日本のイスラーム (Islam in Japan)

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早稲田大学主催第2回マスジド代表者会議(3月7日)

2010年04月01日 | イスラーム講義活動(ボランティア)
アッサラーム アライクム。
皆さんに平安あれ。


2009年2月11日(水)に開催された第1回モスク代表者会議には、私はモスク代表者ではないため何の連絡もいただけませんでしたが、
今回は「日本におけるムスリム・ネットワークと日本人ムスリム」というテーマからパネリストの一人としてお招きいただくことができました。

一般の日本社会との接点を模索する一ムスリムとして、早稲田大学のような立派な大学がそのお膳立てをしてくださるとは、
アルハムドゥリッラー、こんなありがたいことはありません。
この場をお借りして、改めて本企画の主催者たる早稲田大学関係者の皆様に
心よりお礼申し上げたいと思います。

私のいわゆる正式な信仰告白の証人の一人である名古屋のレカ先生や、敬愛してやまない愛媛のスライマーン浜中先生たちに久しぶりにお会いできたのは、
アルハムドゥリッラー、とても幸せなことでした。


このような会合に参加することについて、中には、「研究者に利用されているだけ」と批判する声もあるかもしれません。

でも私たち日本在住のムスリムは、超がいくつ付くかわからないほどのマイノリティです。
そして私たちの現実は、コミュニケーションの利便性からそれぞれ民族や出身地ごとに集うことが多く、
ともすればいくつもの「日本の中の外国」で暮らしていて一般の日本人との接点があまりない。
ですからなおのこと私たちムスリムの声を聞いてくれる方には積極的に応じたほうがよいと思います。
普段から私たちムスリムの声を届けようにも私たち自身が至らないがゆえに思うようにならない現実の中で、
声を届けたい人たちが進んで歩み寄ってくれているのですから、「持ちつ持たれつ」でよいのではないでしょうか。


以下は当日のプログラムです。(いただいたものそのまま。敬称略)


イスラム地域研究・早稲田拠点「アジア・ムスリムのネットワーク」
早稲田大学人間科学学術院・アジア社会論研究室 主催       
第2回モスク代表者会議             2010年3月7日
                  於:早稲田大学・22号館201会議室
「日本におけるムスリム・ネットワークと日本人ムスリム」

プログラム

10:00-10:10 開会の挨拶          早稲田大学社会科学総合学術院 小島宏

基調講演
10:10-10:30 「ムスリム・コミュニティを問い直す」
       早稲田大学多民族・多世代社会研究所客員研究員 岡井宏文
10:30-11:00 「ムスリム・コミュニティからの眺望」
       名古屋モスク シェル・アフザル・レカ

テーマ・セッション
総合司会:メイモン・モハッマド・アンワル

11:00-12:30 セッション1 「ムスリム・コミュニティの課題」
問題提起者:ハールーン・クレイシ

12:30-13:30 昼食休憩

13:30-15:00 セッション2 「日本におけるイスラーム」
問題提起者:前野 直樹

15:00-1530 休憩と礼拝   ( 15:10    サラート(ASR)  )

15:30-17:00 セッション3 「マスジド・ネットワーク」
問題提起者:浜中 章

17:00-17:25 総合討論
17:25-17:30 閉会の挨拶            早稲田大学人間科学学術院 店田廣文



本会合の詳細については、主催者側より報告書が発行されるのを待つこととして、
ここでは出席者の一人として感じたままをお伝えしたいと思います。

主催者側としては在日ムスリムや日本人ムスリムの生の声が聞ければよしとのことで、
様々な課題言及ののち具体的な解決策へと至る議論には時間的制約もあって発展しませんでしたが、課題意識を分かち合うことはできたかと思います。
北は北海道から南は四国まで、ほぼ日本全国でムスリムがどんな課題意識を抱いているのか、
それをお互いに確認し合えたことは、これはこれで大きな成果と言えるでしょう。

興味深いのは、やはりというか、大きな課題は皆が共通の認識として抱いていたということです。
優先順位や個別の課題に対する危機感の濃淡は違っても、
大別すると次の四つが私たち日本に住むムスリムが直面している課題の主なものであると言えそうです。

