白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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名人戦第4局・封じ手予想

2016年10月04日 18時51分15秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
ついに第41期名人戦挑戦手合七番勝負第4局が始まりました!
3連敗で崖っぷちの井山裕太名人、本局で高尾紳路挑戦者の勢いを止める事ができるでしょうか?
早速1日目の対局の模様を振り返っていきましょう。
なおこの対局は幽玄の間にて、山田拓自八段の解説付きで中継されています。
またニコニコ生放送でもご覧頂けます。



井山名人は勝ち負けだけでなく、観戦者を楽しませる事も意識していると思います。
しかし本局は流石に勝負に徹する構えなのでしょう。
世界的に流行している布石を選んで非常に堅実です。
また、知っている布石だとあまり時間も使わず済みます。
後半時間に追われてミスが出る事も警戒しているのでしょう。





しかし結局は見た事のない局面に進んで行きます。
勝負に徹したとしても、積極的な打ち方を選んでいくのは井山名人の個性でしょう。
左上で黒1と白2を交換してから黒3と動いたのは意味深です。
この後の分かれを想定して、左上の交換があった方が良いと判断しました。
左下は白石が多い場所なので、黒3に白Aと切って頑張られる事は想定し易く、後はほぼ一本道です。





左下の戦いが一段落した後、黒1、3と打って白△を攻める狙いです。
このために黒△を打っておいたのでしょう。





(変化図)
左下を先に動いた場合、黒1には挟まず白2などと受ける事が想定されます。
ここでもし黒3から囲いに行って白8までと進行したとすると、もう黒が勝てない碁です。
黒△が役に立たない石になっています。





実戦に戻ります。
狙われた白もそう弱い立場ではなく、白1から堂々と戦っていきました。
白5は石の形を重視する高尾挑戦者らしい手で、次にAとBを見合いにしています。
アマに皆様にも参考になるでしょう。





(変化図)黒薄い
ここで黒1と閉じ込めたくなる所ですが、白2と打たれると簡単に根拠が出来そうです。
一方外側の黒は根拠が無くなり、白AやBで上下を切断される狙いも生じます。
これは黒空威張りというものです。





という訳で実戦は黒1とお互いの根拠を重視し、白は2と頭を出す事になりました。
お互いに厳しく攻められない形になり、じっくりした展開になるかと思われました。





そして黒1と1回大場に向かいましたが、白2の後黒3と様子見の手を打って難しい事になりました。
白の受け方を見てから後の打ち方を決めようという高等戦術です。
白の対応としては、白A~Cをはじめとした受ける手が考えられます。
そして受けずに他に回ってしまう選択もあります。
これは悩ましい所で、高尾挑戦者は長考に沈み・・・





そして打った手は第3の選択、白1の様子見返し!
逆に黒の受け方を見ようとしています。
黒Aの方に繋げば白Bから切断する手が残りますし・・・





(変化図)
黒1の方に繋げば切断される事はありませんが、
白2、4のハネツギを利かされてしまいます。
白の隅ががっちり固まるのに対し、黒はただ繋がっただけで根拠もはっきりしません。
相手にとって一方的に得な取引で、黒つら過ぎます。
ここで井山名人も長考、そして選んだ手は・・・





様子見に受けず、黒1と1回ハネてから黒3のコスミツケ!
これはなかなか思い付かない手で、必死に捻り出した手という印象です。
打たれてみると流石井山名人と思いました。
そしてここで封じ手となりましたが・・・





(変化図)
「ツケにはハネよ(伸びよ)」という格言がありますが、コスミツケに対しても同様です。
ここでも何も考えなければ白1と伸び、上下の黒を分断したい所です。
しかしこれは黒の注文で・・・





(続・変化図)
次に黒1のノゾキが飛んで来るでしょう。
白2の繋ぎは仕方なく、黒3となって白2子が取られそうです。
下方の黒も白4から切られますが、こちらは捕まりません。
白まずい図です。





という事で封じ手は白1の出と予想します。
黒が受けなかった所を追及するのが自然でしょう。
白Aでも切る事はできますが、左辺黒への響きが弱いので恐らくそちらではないでしょう。

両者の様子見の応酬により、碁が動き出しました。
2日目は戦いになるかもしれませんし、じっくりしたヨセ勝負になる可能性もあります。
展開は全く予想が付きません。
明日を楽しみに待ちたいと思います。

明日の対局の模様も午前9時から、本日同様幽玄の間ニコニコ生放送でご覧頂けます。
ぜひご覧ください!