樹業人~風の通心

持続可能な社会や森林・建築・木製品について、気ままに こそっと考える為のネタ帳です。

未来の森林

2013-04-21 | 持続可能な社会

●まえがき(笑)
冊子を出すにことになって、私なりに一生懸命考えたのだけど、ズバッ! と却下になったので、せっかくなので 超個人的に ここに書くことにしました

確かに、公に出すには 無茶だったかもと思うけど もう 色んなものを犠牲にしてひねり出したのよ・・・。ハハハッ。でも、このブログもボチボチしか 書けないので 何日かかる事やら。長くなるんだろうなぁ。言いたい事、溜まってるし。

●本文
やる気がない森林所有者 という言葉を最近目にするようになって、私の周りをリサーチすると やる気がない 以前の問題で「どこから、取りかかればいいのか わからないだけ」の人も結構いたりする。口では言わないが、みんな自分の家の山の事は気になっている。

だいたい、わが家の色んな話を総合すると、今みたいな広い範囲の植林なんてした事がなかった爺さんに連れられて、父が手伝いに行ったという感じで、早 その父も75才を超えている。早くに祖父が亡くなったというのもあるけれど、そもそも 杉・桧の育て方の伝承なんて うちの近所にはなかったんだもの。下草刈りはしたぞ! と言っていたので、間伐をしているかは かなり怪しい。 その後、たぶん 誰も教えてくれなかったんだろうと思う。教えてもらったとしても、とても、山仕事をしにいく時間もなかったしね。 材木屋が皆 儲けていた訳ではないのですw 大勢の子どもを育て、会社を存続させるのに精いっぱいという、そういう時代だったの。責められない。

会社勤めの林家の人も、そうそう休めない時代だった。森林をなんとかしろというのなら、育休のように、本当の「木育休」というのが正々堂々と取れるようにしないと なんて思ったりする。

この間、お会いした隣村の年配の人が、「木を売ったのは、自分らの世代が最後やろな」と言われたので、その頃はどこに売っていたのかと聞いたら「あんたのとこ」と言われ、地域での役目が今はたせていない事を心苦しく思った。といっても、つながりが切れている訳ではなく、木が1本邪魔になるからとか、治山工事の為の伐採の時も声をかけて頂いた。
今は、材木の価格が安いからと言われると胸が痛んだりもするけれど。

拡大造林が終わり、木を育てているという事は、建築材になる木は少なくなっている訳で、少しずつ製材屋も市場も素材屋さんも、廃業していった。本来であれば、伐り出した丸太を近くで、色々有効に使い販売する事で、原木を少しでも高く買える場所=木の出口がなくなったとも言える。それも、木がまだ細いうちは、難しい。

そして、地域では木を売ったことがない山主と買った事も売った事もない森林組合が残ったという感じに近い。森林を育てる事が仕事だった森林組合に、いきなり商売感覚を身につけろというのも無茶な話でもあるし、市場に売るのが原則なので、地場の製材所は通り過ぎていく。

やっと柱材がとれる大きさに育ったけれど、まだ、梁材は難しい。多様な木材の加工場をつくるには、この地域ではまだリスクが多い。出てくる木も出口もまだ少ないから。だから、何をするにも遠くまで運ばなくてはならない。輸送にかかる経費に、消えていく。地域材と他の地域の国産材の使い分けが、現段階では必要になる。林業の方にがんばってもらっても、その先も同時に歩幅を合わせていかないと、ビジネスとしては危うい。木は動いても、林業や製造業が苦しくなっては意味がない。

そんな現状の中で、自分たちの事を棚にあげながら、山主の方にメッセージを伝える言葉をさがさなければならなかった。昔の丸太価格が良かった時を知っている方にも 木を植えすぎたと避難され「やる気」がうせた方にも、林業はダメと刷り込まれている次世代の担い手にも、意識を変えて頂かないと、待ったなしで、未来に健全な森林は伝えられない。

自分の頭を整理する為にも伝える言葉をひねり出したのが これ↓


●盛況だった戦後の林業は、例えていうなら先祖の貯金(森林資源)を使って得たものです。

●当時の植林は、減った元金を元に戻すものでした。おかげで先進国の中ではトップクラス、国民が心配する事のない量にまで成長しました。

●これからは「利子」=「森林の成長量分」を上手く使い、若い木から高齢の木、針葉樹と広葉樹がバランス良く分布する健全な森林を将来にわたり持続させる仕組みを、地域で考え、守り育んでいく事が大切なのではないでしょうか。


 

確かに、もう少し 熟成させないと 万人受けしないとは思うけど、近江商人の土地柄には悪くないアプローチだと思うのだけど やっぱりだめかしら?(笑)
そもそも、林業は「業」なんだもの。お金の話を少しでも、からませたかったのと、時間軸を変えるにはどうすればいいのかと、相当 苦しんだ。お察しの通り、簡潔に文を書くのが、めちゃくちゃ苦手な私にとっては、苦行のような日々。文才もコピーライトのセンスもない。

