21.連帯債務者間の求償権がどのような場合に生じるか、及び、その行使の手続き等について、条文を参照しながら説明することができる。
二)内部関係
㋐求償権の存在
〔442①〕連帯債務者の一人が弁済その他財産の出捐をして善債務者の共同の免責を得たときは、当然他の債務者に負担部分に応じた求償をすることができる
根拠)連帯債務は主観的結合関係〔協力関係〕にあるから
注意)負担部分は負担金額ではなく、負担割合である。
EX)AがDに300万弁済した。3000÷300=10%。負担部分1000×10%は、100万なので、BCに100万ずつ請求。尚、Dの債権は2700に縮減するから、ABCに各個全額を請求する。
㋑求償権の制限
〔443①〕自分が弁済することを他の債権者に知らせずに弁済すると他の債務者に不利益が及ぶことがある。
EX)債権者に対する抗弁権を失う
EX)知らずに二重払いをする
S)弁済の事前と事後に通知義務を課し、その通知を怠って他の債務者に不利益を与えたときは求償権を制限することにした
1⃣事前の通知を怠ったケース
AがBCに通報せず3000万返済した。Cは予め300万の反対債権を回収すべく考えていたが、Aのために機会を失った。Aは本来1000万ずつCBに求償できるはずだが、この場合にはCに対しては、1000万−300万の700万しか求償できない(これにより、Cは反対債権を行使したことになる)。従って、Aは不足する300万はDに対して請求するほかなくなる。
2⃣事後に通知を怠ったケース
①AはDに3000万弁済した(通知せず)
②CはDに3000万弁済した(通知して)
①AのBCへの求償は無効
②CのABへの求償は有効
So)AはCへ1000万支払う(合計4000万の出捐)。
AはDに対して3000万の請求(Dは3000万の不当利得となる)するほかない
3⃣Aは事前・事後の通知を怠り、Cも事前通知を怠った。
〔443〕は過失ある第二弁済者までも保護する趣旨ではないから、この場合は原則に戻り、第一弁済を友好トス。
⇒CはDに対し、不当利得請求の問題が残る
㋒無資力者がある場合の求償
〔444〕連帯債務者の中に無資力者がいるとき、求償者(弁済者)と他の資力がある連帯債務者が、それらの負担部分に応じて負担する。
EX)Bが無資力であるとき、ACの負担部分は1000⇒1500となる。
WHY)債権者に対する信用力を保持するため
※AのCに対する求償に過失があった時は、AはBの負担部分の全部負担をする。
EX)Aの求償が遅れたため、Bが無資力になったなど。Aの負担部分は1000⇒2000;Cは1000のまま。
なお)負担部分〇の者が加わることもできる。
㋓連帯の免除と無資力者が有る場合の求償
「連帯の免除」とは??
債権者が、連帯債務者に対し、自己の負担部分を超えて請求しないと、意思表示するもの
効果)連帯債務の「連帯」の要素を無にする
⇒①連帯債務者全員に申せば、各債務者の債務は分割債務となる
So)求償関係も無くなる(絶対的連帯免除)
⇒②一部の連帯債務者にこれを申せは、免除を受けたものは分割債務者となり、他の者は以前として元の債務全額について連帯債務を負担し、求償関係が残る(相対的連帯免除)
(発展問題)AがDから、連帯免除を受け、Bが無資力になった場合。先ず、Aの債務は分割債務となり、自己の負担部分1000万を独立して弁済すればよい。次に、Bの負担部分は、本来ACに500万ずつ負担として分配されるが、内Aの負担部分に加算される500万はDが負担することとなる。従って、Cは1500万の負担部分を負うが、3000万の全額について、請求を負う。
第三節 保証債務
22.保証とはどのようなものであり、どのような場合に保証債務が生じるかを説明することができる。
保証は、人的担保の代表である。
債務者が債権者に負う債務の弁済を担保するため、保証人が債権者に負う債務を保証債務という(⇔身元保証)。
【発生要件】
①保証契約
保証契約は、債権者Zと保証人Bとの間の保証契約によって生じる
※多くの場合、Bは債務者Aに頼まれるだろうが、AB間の保証委託契約が有ってもなくても、ZB間の保証契約には関係ない
So)AB間の契約の内容は、BZ間の保証内容に影響しない
So)Aから「ほかにも保証人CDがいるから」と言われて保証人になったとしても、保証契約の要素の錯誤により無効にすることはできない
How)保証人は無償で一方的に債務の負担を負うので、その契約は書面によるべし〔446②〕(要式契約)
And)〔446③〕電磁的記録でもOK
②保証人の資格
一般に、保証人となるのに何らの資格を要しない
※主たる債ム者が㋑法律の規定や、㋺債権者との契約により、保証人を立てる義務を負っているときは、
α)行為能力を有し、β)弁済の資力を有する者、を立てねばならぬ〔450①〕
〔450②〕弁済の資力を有しなければならない保証人が、無資力になったときは、債権者は、代わりの保証人を立てるように請求できる
※債権者から指名した保証人であるときは、立てなくてよい
③主たる債務の存在
主たる債務が不成立・消滅しているとき、保証債務も成立しない(=付従性)
And)主たる債務者が制限行為能力者であるときも、保証契約は有効だが、主たる債務を発生させた契約の意思表示が制限行為能力を理由に取消されたとき、保証契約も消滅する。※主たる債務に債務者の無能力を理由とする取消原因があることを保証人が予め知っていたとき、保証人は主たる債務が取り消されても、「同一の目的を有する独立の債務」を負担したものと推定される〔449〕。
WHY)取消承知で契約したものと推定する
But)保証人がそこまで認識できたか?
So)反証可能
なお)同規定は、無能力を問題としており、詐欺・強迫には推定は及ばない
23.保証債務の附従性及び随伴性とはどのような性質を指すのかを、その具体的効果を含めて、説明することができる。
性質(㋑独立債務性、㋺付従性、㋩随伴性、㋥補充性)
㋑保証債務は、主たる債務とは独立の債務である。
So)保証債務は債権者Zと保証人Bとの契約で成立する
㋺保証債務は主たる債務に付き従う性質を有する
Mean)主たる債務の存在が前提となる(成立・存在の附従性)
Mean)保証債務は主たる債務より軽くてもよいが重くできない
EX)主債務500万で保証債務600万のとき、500万まで縮減される〔448〕
※保証人が保証債務について、違約金の約束をすることは妨げない
WHY)債務の内容を重くするものではなく、保証債務の履行を確実にするものだから
㋩保証債務は、担保の一種だから、債権譲渡などで債権者が変わっても、債権に随伴し新しい債権者のところへ移る
⇔債務者が後退する債務引受けのとき、保証人が特に同意しないかぎり、随伴しない。
WHY)保証人にとって債務者が誰かと言うことは、切実な問題であるから
㋥〔446①〕保証人は、主たる債務者がその債務を履行しない時に(初めて)履行の責二任ズ。
⇒二つの抗弁
α)催告の抗弁
債務者の請求に対し、先に主たる債務者に請求してくれ、といえる
β)検索の抗弁
債務者が強制執行したとき、主たる債務者に執行すべき財産があるから、先に主たる債務者に執行を掛けてくれ、といえる
⇔連帯保証人にはこの補充性が無い。
So)本人より先に請求を受ければ、支払うへし
【保証債務の効力】
①債権者・保証人間の効力(対外効力)
a)保証債務の内容
保証債務の内容は、当事者の特約が無ければ、①付従性と、②保証契約の内容によって、決する
Ex)主たる債務100万/保証債務100万 ※特約無し
⇒保証範囲は、
㋑主債務
㋺利子
㋩違約金
㋥損害賠償〔447①〕
尚)保証債務は金銭債務だけに成立するのではない
Ex)売主の目的物引渡し債務
If)品物に瑕疵があり、代金を受領後に解約されたとき、売主には解除による原状回復義務が生じる(=代金を返す)
When)売主が代金を返さなければ、保証人に返還義務が生じる
A)保証人の抗弁
保証人の抗弁は保証契約の補充性から導かれる
α)催告の抗弁
β)検索の抗弁
⇔連帯保証人には与えられない抗弁
〔452〕債権者がまず保証人に対して履行を請求してきたとき、先に主たる債務者に請求してくれと言える権利
※主債務者が破産宣告、行方不明のときは行使できない
〔453〕債権さhが先に保証人の財産に強制執行をしかけてきたら、保証人は、①主債務者に弁済の資力が有り、②執行の容易であることを証明し、まず、主債務者の財産に対して執行すへきことを主張できる
Mean)執行の容易
一般論として、主債務者の財産が金銭や有価証券の形で存在すれば、執行は容易である(不動産は?)
B)主債務者の債権者に対する抗弁の援用
保証契約の附従性から、保証人は、主債務者の債権者に対する抗弁を援用できる
Ex)同時履行の抗弁〔533〕
Ex)消滅時効の援用
CASE:主債務者が時効利益を放棄しても無関係である
〇相殺の抗弁
主たる債務者が債権者に有する反対債権は、保証人がこれを債権者に相殺の主張をすることができる
Why)当事者間の求償関係の簡略化(∻連帯債務)
What)主債務者の取消権(詐欺・未成年など)を保証人が行使しうるか?
