白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

激戦(安斎七段ー趙善津九段戦)

2016年10月22日 23時48分06秒 | 幽玄の間
皆様こんばんは。
本日は有楽町囲碁センターで指導碁を行いました。
お越し頂いた方々、ありがとうございました。
皆様との対局では、講座向けの場面もあり、後日ご紹介する予定です。

さて、本日は幽玄の間で中継された対局をご紹介します。
安斎伸彰七段(黒)対趙善津九段戦です。

安斎七段の碁は、当ブログ初登場ですね。←一週間前にご紹介していました。
安斎七段の碁の印象は、一言で言えばごりごりです。(本人に怒られそう・・・)
読みを非常に重視しており、少々形が崩れようと、どんどん仕掛けて行きます。
その結果、生きるか死ぬかの勝負になる事も多いのですが、そこが魅力でしょうか。
本局も序盤から終盤まで、延々と戦いが続きました。



1図(実戦白8~黒13)
白1といきなりシマリの腹にツケる手が、最近流行しています。
そのあたりの事情については、張栩九段が週間碁で解説しているので、そちらをご覧ください。





2図(実戦白14~白22)
ところが実戦は、週間碁にも書いていない変化に・・・。
昨日の天元戦のように、碁には色々な打ち方があるのです。





3図(実戦白32)
その後、白△と黒模様を消しに来た場面です。
皆様なら、どう打たれますか?





4図(変化図)
恐らく、99%の方は黒1と受ける事を考えられるでしょう。
左右がしっかり繋がるので、決して悪い手ではありません。
級位者~三、四段の方が打つなら、むしろ最善手と言っても良いでしょう。

しかし、プロは白4までの進行に違和感を覚えます。
その原因は右上にあります。
黒は白に隅を譲り、黒△の勢力を築きましたが、これがどう生きるのか見えて来ないのです。
勢力は戦いに生かすのが一番なのですが、上辺の白はゆとりのある姿なので、厳しく攻められません。





5図(実戦黒33~黒37)
という訳で、実戦は黒1から白に攻めかかりました。
右上の勢力を生かした先制攻撃です。
この後白Aには黒Bと渡っておき、安全を確保しながら攻める予定でしょう。





6図(変化図)
ところが、実戦は白1と打ちました。
黒2なら、それから白3と繋ぐつもりでしょう。
白1の効果で、この後黒Aと打っても、白Bで繋がりません。
つまり場合によっては、右上黒を逆に攻める狙いが生じます。





7図(実戦白38~黒43)
白の思い通りにはさせたくないので、実戦は白1に受けず、黒2と中央を止めました。
当然白3と連打しますが、黒4、6と強襲!





8図(変化図)
ここで白1、3と繋げば、黒4から左上にモタレて行く予定でしょう。
黒10までとなれば、白危険です。





9図(実戦白44~白46)
実戦は白が危険を察知し、白1、3と変化しました。
黒△を飲み込む狙いです。





10図(実戦黒47~黒53)
勢い、黒は右側の白を取りに行きました。
黒7まで、振り替わりです。
この分かれ、一見すると沢山取った黒が有利に見えますね。
私も最初そう感じましたが、しかし考えてみれば、元々黒の勢力圏だった所です。
白はそこでの苦しい戦いを早々に切り上げ、白8の大場に回っています。
実際は白がうまく立ち回ったのかもしれません。

ただ、白を取り込んだ事で、右上の黒はさらに強くなりました。
その強さを生かすべく黒Aと打ち込んで、ここから戦いが延々と続きます。





11図(終局図)
ちなみにこれが終局図です。
前図からこうなるとは、想像できませんね。
双方の生死がかかった派手な戦いなので、ぜひ幽玄の間でご覧ください!
コメント
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