3週に渡って連載した童話版「熊の子太郎」が完結しました。思い入れが強過ぎて 最初から死に向っている物語と解っているのに、どんどん描くのが辛くなっていきました。読んだ方はお気付きかもしれませんが 描きながら、太郎よりも かなり ふう に気持ちが乗っていて、事実 長老に ふう が呼ばれるシーンを描く時 おれは号泣しながらタイプしていた程ですから、読んで頂いた感想で「太郎が撃たれるシーン」を挙げる人よりも「長老に呼ばれるシーン」にグっと来た!と言ってくれた人の方がストライクな感じで おれも嬉しいです。いつもながら かなり癖のある文章で読みづらかったかもしれませんが、ちょっとイジワルに「読んでいく時間が取戻せない感じ」をひっかけるトラップ的なしかけが好きなのです。通過してしまった言葉が後になって「あれは 唄ってたのか」とか「ふう は男かと思ってた」とか、文字に表しきれない全てが、読む人それぞれの世界別に 適当に膨らんでもらえたら愉快だと思うのです。いつか この物語を絵本にして、世界の小学校に寄贈して廻りたい!という夢があります。ギャラリーを借りて個展をするよりも有意義なお金の使い方でしょ!「神話に解釈を加えながら未来にリレーさせる」こんな素敵な世界に導いてくれた 中沢新一 先生に本当に感謝します。ありがとう!生きてて良かった!
みんな寝てしまった おひるごろ、
ふう は こどもたちを背負うと 山をのぼります。
お山には もう 花が咲いて ちょうちょが泳いでいます。
迷わずに家に着き「ただいまー」とコートを脱ぎます。すると
「おかえりー」と太郎ちゃんが笑って立っていました!
ふう は こどもたちのコートを脱がすのも忘れて
太郎ちゃんに とびつきました。
やっとこ じぶんで脱いだ、たお と さや も とびつき
いつもの よにんは、きのうおぼえた唄を
いつまでも いつまでも ぐるぐる ぐるぐる うたいました。
おちょうしもんの風が うたをうたっていたら、
それは おさんぽ中の 太郎ちゃんかもしれないね。
おしまい
ふう は こどもたちを背負うと 山をのぼります。
お山には もう 花が咲いて ちょうちょが泳いでいます。
迷わずに家に着き「ただいまー」とコートを脱ぎます。すると
「おかえりー」と太郎ちゃんが笑って立っていました!
ふう は こどもたちのコートを脱がすのも忘れて
太郎ちゃんに とびつきました。
やっとこ じぶんで脱いだ、たお と さや も とびつき
いつもの よにんは、きのうおぼえた唄を
いつまでも いつまでも ぐるぐる ぐるぐる うたいました。
おちょうしもんの風が うたをうたっていたら、
それは おさんぽ中の 太郎ちゃんかもしれないね。
おしまい
おまつりは 朝からはじまりました。
近くの村からも 人々がたくさん集まり、
長老が てまねき するとおりに ふう たちにも
とくべつな席が用意されていました。
お面をかぶった おどり子 たちの劇や
たいこ や ふえ をもった楽団の えんそう に、
きれいな声の うたうたい たち が出て来ると
楽しいリズムに たお も さや も おどりだしました。
村のこどもたちも とびだして来て、
ふう も村のみんなも 輪になって ぐるぐるおどります。
やがて 日も暮れると 広場の火も大きくなりました。
中心で長老が語りだすと みんな静かになりました。そして
「ふうや、ぼくちゃんたちも こっちへおいで。」
ふう は ハッとしました。長老は ちゃんと知っていたのです。
長老にかけよると、ぎゅっと強くだきつきました。
長老も ふう を だきしめ、みんなで たくさん泣きました。
その時、びゅううぅっと つむじ風が吹き、
広場の火が 強く吹き上がりました。
ふう は 胸のボタンを外して コートを半分脱いで、
これまでの事を 朝が来るまで話しつづけました。
近くの村からも 人々がたくさん集まり、
長老が てまねき するとおりに ふう たちにも
