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imaginary possibilities

Living Is Difficult with Eyes Opened

変身(2002/ワレーリイ・フォーキン)

2011-08-02 23:57:33 | 映画 ナ・ハ行

 

旧作ではあるのだが、なぜか東京芸術センターで二週間上映されており、観てきた。

映画を観るようになって、最も映画を観なかった年に公開された本作。

たしか、ユーロスペースで公開されていたような気がする。

 

原作は超有名なフランツ・カフカの「ある朝起きたら虫になってた男」の話。

実は、「虫」というのは翻訳の際にわかりやすくするための苦肉の策らしく、

原文においてはいわゆる「虫」の類に限定する言葉ではないようで、

更にカフカ自身も出版時に変身「後」の姿を挿絵等で表すことを

断固反対していたらしい。そういう意味では、本作は「正解」。

 

監督のワレーリイ・フォーキンも、主演のエヴゲーニイ・ミローノフも、演劇界の方々。

そして、本作も元は舞台で何年もロングランしていたものらしい。

映画化にあたっては、ところどころに映画的な画面の美しさや音響の豪華さはあるものの、

あくまで舞台の映像的記録みたいな感じで終ってしまっている。

予備知識ほとんどなく観ていたので(制作陣が演劇畑とかも)、

観ながらずっと「こんなん舞台でやりゃーいーじゃん」とか内心ブツブツ・・・。

演劇は全く詳しくないし、観劇も比較的苦手なので(外国の舞踏系とかは好きだけど)、

演劇に関する発言とかは控えたほうが賢明だとは思うものの、やっぱり表現媒体の特性

ってものを踏まえたり(時には意図的に)裏切ってこそ、そこに「その手段で表現する意味」

ってものが感じられると思うので、映画で演劇をそのままやってる感をおぼえた時点で、

個人的には没入不可能に。最近だと、ジュリー・テイモアの『テンペスト』がまさにそれ。

ジュリー・テイモア(『ライオン・キング』演出した大物)は、『タイタス』でしびれまくり、

『アクロス・ザ・ユニバース』は大のお気に入りではあるのだけれど、それらはまさに

映画的表現のなかに演劇的要素がバッチリはまった好例だったのだとつくづく痛感。

 

で、『変身』ではグレーゴル(これだって、もう文庫等では「グレゴール」で定着してんだから、

字幕も配慮してくれりゃぁ好いのに・・・ってずっと思ってしまった)が何に変身したかというと!

外見として提示されることはなく、役者がそのままのヴィジュアルで身振り手振りで演じると。

うーん、確かに正統派なんだろうけど。それだと、自己が「変身」したわけじゃなく、

他者がエイリアンとして認識してるだけだって解釈にもなってしまいそうな気がして、

(もう読んでから凄まじく時間が流れてるから記憶が曖昧ながら)カフカの原作では

そういった解釈は余り主眼じゃなかった気がして、そういうところで違和感拭えず終了。

 

で、大事なのはこの映画自体じゃなくて(おいおい)、ちょっとした美味しい(?)情報提供。

私が『変身』を観た北千住の東京芸術センター2Fにあるブルースタジオというところは、

1日3回程度で2週間、旧作を上映しているのだけれど、ここがとにかく穴場!

椅子とかにうるさい人には辛い腰掛だけど、天井は高いしスクリーンは大きいし、

そして何より、、、空いてる!というより、絶対混まない!!

その証拠に、これまであそこで観た小津も黒澤もアンゲロプロスもエリセですら、

全部観客二桁いってなかったからね。

というわけで・・・

この夏、ゴダール上映プチ流行で、新宿のK's Cinema ・ 早稲田松竹 ・ 下高井戸シネマでも

ゴダール作品の特集上映がある模様だが、やっぱり混むんだろなと辟易しているところに、

このブルースタジオで明日から2週毎に3作品のゴダール上映があるのです。

まぁ、ラインナップとしちゃぁ究極ベタな3作品だけど、こういう作品こそ

大きいスクリーンでゆったり観られるっていうのは極めて稀少だと思うので。

 

8/3(水)~8/16(火) ゴダール・ソシアリスム

8/17(水)~8/30(火) 勝手にしやがれ

8/31(水)~9/13(火) 気狂いピエロ

 

などと煽っておいて、混雑とかしてたらすみません。

あと、本当に椅子は「映画館っぽい」椅子ではありませんので、

そういうのが苦手な(身体的な事情もあると思うので)方は要検討かも。

ちなみに、いっつも昔の映画とかを観ることが多いので気づきませんでしたが、

今日観た『変身』はとにかくサラウンド効果が絶大だったのに吃驚。

冒頭で雨が降りしきっているのですが、本当に場内に降っているかのようでした。

(まぁ、これも普段全く音響に期待していなかったからこその相対評価かもしれませんが)

おまけに、心なしかやや爆音気味だったことにも意外性を感じたりしました。

まぁ、北千住は遠いから、俺自身いっつも二の足踏んで終了なことも多いけれど、

(1回券1,000円のみならず)半年有効の回数券もいくつか種類があって、

そちらを利用するともう少し安く観られたりもするので、

コストパフォーマンスも悪くないと思います。

 

北千住は乗り入れている路線が多く、駅も大きかったりするので、出口は要チェック。

ちなみに、俺はいつも千代田線で行ってて、千代田線の一番後ろの車両にのって

下車したところにある階段で上がっていくと小さな改札があって、そこから地上に出ると近い。

なんて、書いてもわかりづらいだろうから(初めて行ったときは迷った)、

行く場合は地図等を持参が好いと思います。

 

俺も一応、観ておこうかと思います。

何せ恥ずかしながら、『勝手にしやがれ』はまだ未修得ですから。

いや、もう何度か観賞済みですが、まだ消化できてないというか、楽しめてないのです。

まぁ、楽しめないことを素直に受け容れれば好いのでしょうが、敗北感を認めきれず(笑)

というのも、私の部屋にはでっかい『勝手にしやがれ』のワンシーンのポスターが

貼ってあるので・・・(といっても、たまたまタワレコで100円で売ってたからなんだけど)

ちなみに、『気狂いピエロ』は好きなんです。昨年末にシャンテでゴダール特集やってるとき、

チケット売り場のお姉さんが「きちがいピエロ」って言ってて感心してしまったのだけれど、

きっと「きぐるいピエロ」って言ってると、その方が面倒な事態になっちゃうからなのかな。

 

  チケット窓口「きぐるいピエロ1枚ですね」

  客「『きちがいピエロ』1枚です!」

  チケット窓口「勝手にしやがれ」

 

なんて展開を用意するという手もあるな。(いや、ありません。)

 

 

 


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