日本人のイスラーム理解向上 → 社会とのつながり作り

次世代教育/新入信者ケア → 私塾、土曜学校、チューター制度、イスラーム学校設立/指導要領(ガイドライン)作成、ロールモデルの確保

墓地確保 → 地域住民との交流、折衝、謝礼←行政が許可しても住民の反対で流れてしまうため

マスジド・ネットワーク → 新月委員会のように各地域の代表が接点を持ち、情報・意見交換


解決にあたっては、これらは皆リンクしている課題なので同時進行で改善を試みて行く必要があるとは思いますが、
私個人としてはやはり二つ目の次世代教育と新入信者ケアを最重要課題として臨みたいと思っています。

ハサン・バスリー師の「アーダムの子(人間)よ、そなたは幾日かの存在に過ぎない。一日が過ぎ去れば、そなたの一部が過ぎ去ったに等しいのだ。」
قال سيدنا الحسن البصري رحمه الله تعالى: يا ابن آدم إنما أنت أيام إذا ذهب يوم ذهب بعضك
という言葉を引用するまでもなく、私たちは「過ぎ行く人」であり、「これから来る次の人」を大事にしなければ、私たちの志や課題への取り組みもなにも次代へと受け継がれていかないからです。

無論、「次世代教育」と「新入信徒ケア」を同列にしましたが、厳密にはそれぞれ別のアプローチが必要でしょう。

これは日本人ムスリムにとって指折りの立派なロールモデル(模範)のお一人である、ヤーセル小杉先生の受け売りですが、
いわゆるボーン・ムスリムとして生まれ育つ次世代の日本人ムスリムあるいは日本語人ムスリムは、私たち入信組とは「別の生きもの」とのこと。

それなりにイスラームで禁忌とされるものを体験していて、入信後に納得してそれらとは無縁になった私たち入信組と、
最初から触れてはならないものとして触れずに育つ次世代とでは、生きている世界が違うというのもごもっともです。

目下いちばん説得力がありそうだなと思う両者のサポート策は、「初代入信組」と「二世、三世」それぞれに「一人でも多くのロールモデルを確保すること」。

例えば、ということで私個人の目に映る日本人ムスリム間のロールモデルを、以下に列挙します。
(よりよく知るはアッラーのみで、アッラーの評価に反して誰かを褒めるつもりはありません。
加えてこれはあくまでも私の限られた知見によるもので、皆さんで「こんな素晴らしい人がいる」という方をご存知でしたらぜひご紹介願います)

・ヤーセル小杉先生

・ハサン中田先生

・カマール奥田先生

お三方は日本社会でも最大級の敬意をもって接せられる大学教授として学界で大活躍する一方、真摯なムスリムであることを忘れない方々です。


・スライマーン浜中先生

気さくなスポーツ用品店のおじさんをしながら、インターネットを通じてのダアワ活動第一人者としてがんばり続ける、若者のよき相談相手です。


・アブドゥルカリーム富岡先生

マディーナのイスラーム大学でイスラーム学の基礎を修められたのち、日本企業に勤めながら真摯なムスリムであろうとすることを忘れないサラリーマン・ムスリムの鏡のような方です。
社会人として、私はたくさんのことを富岡さんから学ばせていただいています。
大学教授や研究者、自営業や契約社員といった限られた職業に就いておられる人にしかロールモデルは見出せないのだろうかと自問していた私にとって、富岡さんは希望の光です。


・シャイフ・イブラーヒーム大久保

日本のタブリーグ運動指導者として、凡人には真似できないほど誠実なムスリムとしての道を歩みつつ、日本人としての常識感覚も忘れない方です。


皆さんに共通しているのは、その生き方や人となりが「かっこいいムスリム」であるということ。

私たちムスリムにとっての最高最良のロールモデルは言うまでもなくアッラーの御使いたるムハンマドさま(アッラーの祝福と平安あれ)なわけですが、
かの人を直接自分の「あこがれ」として敬愛の念をもって接することができるようになるには、
通常はけっこう時間がかかり、ムスリムとしての成長を要するものです。
だからこそより近しい人からロールモデルをいただくことで、その人を通してイスラームが好きになり、ラスールッラーが好きになり、
アッラーが好きになるといったWinWinWinの幸せ方程式に身を任せられるようになる…。

