散日拾遺

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6月22日:フランクリンが雷雨中にたこをあげる(1752)

2024-06-22 03:24:34 | 日記
2024年6月22日(土)

> 1752年6月22日、ベンジャミン・フランクリンは降りしきる雷雨の中で凧を揚げ、雷が放電現象であることを確かめる実験をした。この実験によって、雷の電気は人工の電気と同じで、プラスとマイナスの両方の極性があることがわかった。
 フランクリンは、実に多彩で努力を惜しまぬ人だった。貧しい家に生まれ、印刷工として働きつつさまざまな学問を学び、出版事業で成功した。自然科学にも興味を持ち、これも独学で学んで、雷は電気の現象であると考え、見事にそれを証明したのである。その後、政治家として活躍し、アメリカの独立宣言の起草に参加し、イギリスとの外交交渉にも手腕を発揮している。
 さて、この凧の実験だが、実は大変危険を伴うものだった。フランクリンのタ凧は絹のハンカチで作られ、先端に30センチほどの針金がついていた。凧を揚げる麻糸にライデン瓶(電気をためる瓶)を取り付け、瓶に電気をためる。フランクリンが慎重だったのか運がよかったのかはわからないが、彼の後、同じやり方で実験をした科学者が、落雷によって命を落としている。このため、現在ではこの実験についてはあまり紹介されない。
晴山陽一『365日物語』(創英社/三省堂書店)P.179

Benjamin Franklin
グレゴリオ暦1706年1月17日(ユリウス暦1705年1月6日)- 1790年4月17日

 大統領を歴任したという訳でもなく、そうした意味での印象が薄いが、「アメリカ人」という類的存在が形成されるにあたっての貢献度は、誰よりも大きかったかもしれない。
 "Time is money." という彼の有名な言葉などもその一部で、あたかも拝金主義者の言のように聞こえるがさにあらず、重点は時間のかけがえのなさにこそ置かれている。「夏時間を考案したが、この時代には採用されなかった」という逸話が、いかにも彼らしい。おそらくは循環気質であり、その良さを存分に発揮したものと思われる。
 
> 勤勉性、探究心の強さ、合理主義、社会活動への参加という18世紀における近代的人間像を象徴する人物。己を含めて権力の集中を嫌った人間性は、個人崇拝を敬遠するアメリカの国民性を超え、アメリカ合衆国建国の父の一人として讃えられる。『フランクリン自伝』はアメリカのロング・ベストセラーの一つである。

 『フランクリン自伝』に記された「十三徳」と「日課」を末尾に記しておく。
 さてしかし、凧揚げ実験については諸説紛々である。Wikipedia のこの項の記載が混乱を呈しており、「有名な凧揚げ実験は、本人ではなく彼の婚外子が行った」と記すかと思えば、以下のごとく「彼が最初ではない」と記すといった具合である。

> この実験を提案したのはフランクリンだが、初めて成功したのは1752年5月、フランスのトマ・ダリバード(en:Thomas-François Dalibard)らである。ダリバードらはフランクリンの提案に従って、嵐の雲が通過するときに鉄の棒(避雷針)から火花を抽出した。フランクリンが凧を用いて同様の実験を行ったのは同年の6月、または6月から10月までの期間である。(アルベルト・マルチネス「科学神話の虚実」)

 いずれにせよ、検証実験や同じような実験をしようとして多くの死者が出たことは間違いなく、そのことをフランクリン自身がどのように受けとめていたか、記録があれば見てみたいものだ。

***
  • フランクリン十三徳:
  1. 節制 飽くほど食うなかれ。酔うまで飲むなかれ。
  2. 沈黙 自他に益なきことを語るなかれ。駄弁を弄するなかれ。
  3. 規律 物はすべて所を定めて置くべし。仕事はすべて時を定めてなすべし。
  4. 決断 なすべきをなさんと決心すべし。決心したることは必ず実行すべし。
  5. 節約 自他に益なきことに金銭を費やすなかれ。すなわち、浪費するなかれ。
  6. 勤勉 時間を空費するなかれ。つねに何か益あることに従うべし。無用の行いはすべて断つべし。
  7. 誠実 詐りを用いて人を害するなかれ。心事は無邪気に公正に保つべし。口に出すこともまた然るべし。
  8. 正義 他人の利益を傷つけ、あるいは与うべきを与えずして人に損害を及ぼすべからず。
  9. 中庸 極端を避くべし。たとえ不法を受け、憤りに値すと思うとも、激怒を慎むべし。
  10. 清潔 身体、衣服、住居に不潔を黙認すべからず。
  11. 平静 小事、日常茶飯事、または避けがたき出来事に平静を失うなかれ。
  12. 純潔 性交はもっぱら健康ないし子孫のためにのみ行い、これにふけりて頭脳を鈍らせ、身体を弱め、または自他の平安ないし信用を傷つけるがごときことあるべからず。
  13. 謙譲 イエスおよびソクラテスに見習うべし。

  • フランクリン日課:
【朝の問 今日はどのような善行をなすべきか】
5~8時 起床、洗顔。祈り。一日の仕事の計画、その日の決意。朝食
8~12時 仕事
12~14時 読書、帳簿を見る、昼食
14~18時 仕事
【夕の問 今日一日どのような善行をしたか】
18~22時 整頓、夕食、音楽、娯楽、雑談。一日の反省
22~5時   睡眠
『フランクリン自伝』P.148-150

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