8年にわたり農家から預かった計167トンものコメを横流ししたとして愛媛・西条市農協の職員(58)が15日、窃盗容疑で逮捕された。倉庫管理を一手に任されたことを悪用、少しずつ盗み出しては地元の米穀店などに売りさばき、単純計算で3400万円も荒稼ぎ。だが、うち68トンは工業用にしかしない“カドミウム汚染米”と知りながら横流し、すでに消費者が食べてしまったとみられる。
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コメも積もれば山となる-盗るも盗ったり167トン!! 30キロ入り米袋では計5642袋にもなる。8年にわたり少しずつ盗み続けた地道で大胆な?コメ泥棒は、やっぱり農協内部にいた。
愛媛県警西条署に逮捕されたのは同農協職員、三崎安正容疑者(58)。
「8年ほど前から倉庫の玄米を1度に10袋ぐらいずつ盗み出し、市内の米穀店などに売りさばいていた。1人でやった」と供述。同農協によると、三崎容疑者は平成8年から同農協の倉庫で出入庫管理を1人で担当。これを機にコメ泥棒に手を染めたようだ。
直接の逮捕容疑は今月7日ごろ、農家から預かって市内の倉庫に保管していた1袋約30キロの玄米10袋(6万5000円相当)を盗んだ疑い。
167トンという膨大な被害は、内部調査で発覚した。帳簿などを調べたところ、167トン分が足りないことが13日に判明。農協は三崎容疑者に連絡を取ろうとしたが、行方不明となったため、14日に被害届を出すとともに事件を公表。すると三崎容疑者は家族を通じて連絡、農協関係者が付き添って同日夕に同署に出頭した。
盗んだ米の量もスゴイが、米の“質”がまた問題なのだ。
167トンのうち政府買い上げ米が102トン(3422袋)、自主流通米が65トン(2220袋)。政府米の中に、有毒のカドミウムが食糧庁の基準以上含まれる「カドミウム含有米」68トン(2558袋)も入っていた。
カドミウム濃度0・4-1PPMのコメは、食用として一般には流通させず、工業用の接着のりの原料などとして使う。西条産の米の一部にカドミウムが含まれることが平成13年に判明、14年から分別して管理していた。
三崎容疑者が横流ししたため「カドミウム米が一般家庭にも流通してしまったことはほぼ間違いない」と農協関係者。「出入管理を担当した三崎容疑者が、一般米とカドミウム米を区別できないわけがない」と話しており、カドミウム米と知りながら売りさばいた可能性が濃厚だ。
農協側は「食糧庁の基準は厳しいもので、食品衛生法上では基準値内。仮に食べても健康に影響はない」と強調するが、三崎容疑者はコメとともに“不安”もバラまいてしまった。
★発覚のきっかけは保険配当金8万円着服
動機は「カネしかないだろう」と農協関係者。だが三崎容疑者は「仕事はマジメで、ギャンブルや女遊びも聞いたことがない」とも。事件発覚のきっかけは容疑者が農協保険の加入者の配当金約8万円を着服したこと。本人も認めて6日付で退職願を提出したが、その後の調査でコメ泥棒も判明した。
★農協職員のコメ泥棒
◆50トン(平成13年4月) 秋田おばこ農協西木支所の倉庫係職員(34)が2年半に玄米約1700袋を盗んだとして逮捕。借金返済や遊興費に充てた。
◆59トン(今年6月逮捕) 栃木・小山農協中支店の倉庫係職員(23)が4月に玄米170袋を盗んだとして逮捕。計1956袋を盗んだことを認めた。
産経スポーツ 2005年7月16日
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