CASE:保証人は〔120〕取消権者に当たらない(←学説は批判的)
24.保証人の求償権がどのような場合に生じるか、及びその行使の手続きなどについて、条文を参照しながら説明することができる。
【保証債務の効力】
主債務者⇔保証人(影響関係)
α)主債務者に生じた事情はすべて付従性により保証人にも生じる〔457〕
β)保証人に生じた事由は、弁済その他の債務を消滅させるものを除いて、原則として、主債務者に影響しない
Ex)保証人が債務を承認して時効が中断しても、主債務者の時効は中断しない(⇔主債務者の時効が中断すれば保証人の事項も中断する)
■保証人の求償権 保証人が主債務者に代わって弁済すれば、保証人は主債務者に求償できる
保証人には、㋑主債務者に頼まれる保証人㋺主債務者に頼まれない保証人、がある。
㋑委託を受けた保証人の求償権
〔459①〕保証人は弁済などの出捐行為の後で、主たる債務者に求償できる
範囲)A)弁済額、B)利子、C)費用、D)損害賠償(∻連帯債務の規定を準用)
弁済する事前と事後に主債務者に通知しなければ、求償権が制限されることがある(∻連帯債務の準用)
So)委託を受けた保証人は、事前求償権(出捐行為の前に求償できる制度)がある。
α)保証人が過失なく債権者へ弁済するよう判決の言い渡しを受けたとき〔459①〕、
β)主債務者が破産手続きを開始し、かつ、債権者がその財団の配当に加入しないとき〔460〕
※保証人の事前求償権に対し、主債務者が無条件に従う義務はない
Why)事前求償に応じても、保証人が債権者に弁済してくれるかどうかわからない
対策⇒〔461①〕債務者が保証人に担保の提供を求めることができる
〔461②〕保証人に対し償還すべき金額を供託する
㋺委託を受けない保証人の求償権
×事前求償権なし
△事後求償権あり ※制限付き
1⃣委託を受けないが、保証人となったことが主債務者の意思に反しないとき
(=たとえば、債務者は何とも言っていないが、債権者が保証人を付けたケース)
⇒保証人の「出捐行為の当時」に主債務者が利益を受けた程度で求償できる
(∻事務管理…頼まれないのに他人のためにした行為は、それが他人の利益になっているなら、報酬はもらえないがかかった費用は返してもらえる)
So)利息、費用、賠償費用は求償権に含まれない〔462①〕
2⃣保証人になったことが、主債務者の意思に反するとき
(=たとえば、債務者は自分で返せるから保証人は要らないと言っているのに、どうしても就いたとき)
⇒保証人の「求償の時」に主債務者が利益を受ける限度で、求償し得る。
25.連帯保証と普通保証の違いを説明することができる。
連帯保証とは、保証人が主債務者と連帯して債務を負担する特約のある保証
So)連帯保証人は、主たる債務者と連帯するものである(⇔保証連帯:複数の保証人が連帯する共同保証のこと)
◎連帯債務には、㋑付従性が有るが、㋺補充性が無い(⇔普通保証)
Why)㋑連帯債務も保証債務の一種なので、共通して付従性は有る
㋺保証人が主債務者と連帯しているから、補充性が氷解する
Mean)連帯保証人は補欠要員ではないので、主債務者が資力の有無にかかわらず、直ちに、債権者は連帯保証人に債権全額の請求を為し得る
So)債権担保の効力の大きい連帯保証は、今日の典型的な人的保証である。
【効力】
㋐債権者⇔連帯保証人(対外的効力)
債権者が債務者に対する権利は、大よそ連帯保証人にも妥当する。
尚)複数の連帯保証人がいるときもそれぞれが、全額の賠償責任を負う(⇔保証連帯:分別の利益)
㋑主たる債務者⇔連帯保証人(影響関係)
(∻連帯債務の規定を準用 ※保証債務の基本的性質にもとづく制限ある)
α)主たる債務者に生じた事由の効力はすべて連帯保証人に生じる
Basis)債権の附従性
β)連帯保証人に生じた事由は、負担部分を前提とする規定を除き、連帯債務の規定に従う
Why)保証人には負担部分がないので、その準用の余地なし
Ex)連帯保証人が弁済すれば、主たる債務者に全額賠償できるが、主たる債務者は賠償するのが当たり前なので連帯保証人に求償できない=負担部分無し
∻〔434〕履行の請求の準用
Mean)連帯保証人への履行の請求は、主債務者に効力を及ぼす
※その他の通知などは相対的効力しかもたない
㋒連帯保証人⇔主たる債務者(求償関係)
=普通保証
«連帯債務VS連帯保証»
全員を直接債務者とする連帯債務の方が有利な気もするが、連帯保証の方が有利である、
Why)債権の効力は両者でほぼ変わらないが、債権の維持管理は連帯保証の方が楽
前提:連帯保証も一種の債権債務の関係なので、時効にかかる
Ex)連帯債務ならば、債務者の一人に時効が完成すると、他の債務者の負担が減る
⇔)連帯保証人の時効の完成(?)は、主債務者の債務には影響しない
Ex)債権譲渡の時も、連帯債務ならば、債権者は、債務者全員に通知しなければならぬ。
⇔)連帯保証なら主債務者のみに通知すれば足る
Mean)債権者は、連帯債務では、債務者全体を常に相手にしなければならないが、連帯保証では、主債務者を相手にしておけばよい
第四章 債権の譲渡、債務の引受
第一節 債権譲渡
26.債権の譲渡とはどのような制度であり、どのような場合に債権譲渡が行われるかを説明することができる。
【債権譲渡とは】
債権譲渡とは、債権を、その同一性を変じることなく、第三者に移転することで、譲渡人と譲受人との契約によってなされる。
※債権譲渡は、契約による債権の移転などで、相続や会社の合併による移転は、含まない。
∻)契約による債権の移転であっても、債権者の変更による更改〔515〕は、旧債権が(いったん)消滅するので、含まない。
①機能(指名債権:特定人の特定人に対する債権…民法の中心⇔有価証券:商法の中心)
㋑ある債権を弁済期前に売却して金銭を入手するために行われる
Ex)来月にならないと支払われない100万の債権を、今現金化するため、98万で売却する
㋺手元に資金が無いので弁済に供す
㋩金融を受ける担保のために譲渡する
27.債権の譲渡可能性(将来発生すべき債権の譲渡可能性・包括的な債権譲渡の可能性を含む)とその例外(譲渡禁止特約を含む)について、説明することができる。
【債権の譲渡可能性(制限について)】
〔466①〕債権は譲渡すことができる。しかし、その性質がこれを許さないときは、その限りではない。
債権の譲渡性とは、譲渡人(原債権者)が譲受人(新債権者)との合意のみによって、譲渡できること。
なお)債務者の合意は不要である。
But)譲渡制限あり(⇔物権)
※①債権の性質による制限
Ex)ヘルパーに介護させる債権(誰のための介護かが重要)
=債務者(ヘルパーさんの同意が必要)
Ex)賃貸借
=誰が借りるか、大家さん(債務者)の同意が必要
Why)人的特定性が重要
※②当事者意思による制限(譲渡禁止特約)
㋐総説
〔466②〕当事者が反対の意思を表示したときは、適用しない。但し、その意思表示は、善意の第三者に対抗できない。
Mean)債権者と債務者の間で譲渡禁止の特約をしたときは、譲渡性を失う。
Ex)銀行預金契約
Why)金融機関の事務の煩雑を避けるため(安全な預金管理)
融資の担保確保のため
But)〔466②但〕善意の第三者に対抗できない
Mean)禁止特約に拘わらず債権譲渡したとき、その特約の存在を知らずに譲り受けた第三者は、債権を有効に取得する。
Case)善意及び無重過失を要求する
㋑譲渡禁止の効力
What)このような禁止特約のあることを知って譲り受けたとき、譲渡の効力はどうなる??
⇒物権的効力説
特約は、当該譲渡の効力を物権的に奪うもので、当事者間のみならず、譲渡人(第三者)との関係でも、無効となる。
⇔〔少数説〕譲渡禁止特約の効力は、基本的に当事者間で第三者に及ばず。
但し)債務者(銀行)は悪意の譲渡人に対し、㋑譲受無効の主張、㋺悪意の抗弁、をなしうる(債権的効力説)。
㋒譲渡禁止特約の解除(=債務者の承諾)
譲渡禁止特約を付した債権が悪意者に譲渡されたときも、特約の当事者で不利な立場にある債務者が、譲渡に承諾を与える(=譲渡禁止特約を解く意思表示)ならば、譲渡は有効となる。
なお)債権譲渡の対抗要件としてなされた承諾であっても差し支え無し
What)有効とは??
物権的無効とは、絶対的無効
(禁止特約があるが)債務者が譲渡に承諾を与えたとき、そのときから有効な譲渡になる〔119〕
Case)譲渡時に遡って有効とする。但し、〔116(無権代理行為の追認)〕の法意に照らして、第三者の権利を害せない。
Mean)この第三者とは、譲渡人や譲受人ではない第三者(差押債権者等)
なお)譲渡禁止特約付きの債権ももちろん差押え可能
28.指名債権譲渡の対抗要件の構造・仕組み(動産債権譲渡特例法上の対抗要件を含めて、民法上及び特例法上の対抗要件の競合や対抗要件の同時具備の場合に生ずる問題などを含む)について、説明することができる。
【成立要件】両当事者の合意の意思表示
=譲渡自体は意思主義…〔176〕物権同様の取扱い
So)契約書の作成、証書の引渡し、はいずれも譲渡の成立要件ではない
Mean)譲渡は、契約成立時(合意のとき)に発生する
【対抗要件】
①対抗要件主義の採用
②その特殊性
〔467②〕確定日付のある証書による債務者への通知又は承諾が対抗要件である(対第三者)
※〔467①〕債務者に対する関係のみならば、それらを確定日付による証書による必要なし(無方式の通知か承諾があればよい)
So)「債務者その他の第三者に対抗することができない」となっているが、第三者は専ら〔467②〕が当てはまるので、確定日付証書が必要である。
(整理)
㋐債権譲渡の成立は、債務者抜きにしてできるとはいえ、その実現には、債務者の行為を通してする(履行)から、予め正式な通知が必要。
So)㋑債務者は、複数の第三者(その債権に参加したいもの)が行き着く「インフォメーションセンター」となる、「公示機能」を果たす役割がある。
But)㋒銀行などが債務者であれば守秘義務から債権の所在などは明らかにされないし、そもそも債務者に回答義務もない。
So)㋓債権譲渡の優劣決定機能を果たすための公示機関として、先後関係の証明力が有る、確定日付のある証書を要件とした。
③対抗要件の構成要素
㋐通知
AB間で債権譲渡契約が成立した。この事実を債務者Zに対し、通知するものである。
法的性質)観念の通知=準法律行為
Mean)あくまで「対抗要件」であり、債権の譲渡の効果とは無関係である
※この規定には、意思表示の規定が類推適用される(通説)
・〔97①〕到達したときに効力が生ず
・代理人によって通知ができる
※〔467①〕通知は譲渡人でなければならぬ
Why)譲渡人と詐称する虚偽の通知を防ぐため
㋑承諾
債権譲渡の存在を知ったという、観念の通知である(※異論:「意義を留めない意思表示」説)。
承諾の主体は債務者であるが、承諾の相手方は譲渡人・譲受人のどちらでもOK!
㋒確定日付
証書がその日に存在したことを完全を証明力によって証明するもの
〔民法施行規則〕
ⅰ)内容証明郵便〔通知〕
ⅱ)公証役場での確定日付の付与〔承諾〕
ⅲ)公証人の作成する公正証書の日付
ⅳ)裁判所の差押命令の送達日の日付
④債務者に対する対抗要件具備の効果
イ)〔467②〕確定日付のある証書
ロ)〔467①〕無方式の通知や承諾
とにかく対抗要件を具備すれば(債務者Zに対する対抗要件は確定日付が不要である)、譲受人Bはその日から債務者Zに対して債権の行使ができる
So)通知も承諾もない間は、すでに譲渡人・譲受人の間で有効な譲渡が成ったとしても、債務者Zは、譲受人Bからの弁済要求を拒むことができる。
And)当然、譲渡人に弁済すれば適法な弁済となる
また)通知が有った時も、債務者Zは、その通知到達までに旧債権に生じた抗弁事由(すでに一部弁済したなど)があれば、それをそのまま新債権者たる譲受人Bに対抗できる〔468②〕
Ex)そのた、イ)債権の消滅・不成立、ロ)相殺、など
中でも相殺についての抗弁に関して
α)反対債権の弁済期が相手のそれよりも早い
β)反対債権の弁済期が相手のそれよりも遅い
学説)βの場合には、相手方(譲受人)の債権が先に払われてしまう。そうすると、相殺の問題は生じないのでは?
⇒弁済期の先後を問わず、譲渡の通知到達までに反対債権を有していれば、相殺の抗弁が可能
〔468①〕承諾
㋑抗弁事由を留保しての承諾
通知と同様、承諾前の抗弁事由を譲受人に対して対抗できる
㋺無条件承諾(意義のとどめない承諾)
譲渡人に対抗し得た対抗事由を、譲受人には対抗できない。
⑤第三者に対する対抗要件具備の効果
〔467②〕確定日付のある証書による通知又は承諾を(他の譲受人等に先立って)得た譲受人は、その時点から債務者に権利主張し得るのはもちろん、債務者以外の第三者に対して、自分が債権者であると主張できる。
Mean)債務者以外の第三者とは??
譲渡された債権そのものについて両立し得ない法律的地位を取得した第三者
Ex)債権の二重譲渡人
債権を質に取った者
譲受人の債権者で譲渡債権を差押えて転付命令を得たもの
※それ以外の間接的に影響を受けるものは第三者に含まれない。
(=証書なく対抗できる)
Ex)譲受人が取得した債権とは別の債権を債務者に対して有する債権者。
⑥対抗要件の優劣決定基準
債権は二重三重に譲渡することがある
What)この時の優劣関係は??
第一基準 対抗要件具備の有無
第二基準 譲渡の先後
What)「通知」と「承諾」の優劣は??
(パターンX)
譲渡人Aが債務者Zに有する債権を、(順次)①無要式の通知でBに、②確定日付証書の様式でCに、通知をした場合、先後の違いに拘わらず②が勝つ。
Why)Bに対する無要式の通知は、債務者に対抗できても、第三者には無効である
So)競合するCが登場すれば、債務者Zに対しても、劣後することになる。
(パターンY)
譲渡人Aが債務者Zに有する債権を、無要式〔467①〕で、順次、BCに譲渡したとき、両者の順位はタイである!
So)そのあとに〔467②〕を得た方が勝者となる
または)対等の譲受人BCのいずれかの債権行使によって、いずれかの〔467②〕の取得前に、譲受人BCのいずれかに弁済がなされれば、闘いは終わる??
(パターンZ)
譲受人BCのいずれもが〔467②〕を具備したとき
⇒先後関係による
When)具備の時点
「債務者の正式の認識」が基準
So)債務者の確定日付のある承諾は、公証役場で確定日付を付けた日付で、間違いがない。
What)問題は通知である
Why)内容証明郵便の場合、通知の日付は郵便局の発信時となり、債務者の認識時とはズレがある。
判例)債務者への到達の時点
…確定日付は単なる添え物
∻)譲渡通知、差押通知、も同様に扱う
〘Point整理〙
1.債権譲渡の効力は、譲渡の先後は関係なく、対抗要件具備の先後が問題
2.〔467①〕の通知は、②通知があると実際には意味が無くなる
3.二重譲渡の優劣決定となる対抗要件のタイミングは、通知については、確定日付のある通知の到達時である
⑦対抗要件の衝突(通知の同時送達)
通知同時到達のときはどうすればよいか?
判例)二重譲受人は、両名とも債務者に対する関係では完全な債権者としての地位を得ているので、いずれもが債務者に対して全額の弁済を請求できる
How)債務者が速やかに紛争から逃れる方法?
