最近は立野ダム問題が急浮上し、そちらの方での対応がもっぱらですが、川辺川ダム関係―球磨川・川辺川のダムによらない治水対策、五木村再生問題も大事な局面です。
「(川辺川)ダムによらない治水を検討する場」第4回幹事会での国交省の説明に関連して、今日(11月26日)、九州地方整備局長あてに申し入れをしました。
以下、その文章です。
国土交通省九州地方整備局長 吉崎収様
2012年11月26日
ダムによらない治水対策、河川整備計画の策定、「特措法」の制定を
「ダムによらない治水を検討する場」第4回幹事会への説明等をふまえて
11月8日に開かれた「ダムによらない治水を検討する場」(「検討する場」)第4回幹事会への説明等をふまえて、以下申し入れます。
1、「堤防は、計画高水位を超えると決壊する条件で浸水状況を示す」ことについて
①この点については、「第2回検討する場」ののちに、2009年4月、日本共産党熊本県委員会・同南部地区委員会として、すでに申し入れを行っています。
「計画高水位を超えると堤防が決壊する場合」だけでなく、「計画高水位を超えても堤防が決壊しない場合」のシミュレーションも併せて示すべきです。この場合、堤防が脆弱である場合や高さが不足している部分などは明らかにして「ダムによらない治水対策」として早急に、強度や高さの改善を図ることが必要です。
「計画高水位を超えても堤防が決壊しない場合」は下流地区に浸水区域は存在せず、人吉地区と球磨川上流地区でもほとんど浸水しません。一部浸水する地区については、より詳細に検討して、どこから、どのように洪水が侵入するのかを明らかにすることが必要です。こうした対策を含め丁寧な説明を行うべきです。
②国土交通省の「治水経済調査マニュアル」は、洪水が堤防を越えていないのに氾濫するという想定で最大被害を表すもので、ダムの必要性に導くための計算との指摘もあります。
国の「政策評価・独立行政法人評価委員会 政策評価分科会」(金本良嗣会長。「川辺川ダム事業に関する有識者会議」座長を務めた人)でも論議の対象となっています。
―松本敦評価監視官発言
「河川の場合は、ある一定の水量が流れ、その水位が高くなると氾濫を起こすというようなシミュレーションを行って、雨量とかから換算するわけでございますけれども、その結果出た値が、過去の実績値と比べても高すぎるのではないかというのがこちらの疑問点でございます。先方(国交省)の見解としては、氾濫のシミュレーションをやっているんだけれども、ある一定水量を超えたら氾濫するという前提でやっていますと、ただ氾濫しない場合があるのは、おっしゃるとおりなんですけれども、それがどういう要因かというのはなかなか今の知見ではあらかじめ算出できないということでございまして、なかなか難しいんですというのが回答になっています」(2008年2月15日開催、総務省ホームページより)
この問題は、「第2回検討する場」でも論議になりました。
蒲島知事の質問に対して、「リスクが高くなる」云々といった程度の答弁(八代河川国道事務所長)にとどまっているものです。
この際、「計画高水位を超えると決壊する」との根拠について、計画高水位を超えたことを原因とする堤防決壊の事例、件数、メカニズム、破堤条件を明らかにしていただきたい。
③洪水が堤防一杯に流れても堤防は決壊せず、どれだけの量が流れたかを過去の事実にもとづいて明らかにすることが重要です。そのうえで、堤防満杯に流れても安全な堤防にする手当、堤防未整備等により被害が生ずる部分の個別的対策を講ずる必要があります。
八代地区では、1982年(S57年)洪水で、計画流量7000m3/sを上回る7264m3/sが、計画高水位より1・2㍍も低い水位で流れています。
人吉地区では、1982年(S57年)洪水で、5400m3/sが、堤防天端まで1mmの余裕で流れています。
2、「昭和40年7月降雨によるシミュレーション」ではなく、昭和57年降雨時の実測にもとづくべき
「説明資料」では、「昭和49年7月降雨によるシミュレーション結果によると、『直ちに実施する対策』及び『追加して実施する対策(案)』の実施後においても氾濫が想定される区域が存在する」と述べています。