とくべつな席が用意されていました。
お面をかぶった おどり子 たちの劇や
たいこ や ふえ をもった楽団の えんそう に、
きれいな声の うたうたい たち が出て来ると
楽しいリズムに たお も さや も おどりだしました。
村のこどもたちも とびだして来て、
ふう も村のみんなも 輪になって ぐるぐるおどります。
やがて 日も暮れると 広場の火も大きくなりました。
中心で長老が語りだすと みんな静かになりました。そして
「ふうや、ぼくちゃんたちも こっちへおいで。」
ふう は ハッとしました。長老は ちゃんと知っていたのです。
長老にかけよると、ぎゅっと強くだきつきました。
長老も ふう を だきしめ、みんなで たくさん泣きました。
その時、びゅううぅっと つむじ風が吹き、
広場の火が 強く吹き上がりました。
ふう は 胸のボタンを外して コートを半分脱いで、
これまでの事を 朝が来るまで話しつづけました。
ハンターは西の方から来た よそもの でした。
ふう の村では、熊は山の神様の使い で
勝手に山にのぼる事すら禁じていましたから、
やばんなハンターを追いかけたものの
間に合わなかったのです。
村の言い伝えによると 作物が採れず 村が苦しい時、
熊が山を下りて来て 自らの肉を与えて下さると言います。
そうして 互いの おくりもの が あたりまえの しぜんに
こうかん されるのです。
なつかしい ふう の村に着くと
広場では おまつりの準備をしていました。
ふう のよく知っている人ばかりです。
その夜は 太郎のそばで寝ました。
ふう の村では、熊は山の神様の使い で
勝手に山にのぼる事すら禁じていましたから、
やばんなハンターを追いかけたものの
間に合わなかったのです。
村の言い伝えによると 作物が採れず 村が苦しい時、
熊が山を下りて来て 自らの肉を与えて下さると言います。
そうして 互いの おくりもの が あたりまえの しぜんに
こうかん されるのです。
なつかしい ふう の村に着くと
広場では おまつりの準備をしていました。
ふう のよく知っている人ばかりです。
その夜は 太郎のそばで寝ました。
「バシャーン」
ふう のそばに太郎がたおれると、あたりは 真っ赤です。
「そこまでだ、無法はやめろ!」
何十人もの ヤリ や オノ をもった
ふう の村の人々が、ハンターを囲みました。
すぐに ハンターは捕まり、
人々は 川岸で 太郎の体をていねいに 拭くと
おみこしの台に太郎を乗せて 山を下ってゆきました。
ふう は ぼうぜんとしながらも、
こどもたち ふたりを ぎゅっとしたまま
人々の ぎしき をながめ、
せなかに ふたりを 背負うと 行列のあとについて
山を下りました。
ふう のそばに太郎がたおれると、あたりは 真っ赤です。
「そこまでだ、無法はやめろ!」
何十人もの ヤリ や オノ をもった
ふう の村の人々が、ハンターを囲みました。
すぐに ハンターは捕まり、
人々は 川岸で 太郎の体をていねいに 拭くと
おみこしの台に太郎を乗せて 山を下ってゆきました。
ふう は ぼうぜんとしながらも、
こどもたち ふたりを ぎゅっとしたまま
人々の ぎしき をながめ、
せなかに ふたりを 背負うと 行列のあとについて
山を下りました。
川は まだ冷たい 雪どけ水ですが、
やわらかい ひだまりには ゆげが立つほど
あたたかい風が 流れていました。
太郎は 深みで 魚のむれを追っています。
ふう は 浅せで こどもたちと泳ぎの練習です。
まだ水に顔をつけられない さや に
たお が からかって 水をかけたり、
ふう の 水中さかだちを たお が まねして
ひっくりかえったり。
その時です。ふう は 岩の上に見たのです!
こちらを向いて つきささりそうな 黒く光る影を!
ふう は その光る ぼう のことを知っていました。
ライフルじゅうです!