⇒複数の通知が届いたがその先後が不明との理由で、債権者不確知として供託する
Why)供託は、債権消滅原因の一つであり、債務者は弁済したのと同様に、以後の責めを免れうる。
And)あとは、譲受人の法務局に対する供託金還付請求の問題となる
What)このとき、二重譲受人が互いに還付請求権を請求したときは?
判例)譲渡債権額に応じて按分すへし
29.債務者が、債権の譲受人に対してどのような場合にどのような事由を主張することができるかについて、異議をとどめない承諾の制度趣旨を含めて、具体例を挙げて説明することができる。
1⃣
〔468①〕債務者の意義を留めない承諾による抗弁の喪失
Mean)意義のとどめない承諾とは、債務者が承諾に際し
㋑その債権の不成立(=そんな借金存在しません)
㋺成立における瑕疵(=あの借金契約は無効でした)
㋩債権の消滅その他(=時効です、弁済しました)
⇒何らかの抗弁を譲渡人に対してゆうすることを留保しないで、単純にする承諾である
Mean)債権譲渡の対抗要件
①通知 一方的
②承諾 相対的
意義)本来、担保や抗弁事由は、債権に付随するものだが、〔468①〕は、無条件承諾したとき、それえお譲受人に対抗できないとした。
学説)「意思表示」か「観念の通知」か?
少数説:後者(公信説;譲受人の信頼を保護する規定都市、抗弁喪失は公信力によるもの)
多数説;前者(二重法定効果説)
Why)抗弁喪失は重大な効果であり、これを単なる観念通知に与えてよいのか?
承諾は、譲渡契約の後で為されることが多いので、譲渡時に公信の効力は存在しないではないか?
So)承諾は、積極的な意思的関与であり、異議をとどめぬ承諾(債権譲渡の内容を承諾した)は、
【第一効果】債務者に帰責性を生じさせ、その結果として、
【第二効果】譲受人が保護されるとする
判例)譲受人保護と取引の安全のため法律が付与した法律上の効果
2⃣
What)譲受人B保護と債務者Z保護のバランスとは?
債務者が意義を留めない承諾をしたために、譲渡人に対する抗弁事由を譲受人に対抗しえなくなったときの不利益は、譲渡人との間で調整が図られる
〔468①後〕
㋑債務者がその債務を消滅させるために譲受人に払渡したものがあるときは、これを取り戻すことが出来
㋺譲渡人に対して負担した債務があるときはこれを成立しなかったとみなすことができる
⇔不当利得の理論構成とは異なる
α)〔二重法定効果説〕債務者Zに帰責性を生じさせ、譲受人Bを保護する
⇒債務者Zに虚偽の意思表示がある(静的安全)
β)不適切な譲渡をした譲渡人Aを責めて、債務者Zを保護する
⇒譲受人に抗弁事由があることをしっかりと説明しなかった(動的安全)
3⃣
What)異議を留めない承諾の機能の範囲
異議を留めない承諾の抗弁喪失効果は、その譲受人と債務者の問題であり、対抗関係に影響しない
Mean)他に早く通知を到達させた者がいた場合には、最早債権者になれない(当然)
And)債務者に責めを負わせるものであるが、その及ぶ人的範囲も、その債務者に限られる
So)承諾前からの保証人に影響しない
第二節 債務引受
30.債務引受とはどのようなものであり、どのような類型があるか、また、それらがどのような場合に認められるかについて、説明することができる。
債務引受けとは、最も広い意味では、債務者の債務を他人が引き取る契約全般を指す。
①免責的債務引受け
②併存的(重畳的)債務引受け
③履行引き受け
共通)契約による債務移転であり、法律の規定による移転(相続、合併)などを含まない
①免責的債務引受けとは?
債務譲渡の裏返しで、債務が同一性を保って移転する契約である
⇔債務譲渡も同一性があるが、保証などの担保がそのまま移転するかどうかという点は異なる
Mean)債権者Aが原債務者Bに対する債権をそのまま新債務者Cに移転する行為
⇒原債権者Bは債権関係から離脱し、ACとの債権関係のみ残留する
注意)この契約では、債務者が入れ替わるから、債権の実現可能性に大きな影響がある
So)債権者は、原債務者と引受人に勝手な契約をさせない
【要件】
債務者の交代が債権者の利害に大きく影響するから、債権者はこの契約に関与する
A)三面契約は有効(債権者・債務者・引受人)
B)債権者・引受人の契約も有効
C)債務者・引受人の契約は有効とならず、
※債権者の同意の意思表示があれば、有効
【効果】
引受人は、引き受け当時原債務者が持っていた債権者への抗弁事由(一部弁済、同時履行の抗弁権など)の一切をそのまま引き継ぐ
※債務を引き継いだだけの者は、元の債権者と債務者の間の契約の当事者の資格を引き継ぐわけではないから、引き継いだ債務の元になっている契約を自分で解除したり、取消したりできない。
What)原債務についていた、人的、物的の担保はどうなるか?
α)原債務についていた保証人の保証債務は、保証人の同意がないかぎり、存続しない
β)原債務についていた抵当権などの約定担保物権は、物上保証人といい、原債務者B以外の人物が抵当不動産を提供していたりしたものは、保証人の債務と同様に考え、存続しない。
γ)原債務者自身が提供していた担保物は、所説分かれる。
㋑引き受け契約が、原債務者と引受人の間で行われたときは、存続
㋺債権者と引受人との間で行われたときは、消滅
②併存的(重畳的)債務引受けとは?
債務が引受人に引き取られる一方、原債務者も離脱しないという契約
Mean)債務者Bは、債務者であり続けながら、同一内容の債務をそのまま、引受人Cに負担させる
So)債務者が一人増えたことになり、債権の担保力は強化される
Mean)併存的(重畳的)債務引受けは、債権者に有利な契約である
⇔債権者の意思は、免責的債務引受けのように重視される必要ななし
【要件】
A)三面契約は有効
B)債権者・引受人の契約も有効
然も)債務者の意思に反してもよい
理屈)併存的債務引受けの実質的な機能は、保証と同様な債権の担保にあり、保証が主たる債務者の意思に反しても為し得ることとのバランス
⇔併存的債務引受けには、追従性がない点で保証と異なる
C)原債務者と引受人は有効
※このとき、債権者に引受人に対する債権を取得させるという利益を与える契約
(=第三のためにする契約となる)
So)①債権者のためにすることの明示の約定
②債権者の受益の意思表示〔537②〕
Ex)債権者が引受人Cに対して、請求するなど、債権者(受益人)の権利を行使すれば、受益の意思表示ありと解してよい
【効果】
What)債務者Bと引受人Cが同一の債務を負担するとは?二つの債務の関係は?
α)A/B間に主観的共同関係がある⇒連帯債務
β)そのような関係が無いとき⇒不真正連帯債務
また)引受人Cは、原債務者Bと同一の債務を負うのだから、引き受け当時に原債務者が持っていた、一切の抗弁事由をもって債権者に対抗し得るのは、当然。
=免責的債務引受け
なお)原債務者は、そのまま存続しているので、免責的債務引受けにおけるような、担保の消滅の問題は生じない
第五章 債権の消滅
第一節 弁済
1 弁済の当事者
31.債権者以外に債務の弁済をなすことができるのはどのような者であるかを、具体例を挙げて説明することができる。
弁済は本人が行う
32.第三者が債務を弁済した場合に、事後の法律関係(求償権の発生の有無、求償権の範囲など)がどうなるかを、具体例に即して説明することができる。
Ex)金銭の支払いなど、多くの債務は、第三者が弁済することが可能だ〔474①本〕
※性質上、第三者にできないものを除く
※当事者が、反対の意思を表示したときも、第三者弁済はできない
Mean)「第三者」
他人の債務を自己の名において弁済する者
(本人の代理人や履行補助者を含まない)
Ex)㋐友人の窮状を見かねて
㋑物上保証人の様に、自分の土地を他人の債務の担保に提供し、その他人が弁済できないとき、土地が競売されてしまうのを防ぐため、自分が他人に代わって弁済する
〔474②〕㋑タイプの様に、債務に「利害関係のある第三者」は、債務者の意思に反しても弁済ができるが、法的利害関係の無い第三者は、債務者の意思に反して、弁済できない
33.弁済を受領する権限を有しない者に対して弁済がなされた場合に、どのような法律関係が生ずるかを、具体例を挙げて説明することができる。
①弁済受領権とは
弁済は、弁済を受領する正当な権利を持つものに対してなされるへき
So)通常は債権者本人
※①債権者本人が破産手続き開始決定を受ける
⇒弁済受領権は制限
※②本人以外に弁済受領権者がいるとき
Ex)債権さ者の代理人、受領の委任を受けたもの
【効果】
弁済受領権の無い者への弁済は、弁済の効力は生じない(原則)
So)不当利得の受領者からとり返し、再度真正の受領権者に弁済スベシ
※違う人に弁済し、その人が正当な受領権者に私てくれてた時など、債権者が利益を受けたときは、その限度で有効な弁済となる〔479〕
②債権の準占有者に対する弁済
誰が見てもあの人が債権者だという外観を呈している人に弁済したときはどうなるか?
Ex)旧:債権者Aとその妻Cが死亡し、真正相続人である息子Bも死亡したとき、弟Cが表見相続人となり、村民はCが受領権者であることに疑いが無いとき、その弁済が、善意・無過失であれば、弁済が有効となる。
Mean)「善意」とは、単なる知・不知ではなく、真の権利者を信頼したことにつき、
今日)例外規定だったが、今日では、弁済者保護のための便法として、幅広く使われる
Ex)銀行預金の預金者以外への払い戻し
SO)わが国では、債権準占有者は緩やかに解する
Case)自分が代理人とだます詐称代理人から
③受領証書持持参人に対する弁済
〔480〕受取証書の持参人に対する善意・無過失の弁済を有効とする規定
C.F.〔478〕債権者本人らしい法的地位を持っているという人の外観に対して、本条は、弁済受領権限を証する紙に着目
So)受領証書(債権者名・債務者名の入った領収書)を持参した者にした弁済は、たとえ持参人がだれであっても、弁済受領権限のある者に対する弁済として有効
Mean)「真正」を要する
偽造証書の持参人には、適用されない
2 弁済の充当
34.弁済の充当とはどのような制度であるか、また、どのような順序で行われるかについて、条文を参照しながら説明することができる。
Ex)債権者Aが債務者Bに対して、50万の利子付貸金債権と、50万の代金債権を有し、60万の弁済が有ったときにどちらに充当すべきか?
