Dr. Jason's blog

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乳がんと牛乳 その3

2009-05-10 | Medicine
昨日の記事「乳がんと牛乳 その2」の続き

Breast Cancer Around the Worldのページの,国毎の人口10万人当りの乳がんの発生率の図からピックアップする国に,中国,ロシア,シリアの3つの国追加して,20カ国とした.

 国別の乳がんの発生率(単位:人,人口10万人当り.年齢補正済み.2002年統計.)は,

 日本 32.7
 米国 101.1
 カナダ 84.3
 イギリス 87.2
 フランス 91.9
 ドイツ 79.8
 イタリア 74.4
 イスラエル 90.8
 ニュージーランド 91.9
 オーストラリア 83.2
 パキスタン 50.1
 インド 19.1
 アルゼンチン 73.9
 ブラジル 46
 トルコ 22
 韓国 20.4
 タイ 16.6
 中国 18.7
 ロシア 38.8
 シリア 44.8


 上記の20カ国について,参考文献に示した統計資料の本の「1人1日あたりの食品供給量」(世界国勢図会〈2005/06〉pp.478-480) から「牛乳・乳製品」のデータ(単位:g/日,1人1日当り,国別,2002年)だけでなく,さらに「肉類」のデータ(単位:g/日,1人1日当り,国別,2002年)もピックアップして,改めてグラフ化した.

[20カ国の乳癌発生率と乳製品の摂取量 (2002年)]

Dr. Jason Suzuki 作成
参考文献
http://www.time.com/time/2007/breast_cancer/
世界国勢図会〈2005/06〉矢野恒太記念会


ここで,乳癌発生率と乳製品の摂取量の相関係数は 0.927 であった.

中国,ロシア,シリアと,違う地域,違う人種,違う文化の3つの国を加えても,この相関はわずかしか変動(低下)していない.(この3カ国を追加前の相関係数は 0.929)



[20カ国の乳癌発生率と肉類の摂取量 (2002年)]

Dr. Jason Suzuki 作成
参考文献
http://www.time.com/time/2007/breast_cancer/
世界国勢図会〈2005/06〉矢野恒太記念会


ここで,乳癌発生率と肉類の摂取量の相関係数は 0.862 であった.

肉類の摂取量のわりには乳癌の発生率の高い国:イギリス,パキスタン,シリアは乳製品の摂取量が比較的高いこと,また逆に,肉類の摂取量のわりには乳癌の発生率の低い国:韓国,中国では乳製品の摂取量が比較的低いことも読み取れる.


因果関係はともかく,すくなくとも上述の20カ国の2002年のデータでは,乳癌発生率との相関は,乳製品の方が肉類よりも少し高いことがわかった.



参考文献

乳がんと牛乳──がん細胞はなぜ消えたのか

ジェイン・プラント

径書房

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乳がんと前立腺がんの死亡者はなぜ増えるのか (扶桑社新書 36)

横田 哲治

扶桑社

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[世界の地域別の乳癌発生数] (TIME誌のWeb, 2002年度のデータによるもの)
Breast Cancer Around the World (TIME)

[入手しやすい世界の統計データの参考書] (2002年のデータが収録されている版)
世界国勢図会〈2005/06〉―世界がわかるデータブック

矢野恒太記念会

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2 コメント

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ほんとですよね (tomy)
2009-06-18 09:50:48
お初にコメントさせていただきます。
Jasonさんのブログは、乳製品摂取と乳癌罹患率がグラフになっていて、とても分かりやすかったです。さすが科学者ですね。
実は私も乳癌になって2年、それまでの朝のパン食、肉、乳製品を厳密にではありませんが、かなり減らしました。その結果が直接病気に良かったかどうかは、今のことろよくわかりませんが、肌の調子、特に冬場の唇の乾燥が改善し、花粉症も完全にではありませんが、ほとんど症状が出なくなりました。
食生活の大切さが身に染みるのに、ほとんどの人がそれを知らない現実がものすごく怖いです。それなのに病院でも食事の指導は全くされず、病院食にも乳製品が多用されている始末。どうしたら、そんな現状を変えられるんでしょうね?乳製品と乳癌に関連があることを医療関係者だって、わかっているはずなのに。
意外と分かっていないのでは? (Dr. Jason)
2009-07-20 22:41:07
> tomyさん
> 乳製品と乳癌に関連があることを医療関係者だって、わかっているはずなのに。

乳癌と食生活という切り口で,動物性タンパク質,動物性脂肪の摂取については,多くの人が程度の差はあれ認識していますが,それよりも,乳製品摂取量の方が,相関度が高いということは,あまり知られていないかもしれません.
少なくとも,教科書的な本には書かれていないと思います.

乳製品の摂取量と癌の発生という切り口では,前立腺癌についての研究の方が多いようです.

東アジア以外の多くの国では,四つ足の動物の肉はあまり食べない人でも,牛乳,チーズを全くとらない人はあまり多くないので,実は乳製品の方が影響が大きいという着眼がないのだとおもいます.実際に疑って調べれば,相関度は肉類よりも高いし,さらに細かくしらべれば,IGFや性ホルモンの残留に問題がありそうなことはすぐにわかるのですが...

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