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JINCHAN'S CAFE

My essay,My life
エッセイを書き続けることが、私のライフワーク

黒いドレスの女

2009年05月13日 11時56分00秒 | 家族
 「おやすみ」 小さな声で、一言そう呟いた。額に玉のような汗を浮かべ眠り込む男を、愛しげに見つめながら。今夜は傍にいたい・・・そんな想いを知ってか知らずか、男は昏々と眠り続ける。戦いから開放された、束の間の休息。それが終われば、新たな世界へ旅立っていくだろう。

 久しぶりの二人きりの夜だった。語るべきことは、いくらでもあるのに、言葉がでない。灯りを消し、ソファーへ身体を横たえる。哀しみが、じわじわ広がっていった。それは、身体を心を浸してゆき、涙の雫となって流れ出る。男が残した思い出と、愛情と、程よく交じり合い、やがて女の中からこぼれ出す。

 「この町を出たい」と、打ち明けたあの時。「どうせなら、大きな世界を見てくるがいい」と、男は返した。そうして数年後、女はその世界で深く傷つき、男は黙って、その事柄を受け止めた。かつての旅立ちを責めることも、悔やむこともなく。しかしその胸の奥に、女が受けた痛み以上のものを仕舞っていたのではないか。

 「好きな男ができた」と、切り出したあの時。カウンター席で肩を並べ、しんみり酒を酌み交わした。ポツリ・・・ ポツリ・・・ 言葉を選びながら継ぎ足されていく会話。それは、女の新たな旅立ちを予感させるものだった。「残念ながら、輝かしい未来なんて期待できそうにないのよ」 女は肩をすくめる。「今の時点で、あなたに、いくばくかの安心感や満足感を与えることもできない。ただ私は、その人と、きちんと向き合ってみたいと思ってる」 女には、メニューの文字が霞んで見えた。

 沈黙が漂い、その流れを掴んだように、カウンターの向こうから、やや控え目な声がかかる。「お客さま、ご注文は?」 「丸刈りーだぁ~」 (←キビシ~ッ!)

 ______________________________________

 わかってくれたぁ?ここまで、北方謙三ワールド目差して頑張ってみたんですが。えっ?お呼びでない・・・。こりゃまた失礼致しました~。しゃーないな。ほな、いつもの’じんちゃんワールド’でいきまひょか。

「せやけど、あの時ハラハラしてな。」
「アンコウ料理やろ?場の雰囲気で、わけわからんと注文したら、時価やってんな。」
「そんで財布の中見たら、ギリギリや。ホンマあぶなかったわ。」
「あの小料理屋め。」
「まぁ美味かったから、ええやないか。」
「うふふふ」
「くっくっくっくっ」

 幾度となく繰り返された会話。一人ではできひんね・・・

あーなただーけがー いきがーいなの~
おねがいー おねがいー 逝かーなーいで~ 
テナコト言われて その気になって しばらく様子を見ていたら
せっかくためたへそくりを~ 娘が密かにくすねてる 喪服を脱ぎ捨て夜の街~
しこたま飲んで ハイそれまでョ
フザケヤガッテ フザケヤガッテ フザケヤガッテ コノヤロー

 「あんたかて、私が貸したウン十万、返さんまま逝ってしもたがな」 (←母)
 泣けてくーるぅ~
        - 父よ、静かにねむれ -

 http://www.youtube.com/watch?v=izJxA0Vhv2o
(↑ タイトル『いじめやんといて』やし~)

※クレージー・キャッツがわからない方は、参考にしてください。山猫軒店主より。
 https://www.youtube.com/watch?v=kTqBByUA5S4


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「これ、多分’雅’やんな?  (じんちゃん)
2014-09-05 09:48:44
「これ、多分’雅’やんな? 
どこに反応するやら。ごめんね、関西人のサガというもので(笑)

うちの父は植木等を灰汁ヌキしたような雰囲気。
酔うとスーダラ節を歌うような人です。
黒いドレスの女のじんちゃん、見てみたいわ。」 (BY すずちゃん)

「ええな~
ええかんじの二人やな~。」 (BY チヤさん)

「’丸刈りーだぁ’ カウンターの向こうから ’あるよ’
お父さん逝ったのいつの話ですか?」 (BY 徹さん)