⇒利子付債務に充当されれば、Bに有利である
①〔488〕指定充当
㋑充当につき、合意があれば、それが最優先
㋺弁済者Bが指定する
㋩受領者が指定する
②〔489〕法定充当
・・・当事者の指定なし、Or) 債権者の指定が拒絶
㋑弁済期の到来しているものから、
㋺債務者(弁済者)の利益の大きいものから
㋩弁済期が先に到来した物から
㋥債務の額が大きいものから
なお)弁済の順序
①費用→②利息→③元本
3 弁済の提供と供託
35.弁済の提供とはどのような制度であり、弁済の提供があった場合にどのような効果が生ずるか、また、どのような行為をすれば弁済の提供があったと言えるかを説明することができる。
①弁済の提供と責任の軽減
Ex)代金債権については、その金銭を現実に引渡せは、完全な弁済となる
But)相手が行方不明 Or わざと受け取らない
⇒債務者は弁済ができない
So)債務者側で為しうる、必要な準備をして、債権者の受領を求めるところまでいけば、債務その者は消滅しないが、不履行の責任は免れる(契約解除・損害賠償)
=「弁済の提供」による「責任軽減」という
②弁済の提供の方法
㋐現実の提供
対象)給付内容が単に債権者に受領されれば良いもの
How)給付場所へ持参する〔493〕本文
E)金銭を持参したが、債権者が留守だったとき、「現実の提供あり」となる
⇒弁済提供の原則
㋑口頭の提供
When)債権者が予め受領を拒んだとき
要件)債権者は、
ⅰ)債務の弁済に必要な準備を完了
ⅱ)債権者に取りたてに来るように通知する(催告する)
効果)弁済提供の効果が生じる
When)弁済に元々債権者の行為が必要なときも同様
・最初から債権者が取りたてに来る契約
・弁済地を債権者が指定した契約
36.供託とはどのような制度であり、供託によってどのような効果が生ずるかを説明することができる。
供託は、供託者(債務者など)が供託所に弁済の目的物を寄託して、債務その者をしょうめつさせる制度である。
法構成)①供託者が供託所に目的物を寄託
②債権者が供託所に目的物の引渡請求権を取得する
⇒供託は、供託者と供託所の第三者のためにする契約
【供託原因】
①債務者の受領拒否
㋑債権者が受領を拒む、㋺受領をすることができない
Ex)アパートの貸主が法外に賃料を値上げして、前の家賃では受け取らないと言ってきたとき。
⇒借主は、従前の家賃或いは適当と思われる値上げ額を上乗せして供託すればよい
判例)債権者が受け取らぬと分っていても、債務者は口頭の提供が必要だとするが、学説は不要
②債権者不確知
債務者が過失なく債権者を確知できないとき
Ex)債権者が死亡して、相続人がわからあない
EX)債権が二重に譲渡されて、その到達の先後がわからない
How)
場所;債務履行地の供託所〔495①〕
目的物:金銭、
※不動産の場合には、裁判所が弁済者の請求によって供託物保管者を選任してその者に保管させる(②)
※弁済の対象物が腐敗しやすいもののように、滅失・損傷の虞がある場合は、弁済者は、裁判所の許可を得てそれを競売してその代価を供託することができる〔497〕
なお)債権額の一部だけを供託しても、その部分についての債権消滅を主張することはできない
【供託物引渡し(還付)請求権と供託物取戻請求権】
供託すると債務者の債務は消滅するから、あとは債権者が供託所に対してその目的物の引渡し(払渡し)請求権を持つことになる。
※代金を供託された売主は、まだ買主への反対債務(物品の引渡し)を履行していなければ、この引渡し請求権は行使できない・
また)供託は債務者の利益のために認められているのであある。
So)供託者(債務者)は、もし債権者の不利益にならないのであれば一旦した供託を撤回して供託物を取り戻しすることもできる(取戻請求権)。
※但し、債権者が供託を受諾したときは、この取戻は認められない。
∻)第三者のためにする契約
第三者のためにする契約〔537〕では、受益者が受益の意思表示をしたときには、それを撤回できない〔538〕
4 弁済による代位
37.弁済による代位とはどのような制度であり、どのような場合に弁済による代位が認められるかを、具体例を挙げて説明することができる。
他人のために債務を弁済してやった第三者が、債権者の地位に取って代わる制度である
Ex)債権者Aが債務者Bに対する債権の、保証人である第三者Cと、物上保証人Dが有る場合
①債務者Bが無資力に也、保証人CがBに代わってAに全額弁済
②Cは弁済した全額をBに求償するが、Bには支払い能力なし
③このとき、Cは、債権者Aの立場に取って代わり、以下を行使する
㋐AのBに対する債権
㋑AのDに対する抵当権
Mean)第三者が債務者の代りに弁済したとき、その弁済者は、求償権の範囲内で、弁済によって消滅するはずの、債権者の債務者に対する債権(原債権)とそれに付随する担保権などの法的な移転を受けて、これを行使する制度(求償権の実現を確保!!)
用語問題)民法では、「代位弁済」というが、制度の趣旨は、代って弁済することによる、その結果として、弁済者が債権者の地位に取って代わることを問題とするので、
So)「弁済による代位」というへき
【成立要件】
1⃣債権者を満足させる出捐が有ったこと
○代物弁済や供託も含む
2⃣弁済者に求償権が発生すること
Why)弁済による代位は、求償権の実現を確保する制度なので、弁済者が債務者へ贈与の意思で弁済するなどの様に、求償権を放棄しているときは、成立しない
★任意代位
Who)弁済者は誰でもOK
【効力要件】
代位することについて弁済と同時に債権者の同意(承諾)を得る必要〔499①〕
【対抗要件】
債務者や第三者に対抗するため、債権譲渡の時と同じ対抗要件〔499②〕
★法定代位
Who)弁済をする正当な利益のある者
Ex)代って弁済しなければ、自分が強制執行に遭う可能性のあるもの
【効力要件】 不要 ※債権者の同意なしで当然にできる
【対応要件】 不要
Mean)弁済をする正当の利益ある者
保証人・物上保証人・連帯債務者・後順位抵当権者・担保目的物の第三取得者等
38.弁済による代位によって、代位者がどのような権利を行使することができるかを、求償債権と原債権の関係に留意しながら、具体例に即して説明することができる。
【効果】
弁済による代位があると、弁済者は、求償権の範囲内で、以下の効果が生ずる
㋐債権の効力
債権者が持っていた一切の権利・権能〔501本〕
Mean)債務者に対する履行請求権
損害賠償請求権
債権保全のための債権者代位権
詐害行為取消権
㋑債権の担保
債権者が持っていた物的担保・人的担保についていの一切の権利・権能
注意)あくまでも求償権の範囲内
〔502〕一部代位
一部だけ弁済したときは、その部分のみ代位が生ずるので、代位者は、その弁済した価額に応じ、残存部分につき、なお権利を持つ債権者と共に(?)その権利を行使できる
39.法定代位をなしうる者が複数存在する場合に、その相互関係がどうなるかを、条文を参照しながら、具体例に即して説明することができる。
What)法定代位者となり得るものが複数いて、その内の一人が弁済したときの処理
=誰が弁済しても、その立場によって代位する条件が一定であるようにしておく〔501〕
㋐保証人と第三取得者
債務者Bが担保設定した目的物を債務者から譲渡などで取得した物
〔501<1>〕保証人は弁済したら、全額につき、第三取得者に対して代位できる
〔501<2>〕第三取得者は弁済しても、全く保証人に対して代位できない
※その目的物が不動産であるとき、「予め代位の付記登記をしなければ、保証人は、第三取得者に代位できない」との規定
Mean)保証人の弁済があったとき、その代位の付記登記をしておくことにより、弁済により担保権は消滅したものと信じて担保不動産を取得した第三取得者の損害から保護しようとする趣旨
So)保証人が弁済をした後に現れた第三取得者に関する規定
⇒第三取得者が取得後に、保証人が弁済をした場合は、この付記登記は不要である(通説)
Why)第三取得者を債務者に準じて評価すれば当然
Mean)保証債務
保証人が弁済すれば、主たる債務者に全額求償できるが、主たる債務者が全額弁済しても保証人に一切求償できない
㋑債務者の担保物が複数あり、それぞれに第三取得者があるとき
⇒第三取得者相互では、それぞれが取得した不動産の価額に応じて代位する
㋒物上保証人が複数あり、その一方が弁済したときの物上保証人間の関係
⇒その担保に供した不動産の価額に応じて代位する
㋓保証人と物上保証人が有り、その一方が弁済したとき
⇒頭割りで、人数に応じた平等の割合で代位す
㋔保証人相互間
⇒(明文無し)当然頭割り
第三節 代物弁済
40.代物弁済とはどのような制度であり、その効果が生ずるためにはどのような要件を備えている必要があるかを、具体例を挙げて説明することができる。
Ex)債権者Aが債務者Bに対する1000万の貸金債権に対して、債務者Bが所有する土地をもって、弁済したい旨を申しこみ、債権者Aがそれを承諾の上、弁済する行為を指す。
Mean)債務者が、債権者と合意の上、本来の債権の給付内容と異なる他の給付を現実にすることによって、本来の債権を消滅させることである〔482〕
特徴)㋑債権者と債務者の合意を要すること
C.F単なる弁済(準法律行為)と異なり、一種の契約である
㋺代りの給付が現実になされないかぎり、その効果が認められない(要物契約)
Mean)「他の給付」
㋑本来の給付に相当する価値を持つ必要ななし
Ex)1000万の代りに800万の土地 Or 1200万の土地
㋺性質の違いも問わない
※あまり過大な価値の者による代物弁済は、公序良俗に反し、無効〔90〕
So)一般に、本来の金銭債務額より価値の大きいものによる代物弁済されることが多い
So)詐害行為取消権では、代物弁済は本旨弁済とはことなり、原則的に詐害行為と認定する!
【効力要件】
1⃣所有権移転の効果〔176〕意思表示
Mean)代物弁済契約時に生ずる
2⃣債権消滅の効果〔178など〕
Mean)第三者対抗要件の具備
Why)二重譲渡を防ぐため
★代物弁済の予約
Ex)債権者Aは債務者Bの返済できなければ甲土地の所有権を移転する旨の申込を承諾した
…この合意は代物弁済そのものではない
Why)代物弁済は、現実に給付があって初めて成立する(要物契約)
So)精確には、停止条件付代物弁済契約
期限に弁済しない時は、Bの土地はAに移転するという予約である
なお)代物弁済の予約の内、不動産を目的とする者
・仮登記による順位保全効
・差額の清算義務
Mean)目的物の価額と、被担保債権額
第四節 相殺
41.相殺とはどのような制度であり、どのような機能を果たしているかを、具体例を挙げて説明することができる。
Ex)Aが有する300万の貸金債権と、Bが有する200万の売掛債権が存在するとき、
ⅰ)AがBに貸金の弁済を求めたとき
ⅱ)BがAに対して、一方的な意思表示によって、対当額について双方の債権・債務を消滅させることができる
このとき)
β)Bの200万の債権を、自ら相殺を働きかける債権として、自働債権といい
α)Aの債権は、相殺を受ける債権んとして、受働債権という
法的性質)
単独行為
※双方の債権が同種であるなどの制約あり
⇔双方の契約により債権債務の消滅をさせる清算とは異なる
・・・双務契約
その他)停止条件付相殺契約又は、相殺の予約
Mean)将来一定の条件を満たしたときに相殺する旨の合意
★相殺制度の機能
㋐決済事務の簡略化
時間と費用が節約でき、弁済の目的物を動かさなくてもいい
㋑当事者の公平を図る
Ex)一方が支払って、他方が支払う前に他方が倒産すれば、甚だ不公平
㋒担保的機能
Mean)相殺ができるといいうことは、対立する債権・債務がその対当額の範囲で、相手が弁済せずとも回収できる(人質)、と言う意味で、お互いに担保の機能を果たし得る
So)実務上は重要
Why)総裁は最も簡便迅速な債権回収手段であり、相殺をかけ確実に実現する方法が、担保的機能の確保である
42.民法で規定される相殺が認められるためにはどのような要件が備わっている必要があるかを、具体例に即して説明することができる。
【成立要件】 相殺適状
相殺を為し得る要件を具備する債権の対立状態を相殺適状と言う
〔505①本〕
①債権の対立
原則として、相殺するものと相手方との間に相互に債権が対立していることが必要
※保証人は、主債務者が債権者に対して持つ債権を使って相殺できる(保証人の対立債権でない)
※債権譲渡のときの債務者Bは、譲受人Cからの請求に対しては、譲渡人Aに対して有する債権で相殺できる
②双方の債権が同種の目的をゆうすること
双方の債権の目的(給付物)が同種のものでなければならぬ
Why)一方的に相殺を許す制度なのに、たとえば、一方が金銭で、一方が特定物の引渡し債権では、相殺ができない。
③双方の債権が弁済期にあること
債務者は契約で定めた弁済期が来るまで、弁済しなくてもよいという利益を有する(期限の利益)
Ex)前例においても、一方の弁済期が到来していないのに、相殺しなければならぬとすば、一方の期限の利益を損なう
※〔136②〕期限の利益を放棄することができる
So_)まだ払わなくていい一方が、期限の利益を放棄して、自ら相殺することを得
【効力要件】
〔506①本〕相手方に対する意思表示
【効果】
双方の債権はその対当額において、消滅す
Ex)前例では、A⇒B 100万のみ残る
When)債権消滅の効果は、相殺の時点ではなく、双方の債務が相殺適状を生じた時点に遡及して、生じる〔506②〕
なお)相殺の相手方が相殺適状にある複数の債権(受働債権)をゆうしていて、その総額よりも自働債権の額が少ないとき、相殺の充当の問題が生じるが、民法は〔512〕充当の規定を準用する
★相殺の禁止
①債務の性質による相殺禁止
〔505①但〕同種の目的を持った債務同士でも、債務の性質によっては、、相殺がゆrつされない
Ex)お互いに騒音を出さない不作為
②当事者の意思表示による相殺禁止
〔505②本〕当事者が債務の現実の履行を求め、相殺を禁じる旨の意思表示をしたときは、相殺できない
※この禁止の意思表示は、善意の第三者に対抗できない
∻)債権譲渡の禁止特約と同じ
③法律による禁止
㋐不法行為に基づく債権を受動債権とする相殺
Ex)Aが運転する車でBをはねたが、加害者Aは被害者Bに貸金債権を持っていた。
(Bに対して、貸金債権を有するAが交通事故でBにけがをさせ、不法行為にもとづく損害賠償がBにしょうずるとき)
⇒不法行為に基づく損賠債権を受働債権として、相殺できない
Why)被害者の現実の救済
So)被害者Bから不法行為の損賠債権を自働債権として、相殺することは差し支え無し
なお)双方の債務がいずれも不法行為債権であっても、相殺できぬ
※いずれの場合にも、当事者が合意すれば、相殺契約をして、差額だけを支払うことはOK
43.差し押さえられた債権を受働債権として相殺することができるか、できるとすればその要件は何かについて、判例・学説の考え方と問題点の概要を、具体例に即して説明することができる。
「差押」と「相殺の優劣」の問題
EX)A⇒B 300万(貸金)
B⇒A 200万(売掛)
このとき)Aの債権者Cが、AのBに対する貸金債権を差押えしたとき(差押されるとその債権は勝手に弁済したりできなくなる。差押えた債権者Cは、その弁済を差止めた債権200万に対し執行し、自己の債権を回収する)、
㋑Cの差押えが優先して、BはCの債権執行に服さなければならないのか?
