「Ask what you can do --- 君自身が何をできるか問いたまえ・・・」
ケネディスクールのミッションであるこのフレーズとともに現れるJohn F. Kennedy大統領の力強い表情。
3月の上旬より、ケネディスクールのウェブサイトが全面的に改められました。
トップページでは、ケネディ大統領がアメリカ国民、否、世界中の「市民」に向けて発したメッセージに続き、世界のあちこちで変化を生み出すケネディスクールの卒業生や教授陣、そして学生たちの姿が映し出されます。
地球の温暖化を食い止めるために、数々の論文を発表、シンポジウムを開催し、政策作りにインパクトを与えるべく戦う教授、ラテンアメリカの貧困層の生活水準の向上を目指して市民運動に尽力する卒業生、ハリケーン・カトリーナの爪あとが色濃く残るニューオリンズで町の復興のために当地のNPOと協働しながら知恵と手を貸す学生たち、そして人々の生活を守るために軍で活躍するOBたち・・・
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“Ask not what your country do for you, Ask what you can do your country”
1961年1月20日に行われたケネディ大統領の就任演説の一説は日本でもよく知られています。しかし、この中でCountryがどう訳されるべきかについて、注意を払っている人は少ないように思います。というのも、Countryを「政府/国家」と訳している文章をよく見かけるからです。
ケネディ大統領はなぜ、StateやNationではなく、Countryという言葉を使ったのか。
演説の全文に耳を傾けると、日本語だとnationやstateと同じく「国」と訳されてしまうCountryの持つ独特のニュアンスとともに、このフレーズが訴えかける真のメッセージが浮かび上がってきます。
Country、それは人々が共有する土地・空間・そして時間で作り上げられている「共同体」のことであり、むしろCommunityに近いニュアンスをここでは持っていると考えます。
そう考えると、ケネディ大統領は、「国家(政府)のために何ができるか考えろ」といっている訳ではなく、
「君たち一人一人が生まれ育ってきた、君を育んでくれた家族や周りの人々と共有してきた共同体を、君たち一人一人がどうよくして行けるか自問自答したまえ」
と訴えているということに気付かされます。
では、Countryを「国・政府」と訳すか「共同体」と訳すかによって、どのようなニュアンスの違いが出てくるのでしょうか?
例えば、「国家/政府のために君は何ができるか?」と問われていると捉えてしまうと、その答えは例えば、「ちゃんと投票にいこう」とか、「税金を納めよう」、あるいは「公務員試験を受けて官僚になろう」といった、個人が機構としての「政府」あるいは「国家」とどのように向き合うか、という方向に答えが自然と傾いてしまいます。この傾向が行き過ぎると、某隣国のような、あるいは60年前の日本のような「全体主義」の雰囲気が生まれてくるのではないか、という危惧すら感じる人もいるでしょう。
しかし、「生まれ育った共同体のために君は何ができるか?」というメッセージと捉えると、導き出される答えは「国家・政府」という枠組みにとらわれない、大分幅広いものになるでしょう。
ここにケネディスクールのミッションがあるのです。自分が所属する公の空間、共同体、それがどんなに小さい場所であっても、あるいは視野を少しずつ広げて自分が育った街、県、国、そして世界をより良い空間としていくために、自問自答し、そして行動していける、そんな人材を育てていくこと。
別に卒業生の全員が大統領や首相になることを求めている訳ではない。ハイフェッツ教授のリーダーシップ論にもあるとおり、社会的な地位(authority)と、共同体に必要な変化を起こすリーダーシップ(アクション)を発揮する主体は必ずしも一致するものではないから。例えば、上司やリーダーを目的達成に向けて動かすFollowershipだって、共同体をより良い空間にしていくためには欠かせない要素でしょう。
また、ケネディスクールは官僚や政治家養成校でもない。「パブリックマインド」を持ったリーダーを育てることにその意義がある。何故なら、社会問題の解決や公共サービスは、政府や国家といった機構を通して提供されるものばかりではないのだから。
このことはもちろん、政府や国家の重要性を否定するものではありません。ただ、政府や国家はそれだけで自己完結するものではなく、その先にある社会を、共同体より良いものにするために存在する、必要な手段・道具に過ぎないということを、特に公務員として政府に務める者は忘れるべきではないと思います。
“Ask what you can do ...”
そして、このメッセージはケネディスクールというコミュニティとそのメンバーのあるべき姿を伝えるものでもあります。
つまり、大学や教授から「与えられる」ことを望むのではなく、学生、教授、職員、そしてOB/OGも含め、ケネディスクールに関わる全ての人々が、「ケネディスクールをより良い学びの空間としていくために、何ができるか」を問い、そして行動に移していく、それがケネディスクールのモットーであると言えるでしょう。
“Ask not what your country do for you, Ask what you can do your country”
僕がこの「ケネディスクールからのメッセージ」と出会い、ケネディスクールを志してから早6年の歳月が経とうとしています。
「自分を育んでくれた共同体、日本のために、自分ができることは何か?」
今後も自問自答を続け、行動に移して生きたいと思っています。
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☆ ウェブサイトの変更とともに、学校名もHarvard University John F. Kenndy School of GovernmentからHarvard Kennedy Schoolへと変更になりました。
そこで、このブログも題名を改め「ハーバード・ケネディスクールからのメッセージ」とし、レイアウトを一新しました!
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それにしても広島・宮島は相変わらず最高でした。僕が東京に戻る前に「の社長」に色々教えてもらったのが懐かしい思い出です。そう言えば東京に進出されるとの事。僕もあと3ヶ月で帰国なのでお会いできるのを楽しみにしています。またメールしますね!
Steveさんのこれからの活躍が楽しみです。いつかお会いして色々お話ができると良いですね!
時にHKSにした理由は良く分からないけれど、ちゃんとハーバードのプロフェッショナルスクール一員であると分かってもらいたかった?からかも(笑)
HKSに通っているのが学生が世界中から来ていることをかんがえると、「Ask what you can do」で問われているCountryはとりもなおさず、世界中のコミュニティ、世界そのものですね。
政府の首脳やしかるべく地位の人でなく、HKSの考えるリーダーシップを発揮する人が、あらゆる組織にいるといいですね。
その話を聞いて、エイリアン探しのSETIと言う計画を思い出しました。スーパーコンピュータの代わりに、世界中の不使用時の何万台ものパソコンに分解された解析作業をさせると言う計画。
Ikeday1977さんのような人が、あらゆるところに居てリーダーシップを発揮できる世の中になればいいですね。
"Ask what you can do"という言葉にはとても共感します。そういえばYork大学Schulich School of Businessのエッセイでは「あなたはどこで、どのように私たちのCommunityに貢献することができますか」っていうトピックがありましたよ。
やっぱりなんでも能動的にやらなくちゃですね。特に大学みたいな場所だと受動的になったらすぐに落ちれるところまで落ちそうですよね。笑
この前の質問への回答、ありがとうございました。
他の人にも、今はいろんな分野の知識に触れておいて、自分の本当のstrengthやweaknessが分かってからでも遅くない、というようなことを言われました。
今はまず大学の合格書をゲットできないとどうしようもないですね^^
ありがとうございましたm(__)m
こっちのほうがかっこいいね。
Harvard Kennedy Schoolか、ってことは略してHKS?
この時期に名前を換えるってのは、何か狙いがあるのかしら?
Japan Tripがんばってちょ。
僕は、コスタリカにいってきます。
こ