カスタム欲に襲われる病気を一変させたリハビリ的なマシン!それが スペイン BULTACO 社製 1964年 トライアルの父と呼ばれるサミーミラーによるデザインの SHERPA T という名のバイクです。キノコの様なエンジンフィンの形や シンプルで無駄の無いエレガントなデザインが完璧で、カスタムなど罰当たりなくらいの造形美なのです。古い物なので カスタム以前の機能を安定させるレストア作業を進める中、何度も 作業を伴う構造の美しさに感動したのです。「やはり物の美しさは メンテナンスや保つ為の技術者、職人の支えがあっての存在!」KEYという部品を知っていますか?エンジンの中の奥深くで、エンジンの動きを棒の回転の動きに伝える時に棒と歯車を繋げる「引っかかり」正に鍵なのです。現代人の発想では「え?棒と一体型の歯車作ればいいのに」と安易に発想してしまいますが、過酷なエンジンの動きや熱に耐える鋼鉄の素材の特徴を熟知した構造なのです。それに 歯車が壊れたら、歯車だけをバラして交換出来るのです!現代の「バラす職人技術の賃金よりも一体型のユニットごと交換した方が安い」というビジネス重視の消費が、更に職人の首を絞めているのです。さて 長く働いたKEYは磨耗して棒と歯車の間に隙間が空いてしまいます。棒の側には半月状の溝、歯車側には四角い溝があり、KEYは4ミリ厚の半月型をしています。お世話になっている川崎にある老舗「ユニオンクラブ」の池山さんと中村さんの名コンビの ショータイムが始まるのです!バラしたKEYを見て まず 刃こぼれしたドリルの刃の残骸を貯めた箱を持ってきました!それで作るんだ!?「鋼鉄はこういう時に貴重だから捨てない」少しは普通の軟鉄と焼きの入った鋼鉄の事は知っていましたが驚きと興奮で夢中です!手ごろなドリルの刃をを切り始めます、ドリルの刃でドリルの刃に穴を空ける様な同部屋対決の光景に おれの瞳孔は開きっぱなし!仕上げのグラインダーでの微調整は中村のじいさんの年季の入ったお家芸らしく、池山社長は舞台を譲り 鍵穴現場に当てて「あと コンマ2ミリ」とか指示を出します。それは楽しい舞台で、二人の役者も「そら来た」とか「アチチチチチっ」って米みたいな部品を火の粉を出しながら素手で削って、鍵穴にピッタリのKEYを自作してしまったのです。正に神業!人間国宝の中村様です。役目を終えたKEYは記念に頂き今も宝物にして飾ってあります。時が経ちユニオンクラブにも若い職人 五島さんが加わり受継がれる素晴しい技術に希望で輝いたお店です!ACTSという草レースも運営していて やんちゃ大人で最高なので、是非チェックして下さい。中村さんのリウマチが早く治りますように祈ってます。
ユニオンクラブ サイト http://www.union-club.jp
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