㋒Bはなお相殺して200万の優先して回収できるのか?
民法)第三債務者(AとCの関係では、Bが第三債務者となる)は、支払いのさし止めを受けた後に取得した債権により相殺をもって差押債権者Cに対抗できない〔511〕
Mean)Cが先にAのBに対する債権に差押えをして、その後にBがAに対し反対債権を有しても相殺できない。
=Aの債権に差押えがないうちに、BはAに対する債権をしゅとくしたなら、CがAの債権を差押えても、Bは相殺可能となる。
Why)支払いのさし止めを受ける前に取得した債権については、相殺により回収できるという期待を保護し、他の債権者の債権執行に優先させるという主訴。
But)相殺をするためには、双方の債権が弁済期にある必要がある。
判例)
1)相殺を制限する説
制限説)自働債権の弁済期が到達していたらOK
反対債権が先であればNo
2)相殺の期待を保護する方向へ
⇒差押えの時点でとにかく対立する債権がある限り、相殺が優先する。
第五節 その他の債権消滅原因
44.更改とはどのような制度であるかを、具体例を挙げて説明することができる。
45.債務免除とはどのような制度であり、その効果を生ずるためにはどのような要件が備わっている必要があるかを具体例を挙げて説明することができる。
46.混同による債務の消滅が生ずるのはどのような場合か、またその例外はどのような場合に認められるかを、それぞれ具体例を挙げて説明することができる。
二)内部関係
㋐求償権の存在
〔442①〕連帯債務者の一人が弁済その他財産の出捐をして善債務者の共同の免責を得たときは、当然他の債務者に負担部分に応じた求償をすることができる
根拠)連帯債務は主観的結合関係〔協力関係〕にあるから
注意)負担部分は負担金額ではなく、負担割合である。
EX)AがDに300万弁済した。3000÷300=10%。負担部分1000×10%は、100万なので、BCに100万ずつ請求。尚、Dの債権は2700に縮減するから、ABCに各個全額を請求する。
㋑求償権の制限
〔443①〕自分が弁済することを他の債権者に知らせずに弁済すると他の債務者に不利益が及ぶことがある。
EX)債権者に対する抗弁権を失う
EX)知らずに二重払いをする
S)弁済の事前と事後に通知義務を課し、その通知を怠って他の債務者に不利益を与えたときは求償権を制限することにした
1⃣事前の通知を怠ったケース
AがBCに通報せず3000万返済した。Cは予め300万の反対債権を回収すべく考えていたが、Aのために機会を失った。Aは本来1000万ずつCBに求償できるはずだが、この場合にはCに対しては、1000万−300万の700万しか求償できない(これにより、Cは反対債権を行使したことになる)。従って、Aは不足する300万はDに対して請求するほかなくなる。
2⃣事後に通知を怠ったケース
①AはDに3000万弁済した(通知せず)
②CはDに3000万弁済した(通知して)
①AのBCへの求償は無効
②CのABへの求償は有効
So)AはCへ1000万支払う(合計4000万の出捐)。
AはDに対して3000万の請求(Dは3000万の不当利得となる)するほかない
3⃣Aは事前・事後の通知を怠り、Cも事前通知を怠った。
〔443〕は過失ある第二弁済者までも保護する趣旨ではないから、この場合は原則に戻り、第一弁済を友好トス。
⇒CはDに対し、不当利得請求の問題が残る
㋒無資力者がある場合の求償
〔444〕連帯債務者の中に無資力者がいるとき、求償者(弁済者)と他の資力がある連帯債務者が、それらの負担部分に応じて負担する。
EX)Bが無資力であるとき、ACの負担部分は1000⇒1500となる。
WHY)債権者に対する信用力を保持するため
※AのCに対する求償に過失があった時は、AはBの負担部分の全部負担をする。
EX)Aの求償が遅れたため、Bが無資力になったなど。Aの負担部分は1000⇒2000;Cは1000のまま。
なお)負担部分〇の者が加わることもできる。
㋓連帯の免除と無資力者が有る場合の求償
「連帯の免除」とは??
債権者が、連帯債務者に対し、自己の負担部分を超えて請求しないと、意思表示するもの
効果)連帯債務の「連帯」の要素を無にする
⇒①連帯債務者全員に申せば、各債務者の債務は分割債務となる
So)求償関係も無くなる(絶対的連帯免除)
⇒②一部の連帯債務者にこれを申せは、免除を受けたものは分割債務者となり、他の者は以前として元の債務全額について連帯債務を負担し、求償関係が残る(相対的連帯免除)
(発展問題)AがDから、連帯免除を受け、Bが無資力になった場合。先ず、Aの債務は分割債務となり、自己の負担部分1000万を独立して弁済すればよい。次に、Bの負担部分は、本来ACに500万ずつ負担として分配されるが、内Aの負担部分に加算される500万はDが負担することとなる。従って、Cは1500万の負担部分を負うが、3000万の全額について、請求を負う。
第三節 保証債務
22.保証とはどのようなものであり、どのような場合に保証債務が生じるかを説明することができる。
保証は、人的担保の代表である。
債務者が債権者に負う債務の弁済を担保するため、保証人が債権者に負う債務を保証債務という(⇔身元保証)。
【発生要件】
①保証契約
保証契約は、債権者Zと保証人Bとの間の保証契約によって生じる
※多くの場合、Bは債務者Aに頼まれるだろうが、AB間の保証委託契約が有ってもなくても、ZB間の保証契約には関係ない
So)AB間の契約の内容は、BZ間の保証内容に影響しない
So)Aから「ほかにも保証人CDがいるから」と言われて保証人になったとしても、保証契約の要素の錯誤により無効にすることはできない
How)保証人は無償で一方的に債務の負担を負うので、その契約は書面によるべし〔446②〕(要式契約)
And)〔446③〕電磁的記録でもOK
②保証人の資格
一般に、保証人となるのに何らの資格を要しない
※主たる債ム者が㋑法律の規定や、㋺債権者との契約により、保証人を立てる義務を負っているときは、
α)行為能力を有し、β)弁済の資力を有する者、を立てねばならぬ〔450①〕
〔450②〕弁済の資力を有しなければならない保証人が、無資力になったときは、債権者は、代わりの保証人を立てるように請求できる
※債権者から指名した保証人であるときは、立てなくてよい
③主たる債務の存在
主たる債務が不成立・消滅しているとき、保証債務も成立しない(=付従性)
And)主たる債務者が制限行為能力者であるときも、保証契約は有効だが、主たる債務を発生させた契約の意思表示が制限行為能力を理由に取消されたとき、保証契約も消滅する。※主たる債務に債務者の無能力を理由とする取消原因があることを保証人が予め知っていたとき、保証人は主たる債務が取り消されても、「同一の目的を有する独立の債務」を負担したものと推定される〔449〕。
WHY)取消承知で契約したものと推定する
But)保証人がそこまで認識できたか?
So)反証可能
なお)同規定は、無能力を問題としており、詐欺・強迫には推定は及ばない
23.保証債務の附従性及び随伴性とはどのような性質を指すのかを、その具体的効果を含めて、説明することができる。
性質(㋑独立債務性、㋺付従性、㋩随伴性、㋥補充性)
㋑保証債務は、主たる債務とは独立の債務である。
So)保証債務は債権者Zと保証人Bとの契約で成立する
㋺保証債務は主たる債務に付き従う性質を有する
Mean)主たる債務の存在が前提となる(成立・存在の附従性)
Mean)保証債務は主たる債務より軽くてもよいが重くできない
EX)主債務500万で保証債務600万のとき、500万まで縮減される〔448〕
※保証人が保証債務について、違約金の約束をすることは妨げない
WHY)債務の内容を重くするものではなく、保証債務の履行を確実にするものだから
㋩保証債務は、担保の一種だから、債権譲渡などで債権者が変わっても、債権に随伴し新しい債権者のところへ移る
⇔債務者が後退する債務引受けのとき、保証人が特に同意しないかぎり、随伴しない。
WHY)保証人にとって債務者が誰かと言うことは、切実な問題であるから
㋥〔446①〕保証人は、主たる債務者がその債務を履行しない時に(初めて)履行の責二任ズ。
⇒二つの抗弁
α)催告の抗弁
債務者の請求に対し、先に主たる債務者に請求してくれ、といえる
β)検索の抗弁
債務者が強制執行したとき、主たる債務者に執行すべき財産があるから、先に主たる債務者に執行を掛けてくれ、といえる
⇔連帯保証人にはこの補充性が無い。
So)本人より先に請求を受ければ、支払うへし
【保証債務の効力】
①債権者・保証人間の効力(対外効力)
a)保証債務の内容
保証債務の内容は、当事者の特約が無ければ、①付従性と、②保証契約の内容によって、決する
Ex)主たる債務100万/保証債務100万 ※特約無し
⇒保証範囲は、
㋑主債務
㋺利子
㋩違約金
㋥損害賠償〔447①〕
尚)保証債務は金銭債務だけに成立するのではない
Ex)売主の目的物引渡し債務
If)品物に瑕疵があり、代金を受領後に解約されたとき、売主には解除による原状回復義務が生じる(=代金を返す)
When)売主が代金を返さなければ、保証人に返還義務が生じる
A)保証人の抗弁
保証人の抗弁は保証契約の補充性から導かれる
α)催告の抗弁
β)検索の抗弁
⇔連帯保証人には与えられない抗弁
〔452〕債権者がまず保証人に対して履行を請求してきたとき、先に主たる債務者に請求してくれと言える権利
※主債務者が破産宣告、行方不明のときは行使できない
〔453〕債権さhが先に保証人の財産に強制執行をしかけてきたら、保証人は、①主債務者に弁済の資力が有り、②執行の容易であることを証明し、まず、主債務者の財産に対して執行すへきことを主張できる
Mean)執行の容易
一般論として、主債務者の財産が金銭や有価証券の形で存在すれば、執行は容易である(不動産は?)
B)主債務者の債権者に対する抗弁の援用
保証契約の附従性から、保証人は、主債務者の債権者に対する抗弁を援用できる
Ex)同時履行の抗弁〔533〕
Ex)消滅時効の援用
CASE:主債務者が時効利益を放棄しても無関係である
〇相殺の抗弁
主たる債務者が債権者に有する反対債権は、保証人がこれを債権者に相殺の主張をすることができる
Why)当事者間の求償関係の簡略化(∻連帯債務)
What)主債務者の取消権(詐欺・未成年など)を保証人が行使しうるか?