「’義務列島’は…有りますか^^;」 (BY まいこさん)

「’丸刈りーだぁ~’ 、お店で一度言ってみたい。(^^♪
クレージー・キャッツ、懐かしい~」 (BY すずさん)

「敵ら、散来ず~
明らかに調子に乗ってるな^^;」 (BY まいこさん)

「神来夢。富古鈴酢。巣苦竜怒雷婆・・・。
夜露死苦 女価独句 椀椀。 氣志團か!」 (BY じんちゃん)

「黒いドレスの女。。。
いいねぇ。。。 時にはそういう女性を・・・・・(¬w¬*)ウププ
ちがうかっ(^▽^;)」 (BY なおさん)

「わっかんね。ついていけね。なにも言えね。」 (BY ギャツビイくん)

「渡辺淳ちゃんイチオシの ’白のスリップ’ くらいわからない世界だったと。
勉強しなされ。 おばちゃんが教えてあげる (←いらんわぃ)。」 (BY じんちゃん)

「てっきり・・・
『白いドレスの女』バージョンのサスペンスかと思いました^^;
北方謙三バージョンでしたかぁ~~^^」 (BY 鞍馬さん)

「じんちゃん!
このエッセイ前半、北方謙三っぽいです!

なーんて、言ってる私ですが・・・
北方作品は一冊しか読んだ事ないんです。あは^^

10代の頃・・・
付き合った彼氏が北方ファンで・・・
もちろん私とは一回り以上年の離れた人だったんですけど・・・
その時彼から一冊借りて北方作品を読んだんです。
確かその時読んだのが 友よ静かに瞑れ だったと思います。

でもこの時、北方作品を面白いと思えなくて・・・
そのトラウマからそれ以来北方作品には手を出していません。(笑)

が、あれから20年近く経った今なら・・・
当時とはまた違った視点で読めるかも知れないですね~。
ちょっと読んでみようかな^^」 (BY はるかさん)

「残されたじんちゃんはどう生きるか答えは出ましたか?
お父様のご冥福をお祈りいたします。」 (BY みーちゃん)

「お疲れした。」 (BY ずとさん)

「ホンマ疲れたわ。 でもね、それが始まりなの。
人の死は、終わりじゃないんだよ~。」 (BY じんちゃん)

「じんちゃんのことだから、伊丹十三の’お葬式’みたいに…
勝手に妄想させていただきました。」 (BY 徹さん)

「余命を言い渡されるコトは、毎日少しずつ命のろうそくが短くなるコト。
それを見ること受け入れるコトは辛くて、その間に自分自身も疲れ果てる場合もある。
でもね、突然何ひとつ心の準備もなく逝ってしまった場合は、もっと辛いのかも知れないね。
じんちゃんは、後悔はありませんか?
いくらやりすぎても足りないものだろうけど、じんちゃんなりにお父さんとの時間を
愛情たっぷりと過ごせたのなら良かったと思います。」 (BY すずちゃん)

「渡辺・北方調とはいきませんが…
’信じ難いと思われるでしょう…’の中河与一調の体験物をいずれ書きたいと思っています。
その節は微妙なる女性心理の綾などを宜しくご教示の程願います。(^o^) 」 (BY ジージさん)

父が亡くなった時、私なりの追悼エッセイが書けないものだろうかと考え、こういう形にしました。
北方謙三さんの作品は、ヒットした当時に読んだきりで、’こんな感じだったかなぁ・・・’と思い出しながら
前半を書いたのですが、改めて読み返してみたら思ったより柔らかい表現で、色気のある文章。 [E:clover]
その後も、「三国志」 や「水滸伝」を手掛けられ、歴史小説を中心におじさまのハートをキャッチし続けている
北方さんですが、過去の人にならない、現役であり続ける努力には、頭が下がります。
その発言は、渡辺淳ちゃん並みに、スットコドッコイだったりもするけれどー
「俺は、女の誕生日にはバラ一輪しか送らねぇんだ。 さだめし今なら、メール一発だな。」
北方語録、何だか気に入って、何度かエッセイに取り上げている、じんちゃんなのだ~ [E:wink]









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