ふう は、とっさに こどもたちに おおいかぶさって、
「うたないで!」と叫びました。
同時に、ざばあっ と 太郎が飛び出し
「ダアァーン ダアーン ダーンン」
はじめて耳にする ごう音が あたりの山に こだまして、
ふう たちは ぎゅっと ちぢこまりました。
やわらかい ひだまりには ゆげが立つほど
あたたかい風が 流れていました。
太郎は 深みで 魚のむれを追っています。
ふう は 浅せで こどもたちと泳ぎの練習です。
まだ水に顔をつけられない さや に
たお が からかって 水をかけたり、
ふう の 水中さかだちを たお が まねして
ひっくりかえったり。
その時です。ふう は 岩の上に見たのです!
こちらを向いて つきささりそうな 黒く光る影を!
ふう は その光る ぼう のことを知っていました。
ライフルじゅうです!
ふう は、とっさに こどもたちに おおいかぶさって、
「うたないで!」と叫びました。
同時に、ざばあっ と 太郎が飛び出し
「ダアァーン ダアーン ダーンン」
はじめて耳にする ごう音が あたりの山に こだまして、
ふう たちは ぎゅっと ちぢこまりました。
それから どれだけ しあわせな朝を迎えたのでしょう。
夢の様な毎日は あたらしい 発見に満ちていて、
いつしか ふう は ふたごの赤ちゃんを生みました。
「たお」「さや」と名付けた こどもたちは
すくすくと育ち もう 外に出て よにんで すもうをとったり、
おにごっこをして かけまわったりできるのです。
そんな ある日、かぞくで 川へ魚をとりに出かけます。
たお も さや も わくわくして 朝からおおはしゃぎ。
ふう が ふたりにコートを着せると ドアからとび出して
とくいの でんぐりがえしを しながら せかしました。
「はーやーくっ はーやーくっ」
「すーぐ いーくよっ すーぐ いーくよっ」
よにんの唄は やっぱり「どん どん どん」になって、
川へ こうしんしてゆきました。
夢の様な毎日は あたらしい 発見に満ちていて、
いつしか ふう は ふたごの赤ちゃんを生みました。
「たお」「さや」と名付けた こどもたちは
すくすくと育ち もう 外に出て よにんで すもうをとったり、
おにごっこをして かけまわったりできるのです。
そんな ある日、かぞくで 川へ魚をとりに出かけます。
たお も さや も わくわくして 朝からおおはしゃぎ。
ふう が ふたりにコートを着せると ドアからとび出して
とくいの でんぐりがえしを しながら せかしました。
「はーやーくっ はーやーくっ」
「すーぐ いーくよっ すーぐ いーくよっ」
よにんの唄は やっぱり「どん どん どん」になって、
川へ こうしんしてゆきました。
ふたりは 太郎が用意した 食事を食べます。
どれも ふう には はじめての味で、
おいしくて おなかは いっぱいになりました。
太郎が話す 料理や ここでの生活の全ては
不思議な事にあふれていたけれど、ふう には
なぜか納得のいく かんたんなしくみばかりでした。
太郎は クマのコートをさし出しながら
「さあ、お山を あんないしてあげる」と言うと
ふう は するりとコートを はおります。すると
太郎よりは 少し小柄な 熊そのものになりました。
太郎が頭の上で 手をたたいてみせると
ふう も まねしながら「太郎ちゃんになっちゃった」
と、はしり回ります。
なるほど 山にピッタリの体が たいへん気に入り
ふたりは はしゃぎつづけたのです。
どれも ふう には はじめての味で、
おいしくて おなかは いっぱいになりました。
太郎が話す 料理や ここでの生活の全ては
不思議な事にあふれていたけれど、ふう には
なぜか納得のいく かんたんなしくみばかりでした。
太郎は クマのコートをさし出しながら
「さあ、お山を あんないしてあげる」と言うと
ふう は するりとコートを はおります。すると
太郎よりは 少し小柄な 熊そのものになりました。
太郎が頭の上で 手をたたいてみせると
ふう も まねしながら「太郎ちゃんになっちゃった」
と、はしり回ります。