CASE:保証人は〔120〕取消権者に当たらない(←学説は批判的)
24.保証人の求償権がどのような場合に生じるか、及びその行使の手続きなどについて、条文を参照しながら説明することができる。
【保証債務の効力】
主債務者⇔保証人(影響関係)
α)主債務者に生じた事情はすべて付従性により保証人にも生じる〔457〕
β)保証人に生じた事由は、弁済その他の債務を消滅させるものを除いて、原則として、主債務者に影響しない
Ex)保証人が債務を承認して時効が中断しても、主債務者の時効は中断しない(⇔主債務者の時効が中断すれば保証人の事項も中断する)
■保証人の求償権 保証人が主債務者に代わって弁済すれば、保証人は主債務者に求償できる
保証人には、㋑主債務者に頼まれる保証人㋺主債務者に頼まれない保証人、がある。
㋑委託を受けた保証人の求償権
〔459①〕保証人は弁済などの出捐行為の後で、主たる債務者に求償できる
範囲)A)弁済額、B)利子、C)費用、D)損害賠償(∻連帯債務の規定を準用)
弁済する事前と事後に主債務者に通知しなければ、求償権が制限されることがある(∻連帯債務の準用)
So)委託を受けた保証人は、事前求償権(出捐行為の前に求償できる制度)がある。
α)保証人が過失なく債権者へ弁済するよう判決の言い渡しを受けたとき〔459①〕、
β)主債務者が破産手続きを開始し、かつ、債権者がその財団の配当に加入しないとき〔460〕
※保証人の事前求償権に対し、主債務者が無条件に従う義務はない
Why)事前求償に応じても、保証人が債権者に弁済してくれるかどうかわからない
対策⇒〔461①〕債務者が保証人に担保の提供を求めることができる
〔461②〕保証人に対し償還すべき金額を供託する
㋺委託を受けない保証人の求償権
×事前求償権なし
△事後求償権あり ※制限付き
1⃣委託を受けないが、保証人となったことが主債務者の意思に反しないとき
(=たとえば、債務者は何とも言っていないが、債権者が保証人を付けたケース)
⇒保証人の「出捐行為の当時」に主債務者が利益を受けた程度で求償できる
(∻事務管理…頼まれないのに他人のためにした行為は、それが他人の利益になっているなら、報酬はもらえないがかかった費用は返してもらえる)
So)利息、費用、賠償費用は求償権に含まれない〔462①〕
2⃣保証人になったことが、主債務者の意思に反するとき
(=たとえば、債務者は自分で返せるから保証人は要らないと言っているのに、どうしても就いたとき)
⇒保証人の「求償の時」に主債務者が利益を受ける限度で、求償し得る。
25.連帯保証と普通保証の違いを説明することができる。
連帯保証とは、保証人が主債務者と連帯して債務を負担する特約のある保証
So)連帯保証人は、主たる債務者と連帯するものである(⇔保証連帯:複数の保証人が連帯する共同保証のこと)
◎連帯債務には、㋑付従性が有るが、㋺補充性が無い(⇔普通保証)
Why)㋑連帯債務も保証債務の一種なので、共通して付従性は有る
㋺保証人が主債務者と連帯しているから、補充性が氷解する
Mean)連帯保証人は補欠要員ではないので、主債務者が資力の有無にかかわらず、直ちに、債権者は連帯保証人に債権全額の請求を為し得る
So)債権担保の効力の大きい連帯保証は、今日の典型的な人的保証である。
【効力】
㋐債権者⇔連帯保証人(対外的効力)
債権者が債務者に対する権利は、大よそ連帯保証人にも妥当する。
尚)複数の連帯保証人がいるときもそれぞれが、全額の賠償責任を負う(⇔保証連帯:分別の利益)
㋑主たる債務者⇔連帯保証人(影響関係)
(∻連帯債務の規定を準用 ※保証債務の基本的性質にもとづく制限ある)
α)主たる債務者に生じた事由の効力はすべて連帯保証人に生じる
Basis)債権の附従性
β)連帯保証人に生じた事由は、負担部分を前提とする規定を除き、連帯債務の規定に従う
Why)保証人には負担部分がないので、その準用の余地なし
Ex)連帯保証人が弁済すれば、主たる債務者に全額賠償できるが、主たる債務者は賠償するのが当たり前なので連帯保証人に求償できない=負担部分無し
∻〔434〕履行の請求の準用
Mean)連帯保証人への履行の請求は、主債務者に効力を及ぼす
※その他の通知などは相対的効力しかもたない
㋒連帯保証人⇔主たる債務者(求償関係)
=普通保証
«連帯債務VS連帯保証»
全員を直接債務者とする連帯債務の方が有利な気もするが、連帯保証の方が有利である、
Why)債権の効力は両者でほぼ変わらないが、債権の維持管理は連帯保証の方が楽
前提:連帯保証も一種の債権債務の関係なので、時効にかかる
Ex)連帯債務ならば、債務者の一人に時効が完成すると、他の債務者の負担が減る
⇔)連帯保証人の時効の完成(?)は、主債務者の債務には影響しない
Ex)債権譲渡の時も、連帯債務ならば、債権者は、債務者全員に通知しなければならぬ。
⇔)連帯保証なら主債務者のみに通知すれば足る
Mean)債権者は、連帯債務では、債務者全体を常に相手にしなければならないが、連帯保証では、主債務者を相手にしておけばよい
第四章 債権の譲渡、債務の引受
第一節 債権譲渡
26.債権の譲渡とはどのような制度であり、どのような場合に債権譲渡が行われるかを説明することができる。
【債権譲渡とは】
債権譲渡とは、債権を、その同一性を変じることなく、第三者に移転することで、譲渡人と譲受人との契約によってなされる。
※債権譲渡は、契約による債権の移転などで、相続や会社の合併による移転は、含まない。
∻)契約による債権の移転であっても、債権者の変更による更改〔515〕は、旧債権が(いったん)消滅するので、含まない。
①機能(指名債権:特定人の特定人に対する債権…民法の中心⇔有価証券:商法の中心)
㋑ある債権を弁済期前に売却して金銭を入手するために行われる
Ex)来月にならないと支払われない100万の債権を、今現金化するため、98万で売却する
㋺手元に資金が無いので弁済に供す
㋩金融を受ける担保のために譲渡する
27.債権の譲渡可能性(将来発生すべき債権の譲渡可能性・包括的な債権譲渡の可能性を含む)とその例外(譲渡禁止特約を含む)について、説明することができる。
【債権の譲渡可能性(制限について)】
〔466①〕債権は譲渡すことができる。しかし、その性質がこれを許さないときは、その限りではない。
債権の譲渡性とは、譲渡人(原債権者)が譲受人(新債権者)との合意のみによって、譲渡できること。
なお)債務者の合意は不要である。
But)譲渡制限あり(⇔物権)
※①債権の性質による制限
Ex)ヘルパーに介護させる債権(誰のための介護かが重要)
=債務者(ヘルパーさんの同意が必要)
Ex)賃貸借
=誰が借りるか、大家さん(債務者)の同意が必要
Why)人的特定性が重要
※②当事者意思による制限(譲渡禁止特約)
㋐総説
〔466②〕当事者が反対の意思を表示したときは、適用しない。但し、その意思表示は、善意の第三者に対抗できない。
Mean)債権者と債務者の間で譲渡禁止の特約をしたときは、譲渡性を失う。
Ex)銀行預金契約
Why)金融機関の事務の煩雑を避けるため(安全な預金管理)
融資の担保確保のため
But)〔466②但〕善意の第三者に対抗できない
Mean)禁止特約に拘わらず債権譲渡したとき、その特約の存在を知らずに譲り受けた第三者は、債権を有効に取得する。
Case)善意及び無重過失を要求する
㋑譲渡禁止の効力
What)このような禁止特約のあることを知って譲り受けたとき、譲渡の効力はどうなる??
⇒物権的効力説
特約は、当該譲渡の効力を物権的に奪うもので、当事者間のみならず、譲渡人(第三者)との関係でも、無効となる。
⇔〔少数説〕譲渡禁止特約の効力は、基本的に当事者間で第三者に及ばず。
但し)債務者(銀行)は悪意の譲渡人に対し、㋑譲受無効の主張、㋺悪意の抗弁、をなしうる(債権的効力説)。
㋒譲渡禁止特約の解除(=債務者の承諾)
譲渡禁止特約を付した債権が悪意者に譲渡されたときも、特約の当事者で不利な立場にある債務者が、譲渡に承諾を与える(=譲渡禁止特約を解く意思表示)ならば、譲渡は有効となる。
なお)債権譲渡の対抗要件としてなされた承諾であっても差し支え無し
What)有効とは??
物権的無効とは、絶対的無効
(禁止特約があるが)債務者が譲渡に承諾を与えたとき、そのときから有効な譲渡になる〔119〕
Case)譲渡時に遡って有効とする。但し、〔116(無権代理行為の追認)〕の法意に照らして、第三者の権利を害せない。
Mean)この第三者とは、譲渡人や譲受人ではない第三者(差押債権者等)
なお)譲渡禁止特約付きの債権ももちろん差押え可能
28.指名債権譲渡の対抗要件の構造・仕組み(動産債権譲渡特例法上の対抗要件を含めて、民法上及び特例法上の対抗要件の競合や対抗要件の同時具備の場合に生ずる問題などを含む)について、説明することができる。
【成立要件】両当事者の合意の意思表示
=譲渡自体は意思主義…〔176〕物権同様の取扱い
So)契約書の作成、証書の引渡し、はいずれも譲渡の成立要件ではない
Mean)譲渡は、契約成立時(合意のとき)に発生する
【対抗要件】
①対抗要件主義の採用
②その特殊性
〔467②〕確定日付のある証書による債務者への通知又は承諾が対抗要件である(対第三者)
※〔467①〕債務者に対する関係のみならば、それらを確定日付による証書による必要なし(無方式の通知か承諾があればよい)
So)「債務者その他の第三者に対抗することができない」となっているが、第三者は専ら〔467②〕が当てはまるので、確定日付証書が必要である。
(整理)
㋐債権譲渡の成立は、債務者抜きにしてできるとはいえ、その実現には、債務者の行為を通してする(履行)から、予め正式な通知が必要。
So)㋑債務者は、複数の第三者(その債権に参加したいもの)が行き着く「インフォメーションセンター」となる、「公示機能」を果たす役割がある。
But)㋒銀行などが債務者であれば守秘義務から債権の所在などは明らかにされないし、そもそも債務者に回答義務もない。
So)㋓債権譲渡の優劣決定機能を果たすための公示機関として、先後関係の証明力が有る、確定日付のある証書を要件とした。
③対抗要件の構成要素
㋐通知
AB間で債権譲渡契約が成立した。この事実を債務者Zに対し、通知するものである。
法的性質)観念の通知=準法律行為
Mean)あくまで「対抗要件」であり、債権の譲渡の効果とは無関係である
※この規定には、意思表示の規定が類推適用される(通説)
・〔97①〕到達したときに効力が生ず
・代理人によって通知ができる
※〔467①〕通知は譲渡人でなければならぬ
Why)譲渡人と詐称する虚偽の通知を防ぐため
㋑承諾
債権譲渡の存在を知ったという、観念の通知である(※異論:「意義を留めない意思表示」説)。
承諾の主体は債務者であるが、承諾の相手方は譲渡人・譲受人のどちらでもOK!
㋒確定日付
証書がその日に存在したことを完全を証明力によって証明するもの
〔民法施行規則〕
ⅰ)内容証明郵便〔通知〕
ⅱ)公証役場での確定日付の付与〔承諾〕
ⅲ)公証人の作成する公正証書の日付
ⅳ)裁判所の差押命令の送達日の日付
④債務者に対する対抗要件具備の効果
イ)〔467②〕確定日付のある証書
ロ)〔467①〕無方式の通知や承諾
とにかく対抗要件を具備すれば(債務者Zに対する対抗要件は確定日付が不要である)、譲受人Bはその日から債務者Zに対して債権の行使ができる
So)通知も承諾もない間は、すでに譲渡人・譲受人の間で有効な譲渡が成ったとしても、債務者Zは、譲受人Bからの弁済要求を拒むことができる。
And)当然、譲渡人に弁済すれば適法な弁済となる
また)通知が有った時も、債務者Zは、その通知到達までに旧債権に生じた抗弁事由(すでに一部弁済したなど)があれば、それをそのまま新債権者たる譲受人Bに対抗できる〔468②〕
Ex)そのた、イ)債権の消滅・不成立、ロ)相殺、など
中でも相殺についての抗弁に関して
α)反対債権の弁済期が相手のそれよりも早い
β)反対債権の弁済期が相手のそれよりも遅い
学説)βの場合には、相手方(譲受人)の債権が先に払われてしまう。そうすると、相殺の問題は生じないのでは?
⇒弁済期の先後を問わず、譲渡の通知到達までに反対債権を有していれば、相殺の抗弁が可能
〔468①〕承諾
㋑抗弁事由を留保しての承諾
通知と同様、承諾前の抗弁事由を譲受人に対して対抗できる
㋺無条件承諾(意義のとどめない承諾)
譲渡人に対抗し得た対抗事由を、譲受人には対抗できない。
⑤第三者に対する対抗要件具備の効果
〔467②〕確定日付のある証書による通知又は承諾を(他の譲受人等に先立って)得た譲受人は、その時点から債務者に権利主張し得るのはもちろん、債務者以外の第三者に対して、自分が債権者であると主張できる。
Mean)債務者以外の第三者とは??
譲渡された債権そのものについて両立し得ない法律的地位を取得した第三者
Ex)債権の二重譲渡人
債権を質に取った者
譲受人の債権者で譲渡債権を差押えて転付命令を得たもの
※それ以外の間接的に影響を受けるものは第三者に含まれない。
(=証書なく対抗できる)
Ex)譲受人が取得した債権とは別の債権を債務者に対して有する債権者。
⑥対抗要件の優劣決定基準
債権は二重三重に譲渡することがある
What)この時の優劣関係は??
