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「『学士力 大学卒業に厳格な認定試験も』について」(いけふくろう通信第400号)

2007-09-10 21:26:39 | 政治・経済・法律・社会
2007年9月10日の読売新聞夕刊1面・14面によれば、
「中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)の大学分科会小委員会は10日、
大学卒業までに学生が最低限身に着けなければならない能力を
「学士力(仮称)」と定義し、国として具体的に示す素案をまとめた」とのこと。

表向きには、大学全入時代に突入した現在、大学を卒業した際に、
得ることのできる「学士号」の質を維持するため、と書いてある。

ところが実際のところはどうであろう。
記事を読み進めていくと、中教審が今後、示していくであろう指針を
「各大学」に対し、「卒業認定試験の実施など、厳格なチェックを求める」
とのこと、そうすることで、安易な卒業を認めない方向性らしい。

しかし、大学といえば、かつては最高学府といわれ、今でも当然、
大学の自治が認められているはず。
そこに、中教審(文科省)が表向きには指針を示すことで、卒業生の質、
ひいては大学の質を維持するのだから、いいことではないかというのだろうが、
実際には、文科省の指導の下、各大学に対して、厳しい審査をすることで、
大学の自治を一定程度奪い、大学を文科省の方針にあうように強制していく
のではないだろうか。

というと、またまた、おかしなことを言ってと、いわれてしまうかもしれないが、
、その問題となっている「学士力」の中身はといえば、
具体的には「知識」、「創造的思考力」のみならず、
「技能」、「態度」といった、およそ大学における教育とは関係もなさそうな
項目が入っているのだ。

おまけに「知識」についても「専攻分野の基本的な知識の習得」以外に、
「社会情勢や歴史とも関連づけて学ぶ」ことを求めている。

これはおそらく、大学で学んできたさまざまな見解を認めず、
ある一定の見解にもっていこうとするのではないだろうか。
その一定の見解は、ずばり「政府の見解」だろう。
まぁ、ある程度、私立大学であれば、自由は効いて、そんなに
無理なことはしないと思うが……。

ところが「態度」の項目はまったくもって、不可解である。
具体的には、「他者と協力して行動したり、目標実現のために方向性を示せる
チームワーク、リーダーシップ」、「自分の良心や社会のルールに従って、
行動できる倫理観」などがあるらしい。

チームワーク、リーダーシップ、倫理観をいったい、大学はどういった尺度で
判定をするのだろうか。それも文科省がある一定の指針を示すのだろうか。
特に倫理観というものは、人によってまちまちなはずで、
「これが絶対正しい」というものはないはず。
それを問い、卒業の認定の一材料に使うなど、もってのほかではないか。

おそらく表向きにはいわないのだろうが、ある一定の学生像=国民像を
もった学生の排出を目的としているのではなかろうか。
それも、政府の見解を大いに尊重した健全な学生を社会に排出し、
その健全な卒業生が社会に参画させ、政府に対して、文句の一つもいわない、
いやいうことさえ感じることのできない国民を創出させようとしている
のではなかろうか。

と書いていけば、いつから「いけふくろう通信」も怪しい方向へ傾いているんだ、
とのご指摘があるかもしれないが、そう思うのであれば、仕方がない。

小泉政権以降の我が国の流れをちょっとでいいから、
皮肉っぽく眺めていけば、正常な感覚をお持ちの当通信の読者諸氏は
ちょっとでもそのおかしさを感じることができるはずだ。

まぁ、あまりこちらの見解を強要するつもりは全くないので、
こういった記事を見たときは、パスして、それ以外の記事をご覧いただければよい。

それから、読売新聞に一言。
ウェブサイトでは、記事のタイトル自体が変わっており、
「問われる「学士力」、楽じゃないぞ!大学全入時代」として、
オブラートに包み、ウェブをよく見る若者に対しては、
「のんきな学生生活はダメだよ、しっかりと勉強しなさい」程度の
ことしか、感じさせず、詳しく記事内容を読まそうとする気概が感じられない。
記事をスルーさせようとする意図があるのではなかろうか。
まったくもって発行部数1200万部を誇る読売新聞らしからぬ情けなさ。

読売新聞社といえば、政府に迎合する傾向の新聞とは言いつつも、
そこまでやってしまっては、マスコミとしての尊厳も失いかねない。

社会はほんとうにどんな方向に進んでしまうのか。心配で気が気でない。
だからこそ、当通信も今後は、こういう記事も配信していくつもりである。


<創刊400号を迎えて>
2005年8月23日に創刊した当通信も本号をもって、いよいよ400号を迎えました。
なんともう2年も経ってしまったんですね。我ながらよく頑張って、継続しているものです。
この間、社会は大きく変革し、私もいくつもの変化がありました。

当初は、グルメ志向・邦画志向のブログをめざしていましたが、
その方向性は多岐に渡り、今では、社会的な問題についても、
少しは論評することにもなりました。

今後は、社会問題にも触れながら、世の中を当通信なりに見ていくつもりです。
もちろん、グルメネタ、邦画ネタも欠かすことのできない大切な分野ですので、
こちらも続けていきます。

今後も、当通信への忌憚なきご意見とご要望をよろしくお願いいたします。

~「いけふくろう通信」編集長 ムッシュ・いけふくろう~


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