年末・年始、静まり返ったケネディスクールでひたすら格闘を続けています。相手は修士論文であり、またクライアントに対するコンサルティング・ペーパーでもあるPAE(Policy Analysis Exercise)。
僕のクライアントになってくれているNPO(非営利法人)Common Impactは、NPOと企業との「♡出会い♡」をサポートするサービスを展開していることは、既にこのブログでも触れました。
具体的には、自社のCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)活動を社会により実質的なインパクトのあるものへと強化すると同時に、そうした取組みを企業の長期的な成長力に結びつけるため、社員をボランティアとしてNPOに派遣しようと模索している企業と、潜在力や有望な事業計画を持ちつつも、スキルのある人材と彼らを雇う資金不足のため、マネジメントの問題に直面しているNPOとをマッチングしているのです。
Common Impactに手数料を支払ってマッチングサービスを受けるCorporate Partnerのリストを見ると、Cisco Systems、Goldman Sachs、Fidelity Investment、State Street等、Fortune500に名を連ねる金融やシステム関連を中心としたグローバル企業がぞろり。
従業員はCEO以下たったの8人にもかからず2000年の立ち上げ以降急成長を続け、2007年度末で予算規模は100万ドル(約1憶円)を突破しました。そのサービスを通じて企業とNPOのニーズに確実に応える実績(Track Record)を積み上げてきたCommon Impactですが、より安定的な成長を目指す上で避けて通れない課題が浮かび上がってきているのも事実です。
仲介業者が業界を問わず直面するであろうその課題とは、一言で言うと「中抜き」の問題。
取引を継続するにつれて、顧客企業がNPOに関する知識やDue Diligenceのポイント等のノウハウを身につけるとともに、NPO業界とのネットワークを強化していけば、わざわざ手数料を払ってCommon Impactを通じてNPOを紹介してもらうインセンティブは当然、失われていくでしょう。
こうした課題に対応するため、Common Impactが力を入れつつあるのが企業のCSR戦略に対するコンサルティングサービス。
実際、昨年の後半以降、複数のCorporate Partnerから、グローバルなCSR戦略構築に対するコンサルティングの具体的なオファーが入ってきているとのこと。しかし、アメリカ国内ならともかく、諸外国、更にはグローバルなレベルでCSRやNPOセクターがどの状況にあるのかについて、現時点ではCommon Impactに知識や情報の蓄積がほとんどありません。極めて広範で様々な角度からのリサーチが求められるテーマでもあり、たった8人で既存のマッチング業務に追われている状況では、中身のあるコンサルティング・サービスの提供は困難です。
こんな状況の下、殆ど「飛んで火に入る夏の虫」が如くフラフラ~とCommon Impactにやってきた日本人留学生が僕という訳です・・・
僕がコンタクトをした当初は、
「これまで企業からボランティアとして派遣された企業と受入先のNPOへのアンケート調査等を通じて、Common Impactが提供してきたマッチングサービスの包括的な評価と改善点を提示してほしい」
というテーマであったのですが、複数のCorporate Partnerから「CSのグローバル戦略構築の上でのコンサルティングがほしい」というビッグ・オファーが入ったため、内容はガラリと変更。
そして現在、僕が冬休みも正月も返上して朝から晩まで取り組んでいるのが
「グローバルなレベルでのCSRへの取組やNPOセクターの動向の把握と、アメリカ・イギリス・アイルランド・インド・日本の5か国におけるCSRとNPOセクターをとりまく制度的・政策的・文化的な背景、及び現状についての調査」
「上記調査に基づき、コーポレート・クライアントが上記5か国でNPOセクターにボランティアを派遣する上での可能性とリスクの提示」
という、一人で取り組むにはあまりにもドでかい課題。しかも、具体的なオファーが来たということで、Common Impactで案件を担当している副社長からは、
「毎週1回その一週間の調査結果のプレゼンテーションをしに来てくださいネ!」
という何ともノリノリのオファーが。という訳で12月に入って以降、毎週金曜日はその週に取り組んだ調査結果をパワーポイントの資料にまとめて発表し、その後2時間近いブレーンストーミングとディスカッションを行うという、超濃密な関係が続いています・・・
しかし、実際このテーマは僕が社会人になって以来ずっと問題意識をもっていながら、時間を割くことができなかったものであり、ケネディスクールへの留学という人生でまたとない機会を活かして是非とも理解を深めたいと思っていたものであるため、Common Impactの本気のアプローチは望むところ!!
・・・と強気でリサーチを始めたものの、現在の状況は膨大な量の情報の海で遭難しかかっているという感じ。果たしてケネディスクールからNPOに派遣されたボランティアは、先方が満足するような結果を出せるのでしょうか・・・
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一つは、このCommon Impactの活動内容そのもので、もう一つは、これを通しての貴殿の成果です。
楽しみに読ませてもらっています。
残り半年、ラストスパートで突っ走ってください!