白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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藤沢三段、連勝!

2016年10月03日 21時10分15秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日は第35期女流本因坊戦挑戦手合五番勝負第3局が行われました。
両者死力を尽くした読み合いの結果は、藤沢里菜三段謝依旻女流本因坊に白番中押し勝ちを収めました。
それでは早速振り返っていきましょう。
なおこの対局は幽玄の間にて、鈴木歩七段の解説付きで中継されました。



黒1の二間開きは謝女流本因坊が大好きな手、ここ一番で使ってきました。
黒7まで力を溜めておいて・・・





黒△で開戦!
得意の乱戦に持ち込む狙いでしょう。





そして黒1、3が強烈パンチ!
白△を丸ごと飲み込みに行きました。





白も1、3と凄い手で対抗、黒△も強くないぞと言っています。
一体どうなっているのか、全くわかりません





結果的には白△が全滅しました。
白は外側で利益を得ているとはいえ、流石に黒が良いでしょう。
謝女流本因坊の読みが上回ったようです。





その後下辺を目一杯に構えて猛追する白に対し、黒1の踏み込み!
周囲が真っ白の状況なので、白2、4と反撃されて危険なように見えますが・・・





いつの間にか切った白の方が被告になっています。
このあたりが謝女流本因坊の強い所です。





白1、3は黒Aと受けさせ、中央の白を強くしておいて左辺黒に迫ろうというモタレ作戦です。
しかしここで黒4と左辺を強化し、さらに黒Bの切りを狙いました。
あなたが先に受けてください、といった所ですね。
良い呼吸です。





白1と受けたので、それから黒も上辺を守る呼吸です。
・・・と思ったら実戦は黒2、4と左辺を守りました。
あれ?上辺は大丈夫?





黒は何か誤算があったのでしょう。
白5まで上辺を突き破られ、白AとBが見合いです。
こうなってはただでは済みません。





その後黒は中央白との差し違えを目論見ましたが、白△まで巧妙に生きられてしまいました。
勝負あったかのように見えましたが、ここで黒1が凄い勝負手!
白Aなら黒B、白C、黒Dで白の大石が切断されます。
白が困ったように見えますが・・・





白1の「おまじない」が絶妙!
黒2と換わるだけで前述の切断が防げています。
なんとも鮮やかな手筋で、これで終わったかと思いました。





しかし手の見える謝女流本因坊、さらなる勝負手を繰り出します。
黒1を一本だけ打っておいて、黒3からの切断を決行!
なるほどこれは・・・





(変化図)
一見白5までで黒を取れそうですが、黒6と逃げられてこれ以上手が出ません。
次に黒AとBが見合いで要石の黒4子は取られず、中央の白が取られます。
これは大逆転!?





しかし藤沢三段は冷静でした。
実戦の白1、3が正着で、白△を捨てて黒△を取る事になりました。
謝女流本因坊の勝負手は不発に終わり、これで白勝ちが決まりました。

序盤から謝女流本因坊のペースで進んでいましたが、藤沢三段もしぶとく粘りました。
そして謝女流本因坊の一瞬の隙を衝いて一気に抜き去ったのは見事でした。
後半の集中力が勝負を分けた気がします。

これで五番勝負は藤沢三段の2勝1敗、ついに謝女流本因坊を追い詰めました。
同時に五冠維持にも赤信号が灯りましたが、謝女流本因坊はこの難局を乗り切れるでしょうか?
第4局は10月24日(月)に東京都千代田区の「日本棋院東京本院」で行われます。
目が離せない一局になりそうです!

また、明日からは第41期名人戦挑戦手合七番勝負第4局が行われます。
こちらも大変な大一番です。
まさかの3連敗を喫した井山裕太名人、反撃の狼煙を上げる事ができるでしょうか?
それとも勢いに乗る高尾紳路挑戦者が一気に決めてしまうのでしょうか?
対局の模様は幽玄の間ニコニコ生放送で中継されます。
皆様、お見逃しなく!