JAHPON LAND( Pucci )

スケートファニチャーやステンドグラス作品などJAHPON.comとして活躍する作家 土屋隆亮(プチ)のメッセージ!

熊の子太郎 14

2007年11月09日 | 熊の子太郎
おまつりは 朝からはじまりました。
近くの村からも 人々がたくさん集まり、
長老が てまねき するとおりに ふう たちにも
とくべつな席が用意されていました。
お面をかぶった おどり子 たちの劇や
たいこ や ふえ をもった楽団の えんそう に、
きれいな声の うたうたい たち が出て来ると
楽しいリズムに たお も さや も おどりだしました。
村のこどもたちも とびだして来て、
ふう も村のみんなも 輪になって ぐるぐるおどります。

やがて 日も暮れると 広場の火も大きくなりました。
中心で長老が語りだすと みんな静かになりました。そして
「ふうや、ぼくちゃんたちも こっちへおいで。」
ふう は ハッとしました。長老は ちゃんと知っていたのです。
長老にかけよると、ぎゅっと強くだきつきました。
長老も ふう を だきしめ、みんなで たくさん泣きました。
その時、びゅううぅっと つむじ風が吹き、
広場の火が 強く吹き上がりました。
ふう は 胸のボタンを外して コートを半分脱いで、
これまでの事を 朝が来るまで話しつづけました。


熊の子太郎 13

2007年11月08日 | 熊の子太郎
ハンターは西の方から来た よそもの でした。
ふう の村では、熊は山の神様の使い で
勝手に山にのぼる事すら禁じていましたから、
やばんなハンターを追いかけたものの
間に合わなかったのです。
村の言い伝えによると 作物が採れず 村が苦しい時、
熊が山を下りて来て 自らの肉を与えて下さると言います。
そうして 互いの おくりもの が あたりまえの しぜんに
こうかん されるのです。

なつかしい ふう の村に着くと
広場では おまつりの準備をしていました。
ふう のよく知っている人ばかりです。
その夜は 太郎のそばで寝ました。


熊の子太郎 12

2007年11月07日 | 熊の子太郎
「バシャーン」
ふう のそばに太郎がたおれると、あたりは 真っ赤です。

「そこまでだ、無法はやめろ!」
何十人もの ヤリ や オノ をもった
ふう の村の人々が、ハンターを囲みました。

すぐに ハンターは捕まり、
人々は 川岸で 太郎の体をていねいに 拭くと
おみこしの台に太郎を乗せて 山を下ってゆきました。
ふう は ぼうぜんとしながらも、
こどもたち ふたりを ぎゅっとしたまま
人々の ぎしき をながめ、
せなかに ふたりを 背負うと 行列のあとについて
山を下りました。


熊の子太郎 11

2007年11月06日 | 熊の子太郎
川は まだ冷たい 雪どけ水ですが、
やわらかい ひだまりには ゆげが立つほど
あたたかい風が 流れていました。
太郎は 深みで 魚のむれを追っています。
ふう は 浅せで こどもたちと泳ぎの練習です。
まだ水に顔をつけられない さや に
たお が からかって 水をかけたり、
ふう の 水中さかだちを たお が まねして
ひっくりかえったり。
その時です。ふう は 岩の上に見たのです!
こちらを向いて つきささりそうな 黒く光る影を!
ふう は その光る ぼう のことを知っていました。
ライフルじゅうです!
ふう は、とっさに こどもたちに おおいかぶさって、
「うたないで!」と叫びました。
同時に、ざばあっ と 太郎が飛び出し
「ダアァーン ダアーン ダーンン」
はじめて耳にする ごう音が あたりの山に こだまして、
ふう たちは ぎゅっと ちぢこまりました。


熊の子太郎 10

2007年11月03日 | 熊の子太郎
それから どれだけ しあわせな朝を迎えたのでしょう。
夢の様な毎日は あたらしい 発見に満ちていて、
いつしか ふう は ふたごの赤ちゃんを生みました。
「たお」「さや」と名付けた こどもたちは
すくすくと育ち もう 外に出て よにんで すもうをとったり、
おにごっこをして かけまわったりできるのです。
そんな ある日、かぞくで 川へ魚をとりに出かけます。
たお も さや も わくわくして 朝からおおはしゃぎ。
ふう が ふたりにコートを着せると ドアからとび出して
とくいの でんぐりがえしを しながら せかしました。
「はーやーくっ はーやーくっ」
「すーぐ いーくよっ すーぐ いーくよっ」
よにんの唄は やっぱり「どん どん どん」になって、
川へ こうしんしてゆきました。


熊の子太郎 9

2007年11月02日 | 熊の子太郎
ふたりは 太郎が用意した 食事を食べます。
どれも ふう には はじめての味で、
おいしくて おなかは いっぱいになりました。
太郎が話す 料理や ここでの生活の全ては
不思議な事にあふれていたけれど、ふう には
なぜか納得のいく かんたんなしくみばかりでした。
太郎は クマのコートをさし出しながら
「さあ、お山を あんないしてあげる」と言うと
ふう は するりとコートを はおります。すると
太郎よりは 少し小柄な 熊そのものになりました。
太郎が頭の上で 手をたたいてみせると
ふう も まねしながら「太郎ちゃんになっちゃった」
と、はしり回ります。
なるほど 山にピッタリの体が たいへん気に入り
ふたりは はしゃぎつづけたのです。 



熊の子太郎 8

2007年11月01日 | 熊の子太郎
小鳥たちの歌声と 天窓からの光のカーテンに
ふう は ゆっくり目覚めました。
「おはよう ふう」太郎がお茶をもって来ます。
「おはよう 太郎ちゃん」と、コップをもらいながら
ふう は、太郎ちゃんが 少年の姿をしているので
目をこすりなおして まばたきをパチクリしました。

「ほんとうに 太郎ちゃんかい?」ふう が言うと
「そうだよ。 家では脱ぐんだよ、おどろいた?」と、
ドアの近くにかけてある クマのコートをゆびさしました。
ふう は もちろんおどろきましたが、何より
太郎の美しいゆび先に すっかり 見とれていたのです。