遺伝屋ブログ

酒とカメラとアウトドアの好きな大学研究者です。遺伝学で飯食ってます(最近ちょっと生化学教えてます)。

iPS細胞、もういらねぇの?

2011-01-31 21:39:11 | BIONEWS
iPS経由せず心筋細胞=マウスで直接作製?米研究所など(時事通信) - goo ニュース
ええっと・・・iPS細胞っていうのは、induced Pluripotent Stem Cellのこと・・・って、これだけじゃ説明したことにならんねぇ・・・。山中先生は24の候補遺伝子の中から選択した4つの遺伝子をウィルスベクターで導入することで、通常の体細胞をどんな細胞にも分化できる胚性幹細胞のような万能細胞に出来ることを発見しました。もちろん当時、同様の研究は他国でもされていて、最初の競争には勝ったわけです。それだけでも素晴らしいことなんですけどね。
分化させる実験で心筋細胞を作製したのは、実験の成功失敗を判断しやすいってとこが理由と想像してます(オリジナルのペーパーは読んでないんよ)。心筋を作らせると本当にシャーレでどっくんどっくん拍動する細胞ができちゃうんよね。
さて、この記事はiPS化をスキップして遺伝子の導入によって目的の細胞を作ってしまう技術がScripps研究所とカリフォルニア大によって開発されたとのことです。細胞を操作するステップは少ない方が医療で使う分には優れているといえます。この方法でどんな細胞でも作れるのかはどうなんか知りませんが、優れた方法がひとつ増えたわけです。こうやって出来た細胞の癌化リスクがどれほどかは問題として残るかもしれません。僕自身は幹細胞の持つ『可塑性』の問題を研究する端緒になるかなと想像したりしてますが、そういう基礎的な研究テーマは置いていかれるんでしょうかねぇ・・・。
Scrippsというのは、サンディエゴ郊外のLa Jolla (ラ・ホヤ:スペイン語で発音します)という高給住宅街というかリゾート地にある研究所です。研究所の裏はPGAツアー公式戦が行われるトーリーパインズ・ゴルフクラブ♪ もちろん、Scrippsがぽつんとそこにあるだけじゃなくて、Salk研究所やカリフォルニア大サンディエゴ校等の米国でもトップクラスの研究教育施設が近所にあってアカデミッククラスターを作っています。Scrippsは研究所を名乗ってますが、博士号がとれますので大学院大学と考えた方が良いでしょう。僕がダラス市のテキサス大で働いていたとき大学時代の同期がScrippsに留学してきてて、彼の住んでたLa Jollaに行ったことがあります。あの時は他の用事がサンディエゴ市であったため、Scrippsを訪問することは出来ませんでした。今思えば、もったいなかったっす。

本日のお酒:FAISAN RESERVA PRIVADA TANNAT CABERNET 2009
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