国土交通省は、一貫して、1965年(昭和40年)7月洪水の人吉地点流量5,700 m3/sを元にシミュレーションした氾濫区域などの計算結果を発表してきましたが、シミュレーションは1965年(昭和40年)洪水ではなく、同規模の1982年(昭和57年)洪水の人吉地点流量5,400 m3/s で行うべきです。
1965年(昭和40年)洪水の流量は実績ではなく、想定です。これまでも国交省の想定は過大であるという批判があります。1965年(昭和40年)当時は、人吉では本格的な河川整備が行われておらず狭い川幅でした。また、この時の人吉地点流量は観測されていないうえに、上流での氾濫流量が過大に上乗せされている可能性も指摘されています。1982年(昭和57年)の流量は実際に観測されたものです。河床掘削や河川整備も進み、ほぼ河川内で洪水が収まっていました。
3、ダムなし治水のさらなる具体化、強化を
①堤防かさ上げの位置づけと具体化
堤防かさ上げを、スピード、実現可能性という面で積極的に位置づけることを求めます。
堤防かさ上げは、新たに用地買収をしたり、遺跡調査をしたりしないで、既存の施設を活かして、治水能力を高め、安全度を高めることができるものです。また河川内を変えず、川の流れも変えません。景観のリスクは各地で改善し補う対策がとられています。
堤防をかさ上げし、堤防満杯でも壊れない補強をすることによって、余裕高部分まで洪水が流れ、流下能力を高めることになります。
②人吉地区の安全度をさらに高める対策を示すべきです。「堤防は計画高水位を超えると決壊する」ことを解消する方法も示すべきです。
なお、国交省の「平成8年月球磨川河道水位検討業務報告書」(第3章球磨川河道改修による効果検討、人吉地区の効果検討)では、人吉地区では、昭和40年、57年洪水も堤防を越えないとの結果になっています。
③予算をつけスピード感をもって
*人吉地区―土砂の浚渫・掘削。護岸のかさ上げ、堤防の嵩上げ・補強。人吉橋左岸下流の突出部除去・築堤。遊水地。
*川辺川地域―堆積土砂除去、輪中堤、遊水地。
*球磨川上流地域―堆積土砂除去、遊水地。
―等について、予算をつけスピード感をもって進めること。
④「想定外洪水」「大規模洪水(戦後最大の昭和57年7月洪水を上回る)」に対処するソフト対策
「想定外洪水」「大規模洪水」に対しては、治水施設で完全に防御することは困難です。避難・誘導・水防、被害補償保険などのソフト対策の整備を急がなければなりません。
社会資本整備河川分科会答申「中期的な展望に立った今後の治水対策のあり方について」は、
―ハード整備と一体となったソフト施策による安全の確保
水害・土砂災害から人命と財産を守るために、氾濫等を防止する堤防や砂防施
設などのハード整備を着実に進めるとともに、ハード整備が間に合わないところ
やハード整備で対応が困難なところについても、ハザードマップ、土砂災害
警戒情報等の情報提供や河川の水位、浸水状況などリアルタイム情報の提供
等のソフト対策を充実することにより、可能な限り安全の確保に努める。
―今後の治水対策において重点化すべき事項とその目標
*予防対策の重視
災害が発生した箇所について事後に対策を講ずることは、災害復旧に係る
費用や新たな対策工が必要となるなど、多大なコストを要することから、災
害を未然に防ぐための予防対策を重視する。その際には下記の視点に立った
対策に重点化する。
・人的被害の回避・軽減
少なくともあらゆる地域で人的被害を回避・軽減する。
・深刻なダメージの回避
仮に被災したとしても、国民の生活や社会経済活動が深刻なダメージを
受けることなく持続可能となるよう、国家レベル、地域レベルで守るべき
機能を明確化して防御する。
―などど、「ハード対策と一体となったソフト対策」について、示しており、遅滞なく具体化をはかっていくことを求めます。
また、現行保険制度の活用、加入の促進、公的助成制度の制定なども必要です。
4、「ダムによらない治水を検討する場」での審議を整理し、成案にし、「ダムなしの河川整備計画」を早急に策定すべきです。河川整備計画にもとづき、ダムによらない治水対策への予算を増額・確保し、諸対策のスピードアップを求めます。
5、「ダム事業の廃止等に伴う特定地域の振興に関する特別措置法」の早期制定を