「お父さん」と「お母さん」がムスリムとして模範的な人であることの大切さはいくら強調してもしたりないのはご存知のとおりですが、
子どもは遅かれ早かれ「親以外」に「あこがれ」を抱くようになります。
そのときにどこぞの芸能人や映画俳優などではなく、「知り合いのかっこいいムスリムのお兄さんやおじさん」、
「知り合いの優しくてステキなムスリマのお姉さんやおばさん」がいることが大切だと思うのです。

在日二世ムスリムのロールモデルとしては、イマンAさんを挙げたいと思います。
イスラーム学の基礎をきちんと学び、様々なかたちでダアワ活動にも貢献している彼女には、今後もぜひ幸せになっていただきたい。
彼女をはじめ一人でも多くのムスリマお姉さんたちが見るからに幸せであってこそ、
次世代ムスリマ少女たちの「あこがれ」になり得るからです。


墓地確保については、己の無知を恥じました。
確かに日本では土葬が許可される地域も限られていますが、てっきり資金確保さえできればお役所との交渉で済むと思っていたところ、
地域住民との信頼関係を築けなければ、どんなに役所の許可が得られても反対運動ですべて水泡に帰してしまうのだそうです。

これなどは最初の課題、「一般日本人のイスラーム理解欠如」と密接につながっています。前にも増して「一般日本社会との接点を持つこと」の大切さを痛感しました。

他にも食べ物のことなど課題は挙がりましたが、大きなものはこれら4点だと私は理解しました。

中でも特にお子さんを持つムスリムの参加者(一般参加者も含めて)は皆「教育問題」に腐心されているようで、
イスラーム学校設立という課題につき、様々な意見が交わされました。

大きく言えば二つの見解に分かれたわけですが、
①あえてイスラーム学校をつくらないほうが課題1の「日本人のイスラーム理解向上」につながる接点作りができる

②子どもたちをイスラーム的により理想的な環境で育てるためにも、イスラーム学校設立が急務

といったもので、どちらも正しいのですがやはり「どこまで実現可能か」を考えると、
私には前者で対応していくのが当面の課題ではないかと思えます。

後者は学校というハコだけ作っても、「日本語でイスラームや一般教養を教えられる人材」という中身がないからです。
無理矢理英語圏から教師を連れてきても、また一つ外国の学校を増やすだけになりやしないかと・・・。

これは会議の場で時間切れのため言いそびれた折衷案なのですが、
どうしても②イスラーム学校設立を現段階で模索するなら、
ムスリムがオーナーかつ指導方針を決めつつ
「イスラームに好意を寄せてくれる、イスラームとムスリムの友人たる日本人の教員や日本人クリスチャンの教員」の力を借りながらやっていくしかないのではないかと思います。

またこれはこれでそうした「イスラームの友」との交流を深めるよいきっかけにはなると思いますが、
その実現にはいかんせん莫大な費用が必要となり、
「外国の援助を頼るとよい」という微笑ましい若い声もありましたが、
最低限の自助努力はしなければ、
ムスリムとしてそれは恥ずかしいことだと思います。

さて、土曜学校はすでに始めていますが、これから具体的にその運営を検討したいなと思うのが「チューター制度」の確立です。
有志でやっているSkype読書会なんかもそのミニチュア版かと思いますが、
これは在日ムスリムにも活躍してもらえることだと思います。

とまあ、課題は山積みで未来の話は楽しいので飽きないですし、語り合うだけで闘志が湧いてきます。
アッラーのお力添えを仰ぎつつ、ぜひ皆さんのご意見もお聞かせいただきたいものです。


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2 コメント

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Unknown (ムスリム)
2010-04-01 10:06:23
いつもブログを拝見させていただき、勉強させてもらっています。
まだまだ日本でイスラームが発展するための課題がたくさんありますね。
わたしも二世として奮闘努力していきたいと思っております。
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マーシャーアッラー! (アブー・ハキーム)
2010-04-01 23:24:26
アッサラーム アライクム。
よくコメントをくださり、ありがとうございます。アッラーの祝福がありますように。

マーシャーアッラー、ムスリムさんってどんな方だろうと思っていましたら、なんと二世の方だったのですね!

そのうちいつか「お兄さん」として私の子どもたちの遊び相手や先生役になっていただけることを勝手ながら楽しみにしております(笑)

今後ともアッラーの祝福とお導きが山のようにありますように。
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