第一基準 対抗要件具備の有無
第二基準 譲渡の先後
What)「通知」と「承諾」の優劣は??
(パターンX)
譲渡人Aが債務者Zに有する債権を、(順次)①無要式の通知でBに、②確定日付証書の様式でCに、通知をした場合、先後の違いに拘わらず②が勝つ。
Why)Bに対する無要式の通知は、債務者に対抗できても、第三者には無効である
So)競合するCが登場すれば、債務者Zに対しても、劣後することになる。
(パターンY)
譲渡人Aが債務者Zに有する債権を、無要式〔467①〕で、順次、BCに譲渡したとき、両者の順位はタイである!
So)そのあとに〔467②〕を得た方が勝者となる
または)対等の譲受人BCのいずれかの債権行使によって、いずれかの〔467②〕の取得前に、譲受人BCのいずれかに弁済がなされれば、闘いは終わる??
(パターンZ)
譲受人BCのいずれもが〔467②〕を具備したとき
⇒先後関係による
When)具備の時点
「債務者の正式の認識」が基準
So)債務者の確定日付のある承諾は、公証役場で確定日付を付けた日付で、間違いがない。
What)問題は通知である
Why)内容証明郵便の場合、通知の日付は郵便局の発信時となり、債務者の認識時とはズレがある。
判例)債務者への到達の時点
…確定日付は単なる添え物
∻)譲渡通知、差押通知、も同様に扱う
〘Point整理〙
1.債権譲渡の効力は、譲渡の先後は関係なく、対抗要件具備の先後が問題
2.〔467①〕の通知は、②通知があると実際には意味が無くなる
3.二重譲渡の優劣決定となる対抗要件のタイミングは、通知については、確定日付のある通知の到達時である
⑦対抗要件の衝突(通知の同時送達)
通知同時到達のときはどうすればよいか?
判例)二重譲受人は、両名とも債務者に対する関係では完全な債権者としての地位を得ているので、いずれもが債務者に対して全額の弁済を請求できる
How)債務者が速やかに紛争から逃れる方法?
⇒複数の通知が届いたがその先後が不明との理由で、債権者不確知として供託する
Why)供託は、債権消滅原因の一つであり、債務者は弁済したのと同様に、以後の責めを免れうる。
And)あとは、譲受人の法務局に対する供託金還付請求の問題となる
What)このとき、二重譲受人が互いに還付請求権を請求したときは?
判例)譲渡債権額に応じて按分すへし
29.債務者が、債権の譲受人に対してどのような場合にどのような事由を主張することができるかについて、異議をとどめない承諾の制度趣旨を含めて、具体例を挙げて説明することができる。
1⃣
〔468①〕債務者の意義を留めない承諾による抗弁の喪失
Mean)意義のとどめない承諾とは、債務者が承諾に際し
㋑その債権の不成立(=そんな借金存在しません)
㋺成立における瑕疵(=あの借金契約は無効でした)
㋩債権の消滅その他(=時効です、弁済しました)
⇒何らかの抗弁を譲渡人に対してゆうすることを留保しないで、単純にする承諾である
Mean)債権譲渡の対抗要件
①通知 一方的
②承諾 相対的
意義)本来、担保や抗弁事由は、債権に付随するものだが、〔468①〕は、無条件承諾したとき、それえお譲受人に対抗できないとした。
学説)「意思表示」か「観念の通知」か?
少数説:後者(公信説;譲受人の信頼を保護する規定都市、抗弁喪失は公信力によるもの)
多数説;前者(二重法定効果説)
Why)抗弁喪失は重大な効果であり、これを単なる観念通知に与えてよいのか?
承諾は、譲渡契約の後で為されることが多いので、譲渡時に公信の効力は存在しないではないか?
So)承諾は、積極的な意思的関与であり、異議をとどめぬ承諾(債権譲渡の内容を承諾した)は、
【第一効果】債務者に帰責性を生じさせ、その結果として、
【第二効果】譲受人が保護されるとする
判例)譲受人保護と取引の安全のため法律が付与した法律上の効果
2⃣
What)譲受人B保護と債務者Z保護のバランスとは?
債務者が意義を留めない承諾をしたために、譲渡人に対する抗弁事由を譲受人に対抗しえなくなったときの不利益は、譲渡人との間で調整が図られる
〔468①後〕
㋑債務者がその債務を消滅させるために譲受人に払渡したものがあるときは、これを取り戻すことが出来
㋺譲渡人に対して負担した債務があるときはこれを成立しなかったとみなすことができる
⇔不当利得の理論構成とは異なる
α)〔二重法定効果説〕債務者Zに帰責性を生じさせ、譲受人Bを保護する
⇒債務者Zに虚偽の意思表示がある(静的安全)
β)不適切な譲渡をした譲渡人Aを責めて、債務者Zを保護する
⇒譲受人に抗弁事由があることをしっかりと説明しなかった(動的安全)
3⃣
What)異議を留めない承諾の機能の範囲
異議を留めない承諾の抗弁喪失効果は、その譲受人と債務者の問題であり、対抗関係に影響しない
Mean)他に早く通知を到達させた者がいた場合には、最早債権者になれない(当然)
And)債務者に責めを負わせるものであるが、その及ぶ人的範囲も、その債務者に限られる
So)承諾前からの保証人に影響しない
第二節 債務引受
30.債務引受とはどのようなものであり、どのような類型があるか、また、それらがどのような場合に認められるかについて、説明することができる。
債務引受けとは、最も広い意味では、債務者の債務を他人が引き取る契約全般を指す。
①免責的債務引受け
②併存的(重畳的)債務引受け
③履行引き受け
共通)契約による債務移転であり、法律の規定による移転(相続、合併)などを含まない
①免責的債務引受けとは?
債務譲渡の裏返しで、債務が同一性を保って移転する契約である
⇔債務譲渡も同一性があるが、保証などの担保がそのまま移転するかどうかという点は異なる
Mean)債権者Aが原債務者Bに対する債権をそのまま新債務者Cに移転する行為
⇒原債権者Bは債権関係から離脱し、ACとの債権関係のみ残留する
注意)この契約では、債務者が入れ替わるから、債権の実現可能性に大きな影響がある
So)債権者は、原債務者と引受人に勝手な契約をさせない
【要件】
債務者の交代が債権者の利害に大きく影響するから、債権者はこの契約に関与する
A)三面契約は有効(債権者・債務者・引受人)
B)債権者・引受人の契約も有効
C)債務者・引受人の契約は有効とならず、
※債権者の同意の意思表示があれば、有効
【効果】
引受人は、引き受け当時原債務者が持っていた債権者への抗弁事由(一部弁済、同時履行の抗弁権など)の一切をそのまま引き継ぐ
※債務を引き継いだだけの者は、元の債権者と債務者の間の契約の当事者の資格を引き継ぐわけではないから、引き継いだ債務の元になっている契約を自分で解除したり、取消したりできない。
What)原債務についていた、人的、物的の担保はどうなるか?
α)原債務についていた保証人の保証債務は、保証人の同意がないかぎり、存続しない
β)原債務についていた抵当権などの約定担保物権は、物上保証人といい、原債務者B以外の人物が抵当不動産を提供していたりしたものは、保証人の債務と同様に考え、存続しない。
γ)原債務者自身が提供していた担保物は、所説分かれる。
㋑引き受け契約が、原債務者と引受人の間で行われたときは、存続
㋺債権者と引受人との間で行われたときは、消滅
②併存的(重畳的)債務引受けとは?
債務が引受人に引き取られる一方、原債務者も離脱しないという契約
Mean)債務者Bは、債務者であり続けながら、同一内容の債務をそのまま、引受人Cに負担させる
So)債務者が一人増えたことになり、債権の担保力は強化される
Mean)併存的(重畳的)債務引受けは、債権者に有利な契約である
⇔債権者の意思は、免責的債務引受けのように重視される必要ななし
【要件】
A)三面契約は有効
B)債権者・引受人の契約も有効
然も)債務者の意思に反してもよい
理屈)併存的債務引受けの実質的な機能は、保証と同様な債権の担保にあり、保証が主たる債務者の意思に反しても為し得ることとのバランス
⇔併存的債務引受けには、追従性がない点で保証と異なる
C)原債務者と引受人は有効
※このとき、債権者に引受人に対する債権を取得させるという利益を与える契約
(=第三のためにする契約となる)
So)①債権者のためにすることの明示の約定
②債権者の受益の意思表示〔537②〕
Ex)債権者が引受人Cに対して、請求するなど、債権者(受益人)の権利を行使すれば、受益の意思表示ありと解してよい
【効果】
What)債務者Bと引受人Cが同一の債務を負担するとは?二つの債務の関係は?
α)A/B間に主観的共同関係がある⇒連帯債務
β)そのような関係が無いとき⇒不真正連帯債務
また)引受人Cは、原債務者Bと同一の債務を負うのだから、引き受け当時に原債務者が持っていた、一切の抗弁事由をもって債権者に対抗し得るのは、当然。
=免責的債務引受け
なお)原債務者は、そのまま存続しているので、免責的債務引受けにおけるような、担保の消滅の問題は生じない
第五章 債権の消滅
第一節 弁済
1 弁済の当事者
31.債権者以外に債務の弁済をなすことができるのはどのような者であるかを、具体例を挙げて説明することができる。
弁済は本人が行う
32.第三者が債務を弁済した場合に、事後の法律関係(求償権の発生の有無、求償権の範囲など)がどうなるかを、具体例に即して説明することができる。
Ex)金銭の支払いなど、多くの債務は、第三者が弁済することが可能だ〔474①本〕
※性質上、第三者にできないものを除く
※当事者が、反対の意思を表示したときも、第三者弁済はできない
Mean)「第三者」
他人の債務を自己の名において弁済する者
(本人の代理人や履行補助者を含まない)
Ex)㋐友人の窮状を見かねて
㋑物上保証人の様に、自分の土地を他人の債務の担保に提供し、その他人が弁済できないとき、土地が競売されてしまうのを防ぐため、自分が他人に代わって弁済する
〔474②〕㋑タイプの様に、債務に「利害関係のある第三者」は、債務者の意思に反しても弁済ができるが、法的利害関係の無い第三者は、債務者の意思に反して、弁済できない
33.弁済を受領する権限を有しない者に対して弁済がなされた場合に、どのような法律関係が生ずるかを、具体例を挙げて説明することができる。
①弁済受領権とは
弁済は、弁済を受領する正当な権利を持つものに対してなされるへき
So)通常は債権者本人
※①債権者本人が破産手続き開始決定を受ける
⇒弁済受領権は制限
※②本人以外に弁済受領権者がいるとき
Ex)債権さ者の代理人、受領の委任を受けたもの
【効果】
弁済受領権の無い者への弁済は、弁済の効力は生じない(原則)
So)不当利得の受領者からとり返し、再度真正の受領権者に弁済スベシ
※違う人に弁済し、その人が正当な受領権者に私てくれてた時など、債権者が利益を受けたときは、その限度で有効な弁済となる〔479〕
②債権の準占有者に対する弁済
誰が見てもあの人が債権者だという外観を呈している人に弁済したときはどうなるか?
Ex)旧:債権者Aとその妻Cが死亡し、真正相続人である息子Bも死亡したとき、弟Cが表見相続人となり、村民はCが受領権者であることに疑いが無いとき、その弁済が、善意・無過失であれば、弁済が有効となる。
Mean)「善意」とは、単なる知・不知ではなく、真の権利者を信頼したことにつき、
今日)例外規定だったが、今日では、弁済者保護のための便法として、幅広く使われる
Ex)銀行預金の預金者以外への払い戻し
SO)わが国では、債権準占有者は緩やかに解する
Case)自分が代理人とだます詐称代理人から
③受領証書持持参人に対する弁済
〔480〕受取証書の持参人に対する善意・無過失の弁済を有効とする規定
C.F.〔478〕債権者本人らしい法的地位を持っているという人の外観に対して、本条は、弁済受領権限を証する紙に着目
So)受領証書(債権者名・債務者名の入った領収書)を持参した者にした弁済は、たとえ持参人がだれであっても、弁済受領権限のある者に対する弁済として有効
Mean)「真正」を要する
偽造証書の持参人には、適用されない
2 弁済の充当
34.弁済の充当とはどのような制度であるか、また、どのような順序で行われるかについて、条文を参照しながら説明することができる。
Ex)債権者Aが債務者Bに対して、50万の利子付貸金債権と、50万の代金債権を有し、60万の弁済が有ったときにどちらに充当すべきか?