なるほど 山にピッタリの体が たいへん気に入り
ふたりは はしゃぎつづけたのです。
小鳥たちの歌声と 天窓からの光のカーテンに
ふう は ゆっくり目覚めました。
「おはよう ふう」太郎がお茶をもって来ます。
「おはよう 太郎ちゃん」と、コップをもらいながら
ふう は、太郎ちゃんが 少年の姿をしているので
目をこすりなおして まばたきをパチクリしました。
「ほんとうに 太郎ちゃんかい?」ふう が言うと
「そうだよ。 家では脱ぐんだよ、おどろいた?」と、
ドアの近くにかけてある クマのコートをゆびさしました。
ふう は もちろんおどろきましたが、何より
太郎の美しいゆび先に すっかり 見とれていたのです。
ふう は ゆっくり目覚めました。
「おはよう ふう」太郎がお茶をもって来ます。
「おはよう 太郎ちゃん」と、コップをもらいながら
ふう は、太郎ちゃんが 少年の姿をしているので
目をこすりなおして まばたきをパチクリしました。
「ほんとうに 太郎ちゃんかい?」ふう が言うと
「そうだよ。 家では脱ぐんだよ、おどろいた?」と、
ドアの近くにかけてある クマのコートをゆびさしました。
ふう は もちろんおどろきましたが、何より
太郎の美しいゆび先に すっかり 見とれていたのです。
景色は 夕暮れのオーケストラから いつしか
満天の星がきらめく オルゴールに なっていて、
やわらかく なぜていく風に 枝もふわふわとゆれるので
ふう は すっかり眠っていました。
太郎は ふう を 背中にそっとのせ、
月あかりで 青くなった お山をのぼって
太郎の家の ふわふわのベッドに
ふう を寝かせました。
今日の太郎は ひとつも迷わずに帰れたので、
まんぞくで なかなか寝ませんでした。
満天の星がきらめく オルゴールに なっていて、
やわらかく なぜていく風に 枝もふわふわとゆれるので
ふう は すっかり眠っていました。
太郎は ふう を 背中にそっとのせ、
月あかりで 青くなった お山をのぼって
太郎の家の ふわふわのベッドに
ふう を寝かせました。
今日の太郎は ひとつも迷わずに帰れたので、
まんぞくで なかなか寝ませんでした。
お山は 険しいけれど、ふう は すばしっこくて
太郎と かけっこになっても 負けません。
ふたりは 転がる様に山をのぼり、
ちょっと 突き出たところにある
太郎が「ばんざいの木」と呼んでいる
太くて 大きな木の下に 着きました。
太郎は さっそく 木にのぼりながら
もう片方の 太い腕の様な枝をゆびさしました。
そのとうりに ふう が するする のぼると
座り心地の良さそうな ふし が あります。
すっぽりと座ると そこからちょうど広がる景色に
ふう は息をのみました。
一面のピンク色の雲の遠くに 大きな太陽が燃えていて
どこまでも広く 山や野原を 染めています。
ふうは「とくとうせきだぁ」と 真っ赤な太郎を見ると
あっちの腕に座りながら ゆっさゆっさと
木をゆらして 答えました。
太郎と かけっこになっても 負けません。
ふたりは 転がる様に山をのぼり、
ちょっと 突き出たところにある
太郎が「ばんざいの木」と呼んでいる
太くて 大きな木の下に 着きました。
太郎は さっそく 木にのぼりながら
もう片方の 太い腕の様な枝をゆびさしました。
そのとうりに ふう が するする のぼると
座り心地の良さそうな ふし が あります。
すっぽりと座ると そこからちょうど広がる景色に
ふう は息をのみました。
一面のピンク色の雲の遠くに 大きな太陽が燃えていて
どこまでも広く 山や野原を 染めています。
ふうは「とくとうせきだぁ」と 真っ赤な太郎を見ると
あっちの腕に座りながら ゆっさゆっさと
木をゆらして 答えました。
ふう には おじいさんがいましたが、
今は ひとりで暮らしています。 村のみんなには
「ふう は 立派なこどもじゃよ。」と
認められるほど 元気で明るい こどもで、
なんでも なんとかする ふう は不思議な力に
守られていると みんなが信じていました。
だから ふらっと村からいなくなっても
