射水市聴覚障害者協会

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県手話言語条例 制定3年 全国に先駆け 教員の技術向上急務 学習環境に不満の声も /群馬(毎日新聞)

2018年06月14日 | 法・条例・制度

以下引用 毎日新聞 2018年6月5日 地方版 https://mainichi.jp/articles/20180605/ddl/k10/010/143000c

 全国に先駆けて、聴覚障害のある子どもたちへの「学習権の保障」に大きく踏み込んだ県手話言語条例(2015年4月)が制定されてから3年が過ぎた。県内唯一の聴覚障害児の専門校、県立ろう学校(前橋市)では教職員向けに手話研修を増やし、県教委は今年度から教員採用試験で手話通訳の有資格者に加点するなど取り組みが進む。一方、手話の専門家からは、現在のろう学校では手話による学習環境が不十分との指摘もある。

【鈴木敦子】

 「はっきり言って、手話がうまくない先生が多く、がっかりしました」。聴覚障害の子どもを県立ろう学校に通わせている両親は不満をもらす。

 県の手話言語条例は、子どもたちが授業など学校生活のあらゆる場面で手話で学べるよう、教員の技術の向上や手話に通じた教員の確保などに努めることを明記した。しかし、「現状は十分とは言えない」と指摘する。

 県教委によると、県内で手話通訳士などの手話関係の資格を持つ教員は8人。だが、そのうち県立ろう学校に勤務しているのは4人にとどまる。同校の教職員は幼稚部から高等部まで約100人。子どもたちが校内で多くの人とコミュニケーションを取れるようにするには、教職員の手話レベルの底上げが急務といえる。

 この両親が子どもから聞いた話では、教員は見学者や保護者の前では積極的に手話を使うが、日常の学校生活では使わない場面もあるという。手話が理解できないためか子ども同士の手話での会話に無関心な教職員もいる。「何のためのろう学校か」と子どもが口にしたという。

 両親は「子どもにとって、1年、2年は大きな時間。このまま通い続けても正しい手話で授業を受けられず、学力面でも生活面でも時間の無駄だと感じている」と話す。

 別の児童の母親も「子どもから『なんで先生は手話ができないの?』と聞かれた。学校からは『研修を受けたり、サークルに通ったりして教員も頑張っている』と説明されたが、子どもは先生と意思疎通できず不信感を抱いている。教員個人の問題とせず、県教育委員会全体の課題として捉えてほしい」と訴える。

「口話」習得望む保護者も

 県教委によると、県立ろう学校の教員の手話習得に向け、校内研修を実施している。研修時間は、条例の制定前は年間210分(14年度)だったのが制定後は570分(17年度)と2・7倍に増えた。1回1時間とすれば、夏休みなどを除くと毎月1回程度。ほかに校内で聴覚障害のある教職員の通訳を交代で担当し、技術向上に努めているという。

 一方、県教委は、現役の教員に対し、手話検定の受験や手話通訳士などの資格取得は推奨していない。「手話通訳になるための勉強と、授業に使える手話を習得することは違うものだと考えている。教員は手話の技術だけでなく、指導力や専門性も必要だ」と説明する。

 その背景には保護者の意向もあるという。県教委によると、人工内耳や補聴器の技術が進化し、ろう学校に通う子どもの9割以上は「聞こえる」状態。残存聴力を活用して音声を発する「口話」の習得を望む保護者も少なくない。そもそも保護者の大半は健聴者で、手話へのハードルは高い。

 しかし、群馬大学教育学部の金沢貴之教授は「『障害が軽ければ口話で十分』という考えでは、聴覚障害児同士が教室内で通じ合う共通言語である手話を獲得できない子どもを生み出すことになる。聴覚障害者同士の社会で言語の断絶を起こさせないようにする使命がろう学校にはある」と話している。

「西高東低」の傾向

 都内のろう学校元教諭で難聴児支援教材研究会代表の木島照夫さんによると、手話教育は「西高東低」の傾向にあるという。

 東日本では、音声を使った「口話法」を重視してきた学校が多い。口話法は、口の形などを頼りに発音を覚えさせ、音声による会話ができるように指導する方法で、言わば健聴者の視点に立ったものだ。木島さんは「手話は、聞こえない側の言語。聴覚障害のある子どもにとって、例えば健聴者の親が手話を使うことは『聞こえないあなたを認めている』ということ。心理的な意味が大きく、自己肯定感にもつながる」と強調する。

 かつては「手話をすると日本語が身につかなくなる」という意見もあったが、「むしろ乳幼児期から手話を使う方が言語発達が早期から促され、結果的に日本語の読み書きも伸びる」という。


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