一郷一会・関東周辺100名湯プロジェクト

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40.四万温泉(新湯) 「河原の湯」

2009-02-19 18:40:30 | 群馬
 何故か四万を訪れるのはいつも寒い時期だ。
 だからというわけでは無いのだろうが、国道を外れて狭い温泉街に入ると肩を寄せ合うように並ぶ旅館や湯治宿が冬の凍てついた灰色空になんとももの寂しいような雰囲気を漂わせている。

 道の先はダム湖へと繋がり、およそどん詰まり。
 湯けむり漂わせるこの温泉地は、四万川の下流より山口、新湯、ゆずりは、日向見といった全てを合わせて四万温泉と称する。
 その昔、大江山の鬼退治で知られる四天王のひとり碓井貞光ゆかりの伝説なども伝わり、四万もの病を癒す力を持つと言う。

 公営の四万清流の湯とこしきの湯という日帰り温泉もあるが、このほか四万温泉には河原の湯、御夢想の湯、上の湯、山口露天風呂といった無料の共同浴場が観光客にも開放されている。
 これら共同浴場は当然清掃・改修といった費用がかかっているわけだから、本来タダで入れるというのは正しくない。
 有料の温泉以上に感謝の気持ちを忘れず利用させていただくべきだろう。

 さて、今回紹介するのは共同浴場の河原の湯。
 四万温泉の中心部でもある新湯地区のちょうど新湯川と日向見川が合流して四万川となるY字の辺り、四万グランドホテルから見下ろすような萩橋のたもとに建っている。
 石でできた円柱形のような一風変わった建造物で、階段を降りて入るようになっている。

 いかにも共同浴場らしく外に付けられた戸がもう男女別の入り口で、その重いドアを引くと、狭い脱衣所がありもうすぐに浴室だ。

 河原の湯はいつ行ってもまるでミストサウナのように薄暗く煙っている。
 洞窟の中のような籠った印象がある。
 石の浴槽の一番奥に湯口があり、白い析出物がこびりつくように固まっている。
 先に入っていた女性がもくもくと髪を洗っていた。
 もう一人は湯船の中で縁に腕をかけたまま石になったように動かない。
 邪魔にならないよう反対側から湯船に入ってみた。
 お湯の流れる音だけがこだましている。

 河原の湯は熱い。
 じんじんするほど熱く、熱い湯に耐性のあるある私でなかったら足先を入れて引っ込めるところだ。
 磨いた金属の臭いは、もう目の前で磨いたか削ったかというくらいはっきりと感じられる。
 錆びた臭いは正直苦手だが、磨いた臭いは好き。
 この河原の湯の金属臭は、湯上りもずっと続く。
 さきほど寄った同じく四万の共同浴場である上の湯で自分の中の何かが溶け出していくような気がしたが、ここでは肌を通して浸みこんでくるようなくるような感じ。
 すっきりと、でも硬く透明なお湯が河原の湯。
 四万温泉の共同浴場のお湯は、兄弟のように似ているところもあり、兄弟のように似ていないところもある。

 四万温泉のお湯はとても温まる。
 湯上り、外に出ると冷たい風がさっと額の汗を乾かした。
 階段を上り振り返ると冬の四万川の速い流れが見えた。

 ときおり空からちらつく雪は、夜半には本格的な降りとなり、翌朝は河原の湯の屋根も川も温泉街の道も全て白く染めた。


※参考

【公共の日帰り温泉】
・四万清流の湯(四万清流の湯のレポート)
・こしきの湯
【共同浴場(外湯)】
・御夢想の湯(御夢想の湯のレポート及び過去の100湯御夢想の湯)
・河原の湯(河原の湯のレポート)
・上の湯
・山口露天風呂(山口露天風呂のレポート)
【このほかの四万温泉お勧め】
・積善館(河原の湯よりゆったり入りたいなら)
・中生館(100名湯候補だったが2009年1月現在日帰り受付休止中)

文・画像 よしか@子連れ温泉ガイド地熱愛好会