2014年11月28日(金)
9月3日以来だ!深い理由はない、ただ何となく忘れていたのである。強いて言えば、ここはちょっと面白いので念入りに見てみたいと思っただけだ。というのも・・・
易輶攸畏 屬耳垣墻 (イユウ・ユウイ ゾクジ・エ(ン)ショウ)
音だけ並べても意味をなさないね、意味としては、
輶 軽率なこと
攸 「所」に同じ
屬 「くっつける」こと(なるほどそうか!)、「ゾク」が呉音で「ショク」が漢音。
垣墻 壁、塀。
従って「安易・軽率な行動は慎むべし、耳を壁につけ(て周囲に気を配れ)よ」というんだが、Wikisource のつけている訳が面白いのだ。
「軽挙妄動おそれるところ 壁に耳あり障子に目あり」
原文は「(自分が)壁に耳をつけて用心せよ」というところをひっくり返しているけれど、意味としては申し分なく原意が伝わる。訳すならこういうふうに訳したい。
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水曜日に会合があり、"Paradigms Lost" の翻訳を一致協力して進めることを、5人のメンバーで確認した。ちょっと大変だけれど、価値ある仕事なのは間違いない。
で、僕の担当部分の冒頭にキルケゴールの言葉が引用されている。
Once you label me you negate me.
「レッテルを貼ることは、とりもなおさず相手を否定することである。」
ぐらいに言っておこうか、むろんいろいろな表現上の工夫が可能である。
いまいましいのは、この言葉の出典がなかなか分からないことだ。30を超えるというキルケゴールの著作の中の、どこにこれが載っているのかわからない。わからないのがいまいましいというよりも、誇らしげにこの言葉を紹介している多数のサイトのどれもこれも、出典を示すことに価値を置いていないのが腹立たしいのである。「出典:キルケゴール」なんて平気で書いてたりする。もっとひどいのは、この言葉を引用した(アメリカ人の?)人生手引き書みたいなものを「出典」としている。(『自分のための人生』W. ダイアー ~ この本自体は面白いのかもしれない。) げんなりだ。
わからないな、みんな関心がないのかしらん?オリジナルへの敬意が、いくら何でも低すぎるだろう。
もうひとつ言うなら、国際標準としての英語で紹介するのはとりあえず良いとして、キルケゴールの原語がこれとは違うことをもう少し意識したい。キルケゴールはデンマーク人だ。デンマーク語(デーン語?)は日本語よりは英語に近い(だろう)としても、翻訳されたものである点は変わらない。近いからかえって起きる失敗もあることは、聖書の翻訳をみたってはっきりしている。
once で始まる構文には、ちょっとしたトリックがある。上では「とりもなおさず」とやってみたが、「・・・が早いか」とか「いったんレッテルを貼るならば」とか、ニュアンスはいろいろと考えられる。そこから一つを選ぼうとするなら、著者自身の元の言葉を参照しないわけにいかない。案外、微妙な違いがあるかもしれないぜ。
まずは、どこに載ってるか、それからだ。