白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

おかげ杯国際対抗戦

2016年10月14日 21時48分23秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日、第3回おかげ杯国際精鋭囲碁対抗戦が始まりました!
30歳以下の若手のみの棋戦で、日中韓台の4チームが優勝を争います。

日本チームは台湾チームに3対2で勝ちましたが、中国チームには1対4で敗れました。
チームとしては残念でしたが、個人では伊田八段が黄雲嵩五段に見事勝利!
黄五段はあまり知られていないでしょうが、世界でも上位の棋士です。
阿含桐山杯の日中決戦では、中国代表として井山桐山杯と戦っています(井山桐山杯の勝利)。
本日はその対局の模様をご紹介しましょう。
なおこの対局を含め、対抗戦の模様は全て幽玄の間にて中継されています。



1図(実戦黒41)
伊田八段の黒番です。
黒△と打った場面ですが、これは白△に対する「3目の真ん中」の急所です。
白△のダメが詰まっていて動きが不自由になるので、黒はそれを利用して全体を攻める狙いです。
「3目の真ん中」は昨日の名人戦でも出て来ましたね。




2図(実戦白72)
白も、ただ逃げ回るのではつまらないと、隅の黒を取りに来ました。
黒〇と白〇が攻め合いの形になっています。
白としては、黒を取ってしまえばAの傷を解消できるという事です。
次に黒Bと打てばコウになりますが・・・





3図(変化図)
黒1と仕掛けても、大きなコウ立てがありません。
白6となって、これは白良しです。
黒1の石が無駄になっているのが痛いのです。
この手は地だけで言えば、3目の価値しかありません。
序盤ではパス同然ですね
では黒どうするかと言えば、これも昨日出て来ましたが・・・





4図(実戦黒73)
出ました、コウ立て作りです!
大きなコウ立てが出来るのを待ってから、コウを仕掛けようという事ですね。
ややこしい打ち方ですが、詳しく説明していきましょう。





5図(変化図)
ここで白がコウを解消しようとするとどうなるでしょうか?
黒2と連打して3図と同じようですが、大きく違うのはAの所に黒石がない点です。
黒4に回る事ができ、左下の白が危険になります。
これは黒良しです。





6図(実戦白74~黒79)
という訳で白としては、今右下に手を入れている訳にもいきません。
実戦は白1と受けましたが、そこで黒2とコウを仕掛けました!
黒4、6が大きなコウ立てになっており、次に黒Aと打たれると白ばらばらになります。
3図と似ているようですが、宙に浮く白石の数が増えています。





7図(実戦白80~黒83)
そこで実戦は白1と受けたので、黒2とコウを取り返す事ができました。
白には大きなコウ立てが無いので、白3の「そばコウ」を使うしかありません。
ただ、ここで黒Aと受けると、白Bとコウを取り返されて、黒に大きなコウ立てがありません。
ではどうするかと言えば、黒4のコウ立て作りです!





8図(変化図)
白1と打てば黒を取れそうですが、それは罠です。
黒2以下は白を団子にする手筋で・・・





9図(続・変化図)
白3まで進んだ所で、黒4とコウを仕掛けます!
黒6や黒A以下に大量のコウ立てができて、コウ争いは黒勝ちになります。
すると黒Bの切断や黒Cの眼取りが残るので、白困ります。





10図(実戦白84~黒87)
そこで実戦は白1とコウ立てができるのを避け、黒2に白3とコウを取っていきました。
左辺で得をした黒はこのコウに拘らず、黒4で左下白への攻めを狙います。





11図(実戦白110~黒111)
最終的にはこんな分かれになりました。
石を沢山取った白が良く見えますか?
しかし黒は左上、左下で得をし、さらに右上に回っています。
また、白△に打たせているのもポイントです。
この手は次にAで黒3子を取る手を残していますが、その価値は地だけで言えば11目です。
この段階では、一手パスとは言わないまでも、半手パスぐらいでしょう。
総合すれば黒十分の分かれと見られます。

プロの碁にはコウがよくできます。
アマの皆さんにはコウ嫌いな方が多いのですが、大きな理由として、コウに負ける事が心配というものがあります。
しかし、コウは必ずしも勝たなくても良いのです。
負けても二手連打できると思って、気楽にコウ争いを楽しんで頂きたいですね。


さて、コウ争いの説明だけで大量の図を使ってしまったので、ここらでこの碁のご紹介は終わりにしたいと思います。
しかし、見ているだけで面白いのはここからです。
伊田八段、切れる所を全て切って行きます(笑)
種石、カス石関係なくもりもり取って行く、皆様好みの碁です(失礼)
ぜひ、総譜でご覧ください!