以下引用 東京新聞Web 2016年3月4日 【栃木】 http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/list/201603/CK2016030402000181.html
「やっと決まった」「最高にうれしい」。手話言語法の制定を求める意見書が芳賀町議会で採択された三日、傍聴席でその瞬間を見届けた県内外の聴覚障害者らは、はじけるような笑顔で喜びを分かち合った。手話を日本語と同等の独自の言葉と位置付ける法律を作ろうという動きは地方議会に広がり、全国での「達成」を締めくくる採択。今後の議論の深まりが期待される。 (後藤慎一)
普段はまばらな町議会の傍聴席も、この日はほぼ満席。県聴覚障害者協会の稲川和彦理事長(56)らは並んで座り、議場に熱い視線を注いだ。
採決で十三人の町議が立ち上がると、「起立全員です。本案は原案通り、可決されました」という増渕さつき議長の発言が、手話通訳から訳された。「今日は『耳の日』。本当に記念すべき日」。稲川理事長は喜びをかみしめた。
聴覚障害者が身近にいないこともあり、県協会が町へ陳情に行った当初は感触が悪く、なかなか理解が進まなかった。渡辺純子事務局長(55)は何度も断念しようと思ったが、諦めずに説明を繰り返した。「夢が実現した。(採択まで)三年かかったかいがあった」と充実した表情を見せた。
奈良県から訪れた全日本ろうあ連盟の長谷川芳弘副理事長(60)も「(芳賀町への)陳情にも同席したので見届けたかった。残り一つで失敗はできないということで、ぎりぎりのところだった」とした。
かつては禁じられていた手話が、今後、言語として認められるかもしれない大きな一歩。ただ、稲川理事長の長男で、同じく聴覚障害者で会社員の直樹さん(25)は「実際に社会が変わるか、ぴんとこないところもある。喜びだけでなく、いつ(意見書が採択された)効果が出てくるだろうかと思っている」と冷静に見つめた。
芳賀町を管轄する真岡市聴覚障害者協会の篠原修一副会長(58)は「今日で終わりではない。スタートだと思う」と、新たな取り組みへ意欲を見せた。