心配もしないで、帰って来ると いつもしてくれる
不思議な話を みんなで楽しみに待っていました。
今は ひとりで暮らしています。 村のみんなには
「ふう は 立派なこどもじゃよ。」と
認められるほど 元気で明るい こどもで、
なんでも なんとかする ふう は不思議な力に
守られていると みんなが信じていました。
だから ふらっと村からいなくなっても
心配もしないで、帰って来ると いつもしてくれる
不思議な話を みんなで楽しみに待っていました。
「どんっ どんっ どんどんどんっ」
「どんっ どんっ どんどんどんっ」
「どんっ どんっ どんどんどんっ」
「どんっ どんっ どんどんどんっ」
いつのまにか唄は どんどん に変わり
どれだけ回ったのか 空も赤くなってきました。
「とっても見えるところがあるよ。」
太郎は お山をゆびさして言いました。
ふう は ささの葉に はあぁっと息をかけて
おでこに貼りながら「いこうっ いこうっ」と
いいながら 大きくげんこつを振っています。
ふたりは踊りながら 山をのぼっていきました。
「どんっ どんっ どんどんどんっ」
「どんっ どんっ どんどんどんっ」
「どんっ どんっ どんどんどんっ」
いつのまにか唄は どんどん に変わり
どれだけ回ったのか 空も赤くなってきました。
「とっても見えるところがあるよ。」
太郎は お山をゆびさして言いました。
ふう は ささの葉に はあぁっと息をかけて
おでこに貼りながら「いこうっ いこうっ」と
いいながら 大きくげんこつを振っています。
ふたりは踊りながら 山をのぼっていきました。
太郎がふり返ると あの形の葉っぱを手にのせた
こどもが 立って 笑っています。
太郎は 手の上をじっと見ていましたから
こどもは太郎の方にささ舟をさし出しました。
太郎は そおっと受け取り鼻にあてがいながら
「これは なんだい?」と言いました。
「ささ舟だよ、くまさん。」笑いながら
こどもは 手をぶらぶらさせています。
「くまさん って ぼくのこと?」まねして
太郎も 手をぶらぶらさせながら言います。
「ぼくなら 太郎だよ。きみはだれだい?」
「おいらは ふう だよ。太郎ちゃん~」
ふう は お互いのぶらぶらが だんだん踊りみたいに
なってきたのが可笑しくって 橋の上を回りながら
ちょっと唄う様に答えたのです。
「おいらは ふう だよ。太郎ちゃん~」
太郎は それがたいへん気に入って
ふたりは ぐるぐる ぐるぐる 唄いました。
こどもが 立って 笑っています。
太郎は 手の上をじっと見ていましたから
こどもは太郎の方にささ舟をさし出しました。
太郎は そおっと受け取り鼻にあてがいながら
「これは なんだい?」と言いました。
「ささ舟だよ、くまさん。」笑いながら
こどもは 手をぶらぶらさせています。
「くまさん って ぼくのこと?」まねして
太郎も 手をぶらぶらさせながら言います。
「ぼくなら 太郎だよ。きみはだれだい?」
「おいらは ふう だよ。太郎ちゃん~」
ふう は お互いのぶらぶらが だんだん踊りみたいに
なってきたのが可笑しくって 橋の上を回りながら
ちょっと唄う様に答えたのです。
「おいらは ふう だよ。太郎ちゃん~」
太郎は それがたいへん気に入って
ふたりは ぐるぐる ぐるぐる 唄いました。
その日は 川遊びに夢中になっているうちに、
見なれない 山の下の方まで来ていました。
川には 四角い橋が かかっていて
太郎は それが たいへん気に入り、
あっちの端から流れたものが 本当に
こっちの下から出て来るか どうかを、
何度も行ったり来たりして しらべていました。
その時です。見た事のない形の葉っぱが
流れて来ました。太郎の知らない ささ舟です。
見なれない 山の下の方まで来ていました。
川には 四角い橋が かかっていて
太郎は それが たいへん気に入り、
あっちの端から流れたものが 本当に
こっちの下から出て来るか どうかを、
何度も行ったり来たりして しらべていました。
その時です。見た事のない形の葉っぱが
流れて来ました。太郎の知らない ささ舟です。