が上手いというだけはなく、華やかな女性が好きでその華やかさを写し取ることに成功した画家だと思う。(決してその女性の内面を写し取ろうとはしなかった。)技量よりも美への情熱が勝った人である。歌麿を見てから広重を見るとその差がよくわかる。広重は冷静沈着な職業絵師で、観客が求めているものを知り抜いている。さらに多分ベルリン・ブルーだと思うが濃い青色の顔料を効果的に使って𠮷原の夜の風景を描いている。北斎もそうだがまだ日本が開国していないのに、もう海外の顔料を大量に使っている。(しかも効果的に)決して当時鎖国ではなかったことがこの絵からもわかる。歌麿の絵は、たまに当方の気分がすぐれないときに鑑賞するといい。華やかな気分になって心が救われるだろう。広重や北斎の絵は部屋に掛けて四六時中鑑賞するのがいいだろう。

 江戸城大奥と吉原は、モノの消費地であり文化の発信地であったという。大奥はよくは知らないが、吉原は着物の柄から髪型まであらゆる文化の源であった。それは今の芸能界に比肩する。しかしそれだけではない。着物の製造は京都雁金屋が担って、そこは大儲けしたらしい。そこの息子尾形光琳は遊び人だったらしいが、最後に国宝紅白梅図屏風を残している。モノの生産地の経済を刺激することで、新たな別の文化の創造に寄与している。いわば一粒で二度美味しいということをしている。

 江戸時代ニ百何十年というけど、そのうちの中期の高々数十年のあいだに花魁道中や大相撲、歌舞伎の様式美を開発して日本文化の中に根付かせたのは驚くべきことである。日本のテレビ業界は戦後長い時間かけてなにかいい文化を開発して根付かせたか?軽薄で時間つぶしにしかならないゴミのようなものを大量に製造しただけである。戦後七十何年である。その間後世に残るような様式美を、我々は何も生み出さなかったように見える。勉強してモノづくりにまい進するのもいいけど、勝つことばかり考えてると結局は何も生み出さないことになる。もうモノづくりはやめにして吉原に学んで文化を作る方へ行きたいものである。

 



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