無理 | |
奥田 英朗 | |
文藝春秋 |
今回は、奥田英朗『無理』を紹介します。群像劇ですね。舞台は東北の地方都市12万人が住んでいるゆめの市である。そこにすんでいる5人。自分で何とかしようとしているんだけど、この町にいるがゆえになんともできないというもどかしさがわかる。また、ここで暮らさなければならないんだという気持ちも伝わってくる。
相原友則:市役所の社会福祉事務所のケースワーカー。離婚して一人で暮らす。
久保史恵:県立向田高校の高校生。東京に進学希望。ある日予備校の帰りにさらわれる。
加藤裕也:元暴走族で、漏電遮断機を強引に売りつける営業マン。ある日から息子の翔太と暮らすことになる。
堀部妙子:スーパーの私服保安員として勤める。「沙修会」という新興宗教にはまる。
山本順一:市議会議員2期目の議員。産廃処理施設を建設するのに「ゆめの市民連絡会」という市民グループに翻弄される。
地方都市は、消費者金融とパチンコと郊外型ショッピングモールしかないという感じですね。それでも、観光資源があるか、何らしかのメーカーの工場があるかどうかで地方都市の盛衰が決まってしまう。つまり、どうやって財源を集めるかということですかね。
感想は、なんともしがたい地方都市の現状をあぶりだしているなあという印象ですね。最後は、5人をどこかで遭遇させようとする仕掛けなんだろうけど、唐突感が否めない。とっとと幕引きを図ったかなという感じですね。