⇒利子付債務に充当されれば、Bに有利である
①〔488〕指定充当
㋑充当につき、合意があれば、それが最優先
㋺弁済者Bが指定する
㋩受領者が指定する
②〔489〕法定充当
・・・当事者の指定なし、Or) 債権者の指定が拒絶
㋑弁済期の到来しているものから、
㋺債務者(弁済者)の利益の大きいものから
㋩弁済期が先に到来した物から
㋥債務の額が大きいものから
なお)弁済の順序
①費用→②利息→③元本
3 弁済の提供と供託
35.弁済の提供とはどのような制度であり、弁済の提供があった場合にどのような効果が生ずるか、また、どのような行為をすれば弁済の提供があったと言えるかを説明することができる。
①弁済の提供と責任の軽減
Ex)代金債権については、その金銭を現実に引渡せは、完全な弁済となる
But)相手が行方不明 Or わざと受け取らない
⇒債務者は弁済ができない
So)債務者側で為しうる、必要な準備をして、債権者の受領を求めるところまでいけば、債務その者は消滅しないが、不履行の責任は免れる(契約解除・損害賠償)
=「弁済の提供」による「責任軽減」という
②弁済の提供の方法
㋐現実の提供
対象)給付内容が単に債権者に受領されれば良いもの
How)給付場所へ持参する〔493〕本文
E)金銭を持参したが、債権者が留守だったとき、「現実の提供あり」となる
⇒弁済提供の原則
㋑口頭の提供
When)債権者が予め受領を拒んだとき
要件)債権者は、
ⅰ)債務の弁済に必要な準備を完了
ⅱ)債権者に取りたてに来るように通知する(催告する)
効果)弁済提供の効果が生じる
When)弁済に元々債権者の行為が必要なときも同様
・最初から債権者が取りたてに来る契約
・弁済地を債権者が指定した契約
36.供託とはどのような制度であり、供託によってどのような効果が生ずるかを説明することができる。
供託は、供託者(債務者など)が供託所に弁済の目的物を寄託して、債務その者をしょうめつさせる制度である。
法構成)①供託者が供託所に目的物を寄託
②債権者が供託所に目的物の引渡請求権を取得する
⇒供託は、供託者と供託所の第三者のためにする契約
【供託原因】
①債務者の受領拒否
㋑債権者が受領を拒む、㋺受領をすることができない
Ex)アパートの貸主が法外に賃料を値上げして、前の家賃では受け取らないと言ってきたとき。
⇒借主は、従前の家賃或いは適当と思われる値上げ額を上乗せして供託すればよい
判例)債権者が受け取らぬと分っていても、債務者は口頭の提供が必要だとするが、学説は不要
②債権者不確知
債務者が過失なく債権者を確知できないとき
Ex)債権者が死亡して、相続人がわからあない
EX)債権が二重に譲渡されて、その到達の先後がわからない
How)
場所;債務履行地の供託所〔495①〕
目的物:金銭、
※不動産の場合には、裁判所が弁済者の請求によって供託物保管者を選任してその者に保管させる(②)
※弁済の対象物が腐敗しやすいもののように、滅失・損傷の虞がある場合は、弁済者は、裁判所の許可を得てそれを競売してその代価を供託することができる〔497〕
なお)債権額の一部だけを供託しても、その部分についての債権消滅を主張することはできない
【供託物引渡し(還付)請求権と供託物取戻請求権】
供託すると債務者の債務は消滅するから、あとは債権者が供託所に対してその目的物の引渡し(払渡し)請求権を持つことになる。
※代金を供託された売主は、まだ買主への反対債務(物品の引渡し)を履行していなければ、この引渡し請求権は行使できない・
また)供託は債務者の利益のために認められているのであある。
So)供託者(債務者)は、もし債権者の不利益にならないのであれば一旦した供託を撤回して供託物を取り戻しすることもできる(取戻請求権)。
※但し、債権者が供託を受諾したときは、この取戻は認められない。
∻)第三者のためにする契約
第三者のためにする契約〔537〕では、受益者が受益の意思表示をしたときには、それを撤回できない〔538〕
4 弁済による代位
37.弁済による代位とはどのような制度であり、どのような場合に弁済による代位が認められるかを、具体例を挙げて説明することができる。
他人のために債務を弁済してやった第三者が、債権者の地位に取って代わる制度である
Ex)債権者Aが債務者Bに対する債権の、保証人である第三者Cと、物上保証人Dが有る場合
①債務者Bが無資力に也、保証人CがBに代わってAに全額弁済
②Cは弁済した全額をBに求償するが、Bには支払い能力なし
③このとき、Cは、債権者Aの立場に取って代わり、以下を行使する
㋐AのBに対する債権
㋑AのDに対する抵当権
Mean)第三者が債務者の代りに弁済したとき、その弁済者は、求償権の範囲内で、弁済によって消滅するはずの、債権者の債務者に対する債権(原債権)とそれに付随する担保権などの法的な移転を受けて、これを行使する制度(求償権の実現を確保!!)
用語問題)民法では、「代位弁済」というが、制度の趣旨は、代って弁済することによる、その結果として、弁済者が債権者の地位に取って代わることを問題とするので、
So)「弁済による代位」というへき
【成立要件】
1⃣債権者を満足させる出捐が有ったこと
○代物弁済や供託も含む
2⃣弁済者に求償権が発生すること
Why)弁済による代位は、求償権の実現を確保する制度なので、弁済者が債務者へ贈与の意思で弁済するなどの様に、求償権を放棄しているときは、成立しない
★任意代位
Who)弁済者は誰でもOK
【効力要件】
代位することについて弁済と同時に債権者の同意(承諾)を得る必要〔499①〕
【対抗要件】
債務者や第三者に対抗するため、債権譲渡の時と同じ対抗要件〔499②〕
★法定代位
Who)弁済をする正当な利益のある者
Ex)代って弁済しなければ、自分が強制執行に遭う可能性のあるもの
【効力要件】 不要 ※債権者の同意なしで当然にできる
【対応要件】 不要
Mean)弁済をする正当の利益ある者
保証人・物上保証人・連帯債務者・後順位抵当権者・担保目的物の第三取得者等
38.弁済による代位によって、代位者がどのような権利を行使することができるかを、求償債権と原債権の関係に留意しながら、具体例に即して説明することができる。
【効果】
弁済による代位があると、弁済者は、求償権の範囲内で、以下の効果が生ずる
㋐債権の効力
債権者が持っていた一切の権利・権能〔501本〕
Mean)債務者に対する履行請求権
損害賠償請求権
債権保全のための債権者代位権
詐害行為取消権
㋑債権の担保
債権者が持っていた物的担保・人的担保についていの一切の権利・権能
注意)あくまでも求償権の範囲内
〔502〕一部代位
一部だけ弁済したときは、その部分のみ代位が生ずるので、代位者は、その弁済した価額に応じ、残存部分につき、なお権利を持つ債権者と共に(?)その権利を行使できる
39.法定代位をなしうる者が複数存在する場合に、その相互関係がどうなるかを、条文を参照しながら、具体例に即して説明することができる。
What)法定代位者となり得るものが複数いて、その内の一人が弁済したときの処理
=誰が弁済しても、その立場によって代位する条件が一定であるようにしておく〔501〕
㋐保証人と第三取得者
債務者Bが担保設定した目的物を債務者から譲渡などで取得した物
〔501<1>〕保証人は弁済したら、全額につき、第三取得者に対して代位できる
〔501<2>〕第三取得者は弁済しても、全く保証人に対して代位できない
※その目的物が不動産であるとき、「予め代位の付記登記をしなければ、保証人は、第三取得者に代位できない」との規定
Mean)保証人の弁済があったとき、その代位の付記登記をしておくことにより、弁済により担保権は消滅したものと信じて担保不動産を取得した第三取得者の損害から保護しようとする趣旨
So)保証人が弁済をした後に現れた第三取得者に関する規定
⇒第三取得者が取得後に、保証人が弁済をした場合は、この付記登記は不要である(通説)
Why)第三取得者を債務者に準じて評価すれば当然
Mean)保証債務
保証人が弁済すれば、主たる債務者に全額求償できるが、主たる債務者が全額弁済しても保証人に一切求償できない
㋑債務者の担保物が複数あり、それぞれに第三取得者があるとき
⇒第三取得者相互では、それぞれが取得した不動産の価額に応じて代位する
㋒物上保証人が複数あり、その一方が弁済したときの物上保証人間の関係
⇒その担保に供した不動産の価額に応じて代位する
㋓保証人と物上保証人が有り、その一方が弁済したとき
⇒頭割りで、人数に応じた平等の割合で代位す
㋔保証人相互間
⇒(明文無し)当然頭割り
第三節 代物弁済
40.代物弁済とはどのような制度であり、その効果が生ずるためにはどのような要件を備えている必要があるかを、具体例を挙げて説明することができる。
Ex)債権者Aが債務者Bに対する1000万の貸金債権に対して、債務者Bが所有する土地をもって、弁済したい旨を申しこみ、債権者Aがそれを承諾の上、弁済する行為を指す。
Mean)債務者が、債権者と合意の上、本来の債権の給付内容と異なる他の給付を現実にすることによって、本来の債権を消滅させることである〔482〕
特徴)㋑債権者と債務者の合意を要すること
C.F単なる弁済(準法律行為)と異なり、一種の契約である
㋺代りの給付が現実になされないかぎり、その効果が認められない(要物契約)
Mean)「他の給付」
㋑本来の給付に相当する価値を持つ必要ななし
Ex)1000万の代りに800万の土地 Or 1200万の土地
㋺性質の違いも問わない
※あまり過大な価値の者による代物弁済は、公序良俗に反し、無効〔90〕
So)一般に、本来の金銭債務額より価値の大きいものによる代物弁済されることが多い
So)詐害行為取消権では、代物弁済は本旨弁済とはことなり、原則的に詐害行為と認定する!
【効力要件】
1⃣所有権移転の効果〔176〕意思表示
Mean)代物弁済契約時に生ずる
2⃣債権消滅の効果〔178など〕
Mean)第三者対抗要件の具備
Why)二重譲渡を防ぐため
★代物弁済の予約
Ex)債権者Aは債務者Bの返済できなければ甲土地の所有権を移転する旨の申込を承諾した
…この合意は代物弁済そのものではない
Why)代物弁済は、現実に給付があって初めて成立する(要物契約)
So)精確には、停止条件付代物弁済契約
期限に弁済しない時は、Bの土地はAに移転するという予約である
なお)代物弁済の予約の内、不動産を目的とする者
・仮登記による順位保全効
・差額の清算義務
Mean)目的物の価額と、被担保債権額
第四節 相殺
41.相殺とはどのような制度であり、どのような機能を果たしているかを、具体例を挙げて説明することができる。
Ex)Aが有する300万の貸金債権と、Bが有する200万の売掛債権が存在するとき、
ⅰ)AがBに貸金の弁済を求めたとき
ⅱ)BがAに対して、一方的な意思表示によって、対当額について双方の債権・債務を消滅させることができる
このとき)
β)Bの200万の債権を、自ら相殺を働きかける債権として、自働債権といい
α)Aの債権は、相殺を受ける債権んとして、受働債権という
法的性質)
単独行為
※双方の債権が同種であるなどの制約あり
⇔双方の契約により債権債務の消滅をさせる清算とは異なる
・・・双務契約
その他)停止条件付相殺契約又は、相殺の予約
Mean)将来一定の条件を満たしたときに相殺する旨の合意
★相殺制度の機能
㋐決済事務の簡略化
時間と費用が節約でき、弁済の目的物を動かさなくてもいい
㋑当事者の公平を図る
Ex)一方が支払って、他方が支払う前に他方が倒産すれば、甚だ不公平
㋒担保的機能
Mean)相殺ができるといいうことは、対立する債権・債務がその対当額の範囲で、相手が弁済せずとも回収できる(人質)、と言う意味で、お互いに担保の機能を果たし得る
So)実務上は重要
Why)総裁は最も簡便迅速な債権回収手段であり、相殺をかけ確実に実現する方法が、担保的機能の確保である
42.民法で規定される相殺が認められるためにはどのような要件が備わっている必要があるかを、具体例に即して説明することができる。
【成立要件】 相殺適状
相殺を為し得る要件を具備する債権の対立状態を相殺適状と言う
〔505①本〕
①債権の対立
原則として、相殺するものと相手方との間に相互に債権が対立していることが必要
※保証人は、主債務者が債権者に対して持つ債権を使って相殺できる(保証人の対立債権でない)
※債権譲渡のときの債務者Bは、譲受人Cからの請求に対しては、譲渡人Aに対して有する債権で相殺できる
②双方の債権が同種の目的をゆうすること
双方の債権の目的(給付物)が同種のものでなければならぬ
Why)一方的に相殺を許す制度なのに、たとえば、一方が金銭で、一方