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一法学生の記録

2014年4月に慶應大学通信部に進んだ法学生の記録である
(更新)2017年4月に神戸大学法科大学院へ進学しました。

議員の不逮捕権について。

2015-06-15 12:29:04 | 憲法(J)
議員の不逮捕権について。

偶々、ニュースを見ていたら、派遣労働法の改正にあたって、自公と維新が修正協議に応じ、同法の改正が議会を通過する見込みとなったことに呼応して、野党民主党の議員数十名による議場前でのバリケードのことが、報道されていた。どうやら、この民主党議員のバリケードは議長の議場への入室を阻むことを直接の手段として、議会での審議の開始を妨害する行為であるが、この議員による実力の行使について、一部の報道においては、「それでも、不逮捕権か」と言う見出しが、見受けられた。記事の詳細については、目を通していないので分らない。さて、議員の不逮捕権について、興味深い点があったので、記しておきたい。今回の騒動において、議長は民主党議員の妨害行為によって、もみくちゃにされたのであるが、その際に、議長は負傷を負って、自らの携帯電話を紛失したと主張しているようである。抑々、議員の不逮捕権とは国会の会期中に、院外における議員の逮捕については、議員は現行犯による逮捕のほか、院による許諾がない場合には、逮捕されないというものである。このことにより、立法権に対する行政権のみだりな行使を防がせる目的を持っている。これに対して、院内には行政権が及ばず、議員による不法行為が発生した場合には、議員内の警察権は、議長によって行使されることになっている。実際には、議長の命令のもと、衛視または警察官が犯人を逮捕する。このことの理由は、三権分立における、立法府自身の自律性と自主性を尊重することに原因する。すなわち、院内における議員の不法行為については、立法府たる両議院の院議により、これを判断することは、議会の独立を対面と独立を保つために、有される権利である。しからば、今回の件は、事件の当事者が民主党議員と衆議院の議長との間に発生しており、当事者の一方である議長は、被害者たる当事者であると同時に、院内における警察権の行使を発動する地位である。この場合に、議長が民主党議員の実力の行使について、違法行為があるとして、警察権することができるのであろうか。あるいは、懲戒にあたる行為があるとした場合には、院内ではいかなる手続きで処分されるのであろうか、見ものである。

以上。

シビリアン・コントロールとは、

2015-06-08 19:15:42 | 憲法(J)
シビリアン・コントロールとは、

明治憲法下において、陸軍大臣および海軍大臣は陸軍統制令および海軍統制令によって、現役武官大臣制が採られていた。このことが、軍部の政治支配に大きな役割を果たしたことから、日本国憲法は第66条第一項において、軍人の内閣総理大臣および国務大臣の就任を禁止している。だが、憲法9条は、抑々「陸空海軍は保持しない、交戦権はこれを認めない」と言っているのだから、日本には軍部が存在しないことになる。このため、日本国民がすべてシビリアン(非軍人)となり、この規定は意味をなさないことになる。ちなみに、シビリアンコントロールについて付言すれば、第一に政府の首脳は文民でなければならないこと(文民統制)、第二に戦争の開始および終了の決定、軍隊の編成権・予算権などを議会の権限とすること、第三に、軍人の犯罪を特別に処理する軍法会議の禁止があげられよう。だが、時代的変化によって、自衛隊が現に存在することに着目をしたときに、自衛官が武官であることを認めることは、憲法9条の問題とは別に論じられるようである。

以上。

行政の独立委員会に関して。

2015-06-08 19:15:04 | 憲法(J)
行政の独立委員会に関して。

行政の独立委員会とは、行政府から独立性の高い組織のことをいう。例えば、国家公安員会や公正取引委員会、中央労働委員会や、司法試験管理委員会などを言う。これらは、総理府の外局として位置づけられ、それぞれが、一定の法律に基づく執行機関であり、たとえば公正取引委員会に置ける、審判の機能や、中央労働委員会による斡旋の機能、司法試験管理委員会における判定の機能は、準司法的機能とも位置付けられ、三権分立にあって特殊の地位を占めている。しかしながら、独立委員会とはいえ、委員の人選は内閣の推薦により国会の承認を要することなど、あくまでも内閣の外局機関として位置づけられているのは、憲法が規定する議院内閣制のもとで、行政権は内閣に属し、内閣は国会に責任を負うとする制度を、担保するものである。すなわち、いかなる独立的な性質を有するにせよ、法律を執行する機関である行政府の責任は、最終的には内閣が負うことは、擬制であるにせよ、憲法が要請する三権分立を全うするためには、必要なことなのである。すなわち、議院内閣制とは、国会に議席を有する国務大臣が半数以上を占める内閣のことを指し、内閣に行政府のあらゆる責任を集中させて、国会に対して責任を負うような形を取ることによって、国民代表議会たる国会にたいして責任を負うということは、国民に対して責任を取る体制をあらゆる面で徹底するために、いかなる行政機関であっても内閣の外部機関であることによって、成り立つのである。独立行政員会は、一見して、国民の各層の専門家が独立的に組織することによって、より民主的な形態の一つとして評価されることもあるが、それは、あくまでも内閣府の外局であることによって、国民の信任を受けた国会議員が責任を取る体制を維持できるのである。

以上。

国会議員の選挙区の定員と選挙人の不均衡について

2015-05-31 22:30:17 | 憲法(J)
国会議員の選挙区の定員と選挙人の不均衡について

公選議員の選挙における一票の価値の不均衡の問題は、憲法の発布いらい、長らく続いてきた問題である。すなわち、公職選挙法によれば、衆議院は全国128の選挙区に3~5名の定員が設けられており、その割り当てについては同法別表第一に記されているが、人口異動が生じた場合に、各選挙区の被選挙人の定員と選挙人あるいは人口の比率が不均衡になった場合には、選挙区に毎に一票の格差が生じるから、これを是正するために、衆議院においては国勢調査の結果に基づいて、選挙区の設定および定員の更正を5年に一度実施することを例とすると定められているが、これが実際には人口異動が生じているにもかかわらず、更正が実施されていないため、このことが憲法一四条に規定する平等原則および第四四条の平等選挙の原則に、違反するのではないかと言う問題である。過去の判例から、一選挙区の被選挙人に対する選挙人の比率が、全国の選挙区の間で1.3以上になった場合には、違憲判決も出ている。しかしながら、行政法の「事情判決」の法理すなわち、とある行政措置が裁判所によって違反行為であると認定された場合に、直ちに裁判所の判決に従い、その行政行為を停止した場合に、公益に対する著しい不利益を生じる場合には、違憲あるいは違法の認められる判決であったとしても、当該行政行為の停止を保留できる法理を援用して、裁判所によって一票の格差が違憲と判断された、当該選挙については、行政運営上多大なる影響を国民に及ぼすことを鑑みて、有効であると判示ているのである。そのような経緯は、一度ならず数度にわたっている。しかしながら、裁判所には、かりに選挙区における定員の不均衡が格段の度合いをまし、すでに違憲判決を下した選挙について、立法府による立法措置が取られない場合に、裁判所は当該選挙について無効の判決を下したとしても、その判決に従って立法府が直ちに選挙のやり直しを行わなかった場合には、裁判所はいかなる対応をするべきであるのか、三権分立の関係において、如何なる立場を取り得るのかと言う問題は、暗に残されたままなのである。

以上。