「特捜法」につては、早期に成立、制定されるよう努めること。五木村振興策に国として積極的に予算を計上すること。
「(川辺川)ダムによらない治水を検討する場」第4回幹事会での国交省の説明に関連して、今日(11月26日)、九州地方整備局長あてに申し入れをしました。
以下、その文章です。
国土交通省九州地方整備局長 吉崎収様
2012年11月26日
ダムによらない治水対策、河川整備計画の策定、「特措法」の制定を
「ダムによらない治水を検討する場」第4回幹事会への説明等をふまえて
11月8日に開かれた「ダムによらない治水を検討する場」(「検討する場」)第4回幹事会への説明等をふまえて、以下申し入れます。
1、「堤防は、計画高水位を超えると決壊する条件で浸水状況を示す」ことについて
①この点については、「第2回検討する場」ののちに、2009年4月、日本共産党熊本県委員会・同南部地区委員会として、すでに申し入れを行っています。
「計画高水位を超えると堤防が決壊する場合」だけでなく、「計画高水位を超えても堤防が決壊しない場合」のシミュレーションも併せて示すべきです。この場合、堤防が脆弱である場合や高さが不足している部分などは明らかにして「ダムによらない治水対策」として早急に、強度や高さの改善を図ることが必要です。
「計画高水位を超えても堤防が決壊しない場合」は下流地区に浸水区域は存在せず、人吉地区と球磨川上流地区でもほとんど浸水しません。一部浸水する地区については、より詳細に検討して、どこから、どのように洪水が侵入するのかを明らかにすることが必要です。こうした対策を含め丁寧な説明を行うべきです。
②国土交通省の「治水経済調査マニュアル」は、洪水が堤防を越えていないのに氾濫するという想定で最大被害を表すもので、ダムの必要性に導くための計算との指摘もあります。
国の「政策評価・独立行政法人評価委員会 政策評価分科会」(金本良嗣会長。「川辺川ダム事業に関する有識者会議」座長を務めた人)でも論議の対象となっています。
―松本敦評価監視官発言
「河川の場合は、ある一定の水量が流れ、その水位が高くなると氾濫を起こすというようなシミュレーションを行って、雨量とかから換算するわけでございますけれども、その結果出た値が、過去の実績値と比べても高すぎるのではないかというのがこちらの疑問点でございます。先方(国交省)の見解としては、氾濫のシミュレーションをやっているんだけれども、ある一定水量を超えたら氾濫するという前提でやっていますと、ただ氾濫しない場合があるのは、おっしゃるとおりなんですけれども、それがどういう要因かというのはなかなか今の知見ではあらかじめ算出できないということでございまして、なかなか難しいんですというのが回答になっています」(2008年2月15日開催、総務省ホームページより)
この問題は、「第2回検討する場」でも論議になりました。
蒲島知事の質問に対して、「リスクが高くなる」云々といった程度の答弁(八代河川国道事務所長)にとどまっているものです。
この際、「計画高水位を超えると決壊する」との根拠について、計画高水位を超えたことを原因とする堤防決壊の事例、件数、メカニズム、破堤条件を明らかにしていただきたい。
③洪水が堤防一杯に流れても堤防は決壊せず、どれだけの量が流れたかを過去の事実にもとづいて明らかにすることが重要です。そのうえで、堤防満杯に流れても安全な堤防にする手当、堤防未整備等により被害が生ずる部分の個別的対策を講ずる必要があります。
八代地区では、1982年(S57年)洪水で、計画流量7000m3/sを上回る7264m3/sが、計画高水位より1・2㍍も低い水位で流れています。
人吉地区では、1982年(S57年)洪水で、5400m3/sが、堤防天端まで1mmの余裕で流れています。
2、「昭和40年7月降雨によるシミュレーション」ではなく、昭和57年降雨時の実測にもとづくべき
「説明資料」では、「昭和49年7月降雨によるシミュレーション結果によると、『直ちに実施する対策』及び『追加して実施する対策(案)』の実施後においても氾濫が想定される区域が存在する」と述べています。
