白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

一石碁(阿含桐山杯決勝)

2016年10月08日 21時19分45秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日は永代塾囲碁サロンで指導碁を行いました。
お越し頂いた方々、ありがとうございました。

さて、本日は第23期阿含桐山杯決勝が行われました。
還暦を過ぎてもまだまだ実力は健在の二十五世本因坊治勲と2年ぶりのタイトル獲得を目指す河野臨九段、両者の戦いは半目差の際どい勝負になりました。
それでは早速振り返っていきましょう。
なおこの対局は幽玄の間にて、三谷哲也七段の解説付きでご覧頂けます。



1図
黒番の二十五世本因坊治勲の模様志向の序盤です。
地にからいイメージがありますが、時々模様の碁も打っています。
さてここで白番ですが、次に黒Aと打たれると上辺の模様が大きくなります。
よって白は・・・





2図(実戦)
白1、3と打ちました。
黒模様を制限するための常套手段で、地にからい河野九段ならずともこう打ちたくなります。
しかし地ばかり気にしていてはいけません。
黒4の後どう打つべきでしょうか?





3図(変化図)
取られないように白1、3と逃げ出す方が多いでしょう。
黒2、4となって、この黒と形は似たようなものです。
しかし周囲の状況をよく見てみましょう。
黒△と白△、援軍としてどちらが強力でしょうか?
勿論考えるまでもなく黒ですから、この戦いは黒が有利です。
白としては不利な戦いは避けなければいけません。





4図(実戦)
という事で白1から捨てました。
黒8まで地を与えますが、1図黒Aと打たれるよりは得と判断しています。
苦しい戦いを避けて白9と新天地へ展開、これが正しい考え方です。





5図(実戦)
前図であっさりした打ち回しを見せた河野九段、右下ではしつこさを見せました。
黒△と守ったにも関わらず白1と動き出すとは





6図(実戦)
黒△まで一段落です。
白は黒〇、黒は白〇を取る分かれになっています。
白が地を得しており、成功と言って良いと思います。
正確な読みを武器とする河野九段らしい仕掛けでした。





7図(実戦)
その後白△と黒模様を消しに行った場面です。
次に白Aと切るぞと言っていますが・・・





8図(変化図)
正直に黒1と守っているようでは、白2と悠々と進出されてしまいます。
こうなると黒の上下がつながらず、大きな地も望めなくなります。
黒困ったように見えますが・・・





9図(実戦)
実戦は凄い手が飛び出しました。
黒1のツケ!
次に白はAと出る一手で、そう打たれて黒ばらばらになりそうに見えますが・・・





10図(実戦)
黒12まで力ずくで止めました!
黒2子は捨て石です。
二十五世本因坊治勲、なんとも格好良い打ち回しを見せました。
一方で河野九段もタイミング良く白5を利かし、後に白Aを狙っています。
見事な分かれでした。





11図(実戦)
そして白に手番が回り、左上白7まで20目近い利益を上げましたが・・・





12図(実戦)
黒1から中央を囲ったのもまた大きいです。
こうなっては形勢は黒が少し良さそうです。
しかしヨセの名手河野九段も必死に追い上げて差は詰まっていきます。





13図(実戦)
そしてこれが終局図です。
盤面全体を見渡してみて、何か気付きませんか?
一部の取られている石を除き、黒の石が全部繋がっていますね。
所謂一石碁です!
昔の武宮九段の碁にはよく出来ましたが、対極に位置するかのような人の碁に出来るとは面白いですね。
俗に一石碁に負け無しと言います。
という事は、結果は・・・?







白半目勝ち!
石が繋がるように打つ事は碁の基本で、非常に重要です。
全部の石が繋がるように打てれば理想的ですよ、というのが一石碁に負け無しという言葉の真意です。
ただし勝ちを保証してくれるとは限らないのでした。

今月はタイトル戦等が目白押しです。
棋戦カレンダーが凄い事になっていますね。
いずれも目が離せないものばかりです!
ぜひご覧ください。

さて、明日は第21回湘南ひらつか囲碁まつりで指導碁を担当します。
大勢のアマの皆様と触れ合う良い機会で、楽しみにしています。
読者の皆様も、ぜひお声がけください!