それで、「利子」というのが、どういう事なのかという事をグラフもどきにしたのが 下のグラフ。
実は、6年以上 同じ事を言い続けていると気がついた。  
2007年の記事 間伐だけでいいの? でも、今回は 一歩 進んだのですよ。
手に入ったデータが100年もなかったので、限界はあったけどね。


もちろん、私は専門家でもないし、もっと色々な事を考慮しなければならないし、バランスがいい持続可能な森林の姿が、どんな形なのかわからない。そもそも、元のデータは ザクッとしたプロットだと思うし、杉と桧、育ち具合などで伐採できる林齢は違う。もっと、言えば、実際の森林は、林齢で面積をズバッと分けられるものでもないし、面積でカウントできる森林のありようが良いのかというと、疑問も残る。実際の現場では、かなり難しい事も理解できる。本当は、資源量の方がよかったかな?とも思ったり。

だけど、森林林業白書で これに近いグラフを見た時は うれしかったのよ。国も考えててくれたんだぁと思って。未来が、見えないと動けないもの。自分たちの世代で、結果が見えるものではないからこそ、バックキャスティングで計画するって大切なのよね。

間伐しましょうなんて、最近 言われ出した感があり、植えろと言われ一生懸命植えたのに、今度は、植えすぎたと言われ、次は木は伐るなと言われ、手入れをさぼった・やる気がないと言われている山主にとっては、「荒れているから間伐しろ、手出しは少ないから」と言われても、何のモチベーションもあがらないし、きっかけにもならない。余程、大儲けできるならば別だけど、そうでないのなら、先祖と子孫と世間の皆さまの為と思わないと、やっていられないのが森林を持っているが今は「業」としていない多くの個人の山主の気持ちではないだろうか。

あくまで個人的にではあるけれど、木を使わせて頂いている「業」として、地域に対して、環境に対して、未来に対して負荷をかけていない森林から出された木であるということは大切だと思っている。でも、一番は、良い住まいをつくること。その為には、良い木は欠かせない。だから、今のコストや量重視の林業の流れには、不安を覚えることもある。それも、私たちが真っ当な価格で木材を買わない事が原因でもあるのが歯がゆいが、直接 買わない限り 原木価格がどうなっているかなんて、さっぱりわからなくなっている。もちろん、その木が生えていた山がどうなっているのかをつかむことは難しい。かといって、森林認証を受けた森林の木じゃないと使わないなどと 個人の山の集合体に望めば、ますます、山が動かなくなる( これは、ここの地域の場合ですけどね) 林業と言っても、様々なのである。

だけど、将来は、森林にかなり依存する世の中になる可能性があると思っているので、今のうちに、ルールを決めておいて欲しいと思っている。 ちなみに建築でも発電ではなく、製造業の資源。発電にいきなり丸太を使うなんて、資源の有効活用という点では非常にもったいないと思っている。何かに使った後に燃やせないものか。せめて、丸太ならば、熱エネルギー。樹木は、字のごとく「樹脂」がつくれる持続可能な資源でもあるのよね。構造材や内装材だけでなく、設備機器や配管・接着剤にとっても、重要な資源となりうる可能性がある。

戦争は 資源の奪い合いでおこり、国民は その時の自分の暮らしを守る為に「伐れ!」と言い、マスコミは今とは逆の事を言っていて、政府がそれに応じてきた。その結果が、現在のバランスが悪いグラフの形になったのだと思う。
伐れと言ったり、植えすぎたと言ったり、伐るなと行ったり、そんな事に右往左往していたら、人間とは違う時間軸で存在する森林は守れないと、過去は教えてくれている。もう、お殿様がいる訳ではないし、やっと、ちゃんと、しばらく心配がない資源量を確保できた今だからこそ、未来への手立てを考えておかければ・・・と。このままでは、今の続きの価値観で 産業の為と乱伐を許すことになるやもしれない。

終戦後の森林政策を、今の現状から責める意見もよく聞くし、批判する方が受け入れられやすい世の中で、判で押したような批判には少々ぐったりするようになってきた。
あの頃の状況を思えば、かなりベターな政策で、少なくとも今よりは、未来に対してのリスクマネージメントができていたように思う。
もし、木が輸入できていなかったら、どうだったか。森林に手を入れず、針葉樹を植えず、天然に任していたら?少なくとも、細いながらも、植林した事に対して、文句をいう人などなかったのではないか。山を削らずにいたら、多くの人が暮らしている場所は、田んぼのままだし、木造だけでなく、コンクリート造も鉄骨造も 建物を建てるには 相当苦労したはず。