国土交通省は、一貫して、1965年(昭和40年)7月洪水の人吉地点流量5,700 m3/sを元にシミュレーションした氾濫区域などの計算結果を発表してきましたが、シミュレーションは1965年(昭和40年)洪水ではなく、同規模の1982年(昭和57年)洪水の人吉地点流量5,400 m3/s で行うべきです。
1965年(昭和40年)洪水の流量は実績ではなく、想定です。これまでも国交省の想定は過大であるという批判があります。1965年(昭和40年)当時は、人吉では本格的な河川整備が行われておらず狭い川幅でした。また、この時の人吉地点流量は観測されていないうえに、上流での氾濫流量が過大に上乗せされている可能性も指摘されています。1982年(昭和57年)の流量は実際に観測されたものです。河床掘削や河川整備も進み、ほぼ河川内で洪水が収まっていました。
3、ダムなし治水のさらなる具体化、強化を
①堤防かさ上げの位置づけと具体化
堤防かさ上げを、スピード、実現可能性という面で積極的に位置づけることを求めます。
堤防かさ上げは、新たに用地買収をしたり、遺跡調査をしたりしないで、既存の施設を活かして、治水能力を高め、安全度を高めることができるものです。また河川内を変えず、川の流れも変えません。景観のリスクは各地で改善し補う対策がとられています。
堤防をかさ上げし、堤防満杯でも壊れない補強をすることによって、余裕高部分まで洪水が流れ、流下能力を高めることになります。
②人吉地区の安全度をさらに高める対策を示すべきです。「堤防は計画高水位を超えると決壊する」ことを解消する方法も示すべきです。
なお、国交省の「平成8年月球磨川河道水位検討業務報告書」(第3章球磨川河道改修による効果検討、人吉地区の効果検討)では、人吉地区では、昭和40年、57年洪水も堤防を越えないとの結果になっています。
③予算をつけスピード感をもって
*人吉地区―土砂の浚渫・掘削。護岸のかさ上げ、堤防の嵩上げ・補強。人吉橋左岸下流の突出部除去・築堤。遊水地。
*川辺川地域―堆積土砂除去、輪中堤、遊水地。
*球磨川上流地域―堆積土砂除去、遊水地。
―等について、予算をつけスピード感をもって進めること。
④「想定外洪水」「大規模洪水(戦後最大の昭和57年7月洪水を上回る)」に対処するソフト対策
「想定外洪水」「大規模洪水」に対しては、治水施設で完全に防御することは困難です。避難・誘導・水防、被害補償保険などのソフト対策の整備を急がなければなりません。
社会資本整備河川分科会答申「中期的な展望に立った今後の治水対策のあり方について」は、
―ハード整備と一体となったソフト施策による安全の確保
水害・土砂災害から人命と財産を守るために、氾濫等を防止する堤防や砂防施
設などのハード整備を着実に進めるとともに、ハード整備が間に合わないところ
やハード整備で対応が困難なところについても、ハザードマップ、土砂災害
警戒情報等の情報提供や河川の水位、浸水状況などリアルタイム情報の提供
等のソフト対策を充実することにより、可能な限り安全の確保に努める。
―今後の治水対策において重点化すべき事項とその目標
*予防対策の重視
災害が発生した箇所について事後に対策を講ずることは、災害復旧に係る
費用や新たな対策工が必要となるなど、多大なコストを要することから、災
害を未然に防ぐための予防対策を重視する。その際には下記の視点に立った
対策に重点化する。
・人的被害の回避・軽減
少なくともあらゆる地域で人的被害を回避・軽減する。
・深刻なダメージの回避
仮に被災したとしても、国民の生活や社会経済活動が深刻なダメージを
受けることなく持続可能となるよう、国家レベル、地域レベルで守るべき
機能を明確化して防御する。
―などど、「ハード対策と一体となったソフト対策」について、示しており、遅滞なく具体化をはかっていくことを求めます。
また、現行保険制度の活用、加入の促進、公的助成制度の制定なども必要です。
4、「ダムによらない治水を検討する場」での審議を整理し、成案にし、「ダムなしの河川整備計画」を早急に策定すべきです。河川整備計画にもとづき、ダムによらない治水対策への予算を増額・確保し、諸対策のスピードアップを求めます。
5、「ダム事業の廃止等に伴う特定地域の振興に関する特別措置法」の早期制定を
「特捜法」につては、早期に成立、制定されるよう努めること。五木村振興策に国として積極的に予算を計上すること。