白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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日中韓新鋭対抗戦

2016年10月25日 23時50分00秒 | 幽玄の間
皆様こんばんは。
昨日今日と、日中韓の新鋭対抗戦が行われました。
中国代表は李欽誠九段、韓国代表は申眞諝六段という、両者既に世界で活躍している若手棋士です。
日本代表の一力七段としては、どちらかと言えば挑戦する立場でしたが、見事李九段に白星を挙げました。
その対局をご紹介しましょう。
なお、この対局は幽玄の間にて中継されました。
過去の中継棋譜は、幽玄の間ホームページからご覧頂けます。



1図(実戦白12~白20)
右上白1のツケは、例のアレです(笑)。
李九段はおとなしく黒6まで受けました。





2図(実戦黒21~黒27)
左上黒1以下は、定石のようなものです。
黒としては、隅と上辺を両方打つ狙いですね。
次に黒Aからの出切りがあるので、白は何か守りが必要です。
白Bと打つ棋士が多いと思いますが・・・。
(白Bにあると、黒Aから出切ってきても取れます)





3図(実戦白28)
実戦は、白1のカケ!
こういう思い切った手は、プロにはなかなか打てません。
かなり隙間が空いているので、黒にどう反撃されるか分からないからです。
しかし一力七段は、やって行きました。
行けるかどうか微妙な時は、大体行く方を選ぶのが一力七段です。





4図(実戦黒41)
黒は当然反撃しましたが、白△まで黒2子を制しました。
形勢はまだこれからですが、一力七段の主張が通った形でしょう。
黒1から、新たな戦いが始まりますが・・・。





5図(実戦白50)
ここでも凄い手が出ました。
白1の両ノゾキ!
どちらかに出て黒を切ろうという手ですが、白の形も悪くなってしまう事が欠点です。
アマの方が打つと、筋が悪いと言われてしまう事が多いですね。
しかし一力七段、左上の勢力と自身の読みを頼りに、やって行きました。





6図(実戦黒51~白62)
中の黒3子を切り離し、白12と隅の守りにも回ります。
白、目一杯の頑張りです。





7図(実戦黒69~白72)
結果、白△と中央を取り込んでは成功です。
左下の白が心配ですが、生きを読み切っています。
ここでも白の主張が通りました。





8図(実戦黒81~黒83)
その後、黒は△の絶好点に回りましたが、白△もまた絶好点です。
白優勢は明らかでしょう。
黒1、3と踏み込んだ手は勝負手です。
こんなに深々と来られては、怒りたくなりますが・・・。





9図(実戦白84~白94)
しかし、ここでは一力七段、一転して冷静な打ち回しを見せました。
左辺の白地をがっちり確保し、白11まで右辺を固めて十分とみています。





10図(実戦白128)
その後、白△からヨセに入りますが、もう白の勝ちは動きません。
正確に形勢判断ができていたのでしょう。
一力七段は勝ち方も非常に上手いのです。

李九段との碁もそうでしたが、一力七段の腕力が世界でも通用する事を証明したと思います。
申六段には連敗でしたが、力を上手く封じられたのが敗因でしょうか。
次の機会には、ぜひ雪辱を果たして欲しいですね。

さて、明日からはいよいよ、第41期名人戦第6局ですね!
名人位の行方がどうなるのか、対局者でもない私が今からドキドキしています。
皆様も、お楽しみに!