散日拾遺

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『闇よ、つどえ』と訳者のこと

2016-10-30 08:15:15 | 日記

2016年10月29日(土)

 へっへっへ、あった、ありましたよ!

   『闇よ、つどえ!』 フリッツ・ライバー著、風見潤訳 ハヤカワ文庫 SF 451

 昭和56年10月31日発行とあるが、ISBN などは記されていないところに年代が表れている。僕は1988年の暮から89年1月末日にかけて読んだらしい。大分から福島に移って、何かとしんどかった時期である。

 インターネット検索で情報が出なかったのは「つどえ」を「集え」と書いたためらしく、正しくひらがな表記で探してみたらちゃんと古書が出てきた。表紙のデザインが、これでは少々残念な感じだ。

 

 2008年の日付でカスタマーレビューが一件だけ載っているのだが・・・

 「「闇・・・・・・」で始まるから、「闇の聖母」と関係のある作品かと思ったが全然違うので、まいった。SFホラーファンタジーと勝手に思い込んでいたので、悪魔と天使の政治がらみのサスペンス的展開とは、いささかまいった。読破後も何も感じられず、いったい何が書いてあったのか思い出せない。きっと、その程度の作品なのだと思う。

 「SFホラーファンタジー」にのけぞり結句に仰天、「その程度の作品」には恐れ入った。僕自身とりたてて好きな作品ではないし、難癖つけようと思えばポイントはいろいろあるが、とてもこうは書けない。自分のアタマがその程度なのだという可能性を全く考えずにいられる夜郎自大ぶりが、何ともまぶしいのである。

 それよりも風見潤というこの訳者、同書刊行の時点でまだ36歳だが、既に多数の訳書があったのだ。その後はどんな風だろうと検索をかけて、出てきた情報に驚いた。wiki の記事自体が推理・SF系の虚構ではあるまいかと空恐ろしい感じに襲われる。コピペしようかと思ったが、やめておこう。

 それよりも、そもそもこの作品のことを思い出したのは「交感/副交感神経系活動の伝染性」の流れだったのだから、その部分を引用して僕の怪しげな記憶の証を立てておく。

***

 「副交感神経系統を刺激する放射線は油断のならぬやつで、人間の本能的・動物的反応を助長する。最初はほんの数人だったが、すぐに大勢の俗衆が身体を揺すり、ねじり、回転させ、半宗教的な恍惚感にひたって踊りはじめた。彼らは動物のように鳴き、叫び、うめき、普通の勤行ではなく、まるで信仰覚醒大伝道集会のようになってしまった。」(P.117-8)

 「逃げる群衆のなかにまぎれこんでいた魔人は、自分の感情がふいに変化したのを感じとった。副交感神経放射線が交感神経放射線に変わったのだ。これはあまり賢い変更とはいえなかった。大聖堂に残って踊りまわり、床を転げまわっていた人々が一瞬にして、動きを止めた。交感神経系は恐怖感を助長するのだ。人々は暴走(スタンピード)する動物のように戸口に押し寄せた。」(P.119)

***

 う~ん、せっかくのアイデアがもったいない感じがする。あまりに非科学的すぎるものね、だけど惜しいな、ここから何かを取り出せないだろうか・・・

Ω

 

 


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