いまある問題は、木を使わなかったことによるが、それも、まだ育っていなかったし、例えば北欧材が入ってきたのも、森林の時間軸でいうと ほんの最近のこと。切り替えるなら「今でしょ!」と、いう感じで 遅くも早くもない気がする。

これからは、石油が輸入できなくなったらどうするか、石灰が日本から採掘できなくなったらどうするかなど、今の木材の需要だけで森林の事を考えてはいけない未来が待っている気がする。(たぶん)

上のグラフは、エクセルで数字をあっちやったり、こっちやったりしてつくったのだけど、数字だけでも、かなり難しい。あー伐りすぎかな(エクセルの中で)と思ったけれど、成長量の6~7割位の伐採→植林量に結果的なりましたの。そっか、木は成長するんだとあらためて実感しました。素晴らしい資源。
ただし、バランスが取れた後の持続可能な年間の伐採量は、そう多くはないのではないかという感じもした。まぁ 幸か不幸か人口は減っているし、日本の森林がまかなえる日本人の数という視点から考えてみるのも悪くない。(誰か、計算してくれないかしら)

ただ、しばらくの間、これだけの量を伐って育てるという事は、「使う人々」がいないと伐れない訳で、私たち、建築業者も、競争力も大切だけど 未来の資源に責任を持つという姿勢を問われているというのが、よく理解できたグラフでもありました。

コストダウンからもたらされる結果が与える森林・林業への影響もだし、将来の化石資源の枯渇の問題にも 正面から向き合うということも大切だし、間伐でも、皆伐でも 育てる経費を考えたら「いるもんはいるという原木の買取価格」にして、未来を見据えた森林を育てて頂けるようにしないと、子供や孫の世代に、あの頃の日本人は何やってたんだと言われるような気がする。

牛丼屋さんみたいに、価格競争で値段を決めてはいけないのだよ、森林資源を使っている会社は・・・と思うけど、建築にも企業間の競争はあるし、なかなか難しいのも現実。
林業の問題ではなく、国家の問題なので(と、とりあえず言いきってしまうw)、経済活動の中でみんなで、その分をプラスすればいいのだけれど、鎖国している訳ではないので、それも難しい。

それが経済活動の中で自主的にできないというのならば、関税に手を加えるのが一番なんだけど、他産業の為にそれも許されないだろうし。本当は、政府が政府たる存在感を一番出せるのが、関税のコントロールなんだけど、それも放棄しそうだし。はてさて。

●あとがき
自然を守れ、土砂崩れ、水の枯渇も水害も起こすな、多様性のある森にしろ、動物も守れ、でも、動物の被害は減らせ、CO2は吸収させろ、花粉は減らせ、地域も活性させろ・・・私は、更に もう少し15年位までは目のつまった丸太を育てて欲しいとか、やっばり 死節はあかんでしょ とか、固い釘のきく国産の下地材はないのかとか、堅い多様なフロアー材を育てて欲しいとか そんな事も思ったりする。

そこに、更に コストダウンしろなんて とても 言えない。負担しますので、どうぞよろしくお願いします という気持ちになる。

最近、同じ事に同じお金を使うにしても 変えた方がいいと思う言葉がある。

「補助金」「貢献」
恵んでやっている感のする言葉は、失礼だとさえ思う。
貢献というのも、本来は本業で当たり前にしなければならない事が多い。

後は「間伐材」「温暖化」
これは、又の機会にでも。

と、ここで 自分の家にも山があることを再び思い出した。まずい。やる気のない山主からは、やっぱり脱却しないと(笑)
最近、結構 わかりやすい資料を見つけましたの(難しいけど・笑)
林家のための森林経営計画ガイド

再生プランが批判されていて、そりゃもっともだ!と思った事もあったけど、資料を読む限り、何が問題なのかよくわからなくなってきた(笑) どこで、何が 変化してしまうのだろう。。。
伝わり方の問題?補助金の出し方がリンクしてないから?
地域にも、個人にも配慮されている感じはするし、当町も着々と動き出している。
イコールフィッテングというのも、なくなってないはずで 森林組合の独占を推奨しているとも思えない。PDCAで、直していけばよいのでは。そう、簡単ではないだろうけど。何にしても、時間はかかる。

とりあえず、この資料を見て、どこで、つまづくのか、何が大変なのか、どういう弊害があるのかわからないけど「わが家の森林経営計画」というのをやってみてもおもしろいかもと思った資料でした。 まずは、きっかけが大事ですもんね。

あー 長くなった(笑) 何日かけて、書いた事やら。分厚い書類が某所から、届いたので とりあえず、しばらく加筆できないので、これでアップします。分けるとぜったい、下書きのままなので、長くなってごめんなさい。しかし、自分のブログは、気楽でいいなぁ。


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1 コメント

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Unknown (炭作)
2013-05-06 11:00:15
うんうん。そうだ。頑張れー

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