いけふくろう通信(発行人=ムッシュ)

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≪書評≫小泉吉宏『戦争で死んだ兵士のこと』〔MF・2001年〕(いけふくろう通信第439号)

2007-10-17 22:28:05 | オススメ書籍・CD・グッツ等



小泉吉宏『戦争で死んだ兵士のこと』〔メディアファクトリー・2001年〕


本文はわずか26頁。

であるにもかかわらず、「死に至るまでのあまりにもの偶然さ」
が非常に丁寧に描かれている。

これほどまでの内容を26頁で凝縮しているものは、
私が読んできた本にはなく、とても素晴らしい一作といえよう。

本書は、ある兵士の「生」ではなく、「死」から人の一生涯を
さかのぼっていく形で、記述が進んでいく。

人の生涯に対する淡々とした記述を書いただけだ、といえば、
そうかもしれないが、挿絵とともに読み進めていくと、
「人の一生涯のはかなさ」を感じることができ、
「あぁ、人生っていうのは、偶然の連続によってできているんだな」
と感じさせる内容である。

特に、本書において、主人公が陸軍士官学校に入学するに至った経緯を
最初から読みすすめていくと、「あぁ、そうするしかなかったのか。
ほかに選択肢はなかったのか。」と思わず、ホロッと泣いてしまうだろう。

そういう意味で「人は偶然に大きく左右されて生きている生き物だな」
と嫌な意味で感じてしまうが、逆にそうであるならば、
あまりかっこつけず、ケ・セラ・セラではないが、
「ありのままになすがままに力まずに生きる」ことで、
世の中のできごとに耳を澄まし、感受性の高い人生を送ることの大切さも感じた。

なお、本書は、戦争とそこに向かったある兵士のことについて、書かれているが、
私はこれが現実のアメリカにもあることではないかと思ってしまった。

そう感じながら、もう一度、読んでみたら、次のことを感じた。
戦争はいかなる理由があっても起こしてはならない。
兵士となって、不幸にも死んでいくものを生み出さないためにも。

最後に、短編であるにもかかわらずこれだけの感動を与えるというのは、
やはり、文章と挿絵の絶妙なマッチングの素晴らしさではないかと感じた。

ちなみに、装幀を申し上げると、これだけの薄さの本であるにもかかわらず、
しっかりとした上製本と仕上がっていることには、関係者としては驚いた。

<補 足>
本書の書評にあたっては、maさんより、本を提供していただいた。
ここに記して、感謝申し上げる次第である。

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~ムッシュ・いけふくろう~

≪書評≫童話屋編集部『あたらしい憲法のはなし』〔童話屋・2001年〕(いけふくろう通信第436号)

2007-10-14 18:38:43 | オススメ書籍・CD・グッツ等


童話屋編集部『あたらしい憲法のはなし 復刊〔小さな学問の書②〕』(童話屋・2001年)


本書は、1947(昭和22)年8月2日に文部省が発行した
中学1年生の社会科の教科書として使用された教材の復刊である。
なお、この『新しい憲法のはなし』は、1952(昭和27)年3月まで教材として
使用された。

施行されて間もない日本国憲法に対する、当時の文部省
(ほとんど政府見解に近い)の見解を垣間見ることのできる資料として、
大変貴重なものである。

また、日本国憲法を詳しく知らない者にとっては、憲法の全体像、
確かに多少、現在の制度とは異なる説明や、裁判所の項目が少なかったりする
という、若干の問題点はあるものの、憲法の構造を大まかにつかむためには、
たいへんわかりやすいシンプルな書籍である。

特に、戦争の放棄(憲法9条)に関する記述は、秀逸。
一部、引用すると「戦争は人間を滅ぼすことです。世の中のよいことをこわすことです」。
戦力の不保持に関しても「これからさき日本には、陸軍も海軍も空軍もないのです。
これを戦力の放棄といいます。
『放棄』とは、『すててしまうこと』」ということです。
しかしみなさんは、決して心細く思うことはありません。
日本は正しいことを、ほかの国よりさきに行ったのです。
世の中に、正しいことぐらい強いものはありません」という部分がとても良い。

ぜひ、今度の福田首相、いや国会議員や政府関係者、はたまたマスコミ関係者は必読!
国民のみなさんにも興味を持って読んでいただき、
しっかりと内容を吟味してもらいたい。

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~ムッシュ・いけふくろう~

《書評》林信吾『反戦軍事学』〔朝日新聞社・2006年〕(いけふくろう通信第386号)

2007-08-28 19:22:39 | オススメ書籍・CD・グッツ等

林信吾『反戦軍事学』(朝日新聞社・2006年12月)242頁・本体価格720円


 本書は、入門編、中級編、上級編、応用編の4部構成でなっている。


 著者の林 信 吾 氏 は、「あとがき」にもあるように、
ただの「軍事オタク」でもないし、感情的に戦争は反対であるという立場ではなく、
「軍隊」や「軍事」についての諸問題について、しっかりとした知識をもって
背景等を説明したうえで、具体的に問題点を指摘している。


 まず、『反戦軍事学』というタイトルに少々、驚きながら入門編の扉をめくると、
いきなり「鈴木二等兵、脚踏ん張れ。歯を食いしばれぇ」という物語風の書き出しで始まる。
それは、日本国憲法が改正され、「国を守る義務」が明記され、
「自衛隊」が「国防軍」と改称されたのちの「二〇××年の日本」の様子である。
そこでは、金銭面に限らず、教育面なども含めて、あらゆる意味において、
格差が拡大しており、下層の人たちが上層の人と互角に勝負しようとするならば、
「国防経験者」という肩書をもたなければ、勝負にならないのだという。
結局、徴兵制でない「国防軍」において、第一線を担うのは、
そういったさまざまな意味において、貧しい人たちなのである。
そういった物語風の話(かなり現実味があって、恐ろしい)を交えながら、
「警察予備隊」から「保安隊」を経て、現在の「自衛隊」が創設された背景や、
政治家たちが「自衛のためなら何でもあり」との考えが昔からあったことなどを
述べている。


 次に中級編では、「軍隊」の歴史的背景、そして、「軍事用語」がなぜこんなに
難しいのかといった理由が事細かに書かれている。
また、自衛隊の現状、たとえば、装備品などを国産で調達するのが公共事業であること、
イージス艦を導入した背景が対米貿易黒字の解消のためであったことなどを
とてもわかりやすくかつ具体的に説明している。


 そして、上級編では、現在の軍事に関する論議を正確かつ理論的に批判している。
ただ、本書を読むまで、軍事的知識について、全くのど素人の私にとっては、
細かな点を理解しにくく、やや難しかった。
しかし、おおむね、著者の意見は理解できたし、特に石破元防衛庁長官の著書
『国防』にある見出し「貴方も国を守ってください」は
「貴方がイラクへ行ってください」と思うのは私だけだろうか、と指摘して、
あわよくば「徴兵制」が復活すればいい、と思っている政治家たち
(つまり、上層部)ほど、自身や身内を戦場で果てるという事態を
覚悟していないという、矛盾点を指摘している。


 最後に、応用編では、現在の状況をどう打開していくかといった議論を
進めている。


 本書を読み終え、著者がたびたび「戦争は厭だと思う人ほど、
正しい軍事的知識を身につけてもらいたい」と指摘した理由がよく分かった。
戦争は厭だと思う人ほど(と書いている私も)「戦争の知識なんぞ、
知る必要もない。あんな嫌なものはないほうがいいんだ」、
ととかく感情論に走りやすいが、本書を読むことで、
軍事的知識を身につけたうえで、反対をしなければ、
社会のよからぬ流れに流されてしまうと強く感じた。

<編集後記>
書評第一号は、いかがでしょうか。皆さんのご意見も
お聞きしたいので、コメントをよろしくお願いいたします。

~ムッシュ・いけふくろう~

「ふくろうコレクション5」(いけふくろう通信第376号)

2007-08-20 20:41:04 | オススメ書籍・CD・グッツ等
さて、読者の皆さま、こんばんは!
猛暑といわれた夏もそろそろ終盤を迎えつつある今日この頃ですが、
いかがお過ごしでしょうか。

私は夏バテというのか、夏ヤレといった具合で、
全てのやる気といったやる気が失せております……。

でも、このいけふくろう通信だけは頑張りますよ!

てなことで、今回の「ふくろう」は、ふくろうの学業の神的存在を
具現化したものです。

本を読むふくろう。わたしも、そして当社もこのように
かたくなな姿勢で、時流や一時の噂などに流されることなく、
初志貫徹で物事にひたすら真正面から励んでいきたいものです。



~ムッシュ・いけふくろう~

「ふくろうコレクション4」(いけふくろう通信第366号)

2007-08-16 22:25:15 | オススメ書籍・CD・グッツ等
さて、本日何号目でしょうか。頑張りすぎです……。

えっ、これが我が編集部唯一の関西生まれのふくろうです。
関西といっても、京都生まれなんですがね。



西武百貨店の京都に関する展示会で、買ったものですね。
西陣織?ではないかもしれませんが、何となく優美さを感じますよね。

~ムッシュ・いけふくろう~