白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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苦しみからの解放

2016年10月02日 23時54分43秒 | 仕事・指導碁・講座
皆様こんばんは。
本日は第5回ロッテ子ども囲碁大会で入門クラスの講師を担当しました。
午前・午後合わせて100人近くの子供が集まり、とても賑やかでした。
何をするにも元気が一番ですね!

四谷大塚での入門教室も同様でしたが、最近子供の入門には主に「ななろのご」が使われています。
碁盤と碁石を絵やキャラクターに置き換えたものですが、直感的に分かりやすいように工夫されています。
これで入門教室はずいぶんやり易くなったと思います。

さて、本日は19路盤の講座です。
題して「苦しみからの解放」
・・・別に怪しげな勧誘の文句ではありません(笑)
それでは早速見ていきましょう。



私は月1回、中央大学の現役学生とOBの練習会に参加しています。
その時の4子局を題材にしました。

局面は白△とツケて黒の上下を分断しに行った所です。
この部分で黒は少し苦しいのですが、下辺では黒△と2手連打しており、白〇が孤立して黒有利な状況です。
ここが酷い目に遭わなければ黒順調といえます。
さて、それでは黒はどうすれば良いでしょうか?





1図(失敗1)
右下の黒が取られそうだから生きよう・・・こう思ってしまう方が多いのですが、そうすると自然に黒△が痛んでしまいます。
右辺に出来そうだった黒地もすっかり無くなってしまいました。





2図(失敗その2-1)
では黒1とこちらから出て行こう・・・というのが実戦です。
しかし下辺の白が生きているのに対して右下の黒は生きていません。
白4、6という「モタレ攻め」に遭って困った事になりました。
次に白Aなど進出されると困るので、黒はそれを防ぐ事になりますが、その間に白はどんどん強くなって攻めの準備が整います。





3図(失敗2-2)
その結果こんな事になりました。
右下の黒が一方的に攻められています。
この黒はAと打っても生きはありません。
となれば安全を確保できるまで逃げなければいけませんが・・・





4図(失敗2-3)
逃げる事に精一杯で下辺に手が回らなくなりました。
当初の状況と違って黒△が逆に取られそうになっています。
全ては右下黒が苦しんだ事が原因です。





5図(テーマ図再掲)
白△とツケた場面に戻ります。
この黒が苦しまず、かつ黒△が痛まないためにはどうすれば良いでしょうか?





6図(正解)
白△を取ってしまえば上下が繋がります。
という事で黒1、3と取りに行くのが正解です!





7図(正解変化1)
白が逃げて来ても取る事ができます。
なお白Aが心配かもしれませんが大丈夫です。
高段者であればここは読み切らなければいけません。





8図(正解変化2-1)
逃げると取られるので、黒△には白1と当てて変化する事になります。
下方の黒石を分断する狙いです。





9図(正解変化2-2)
以下白6まで一本道で進み、黒6子は取られます。
黒はこれでダメと思ってしまったのでしょうが・・・本当にそうでしょうか?





10図(正解変化2-3)
黒が先手になったので、下辺に回る事ができます。
右下に増えた白地は20目もありません。
地だけ考えても白△を取り込んだ黒地の方が大きいです。
そして右辺の黒の姿をご覧ください。
痛むどころか、絶対に死なないような形になりましたね。
白がここに入って行くのは困難で、間違いなく大きな黒地になるでしょう。

この図になるか、1図や4図のようになるか・・・その差は一目瞭然ですね。
石を助ける事に拘ると延々苦しむ事がありますが、捨ててしまえばもう苦しまなくて済みます。
石を捨てられるようになると、気分良く碁が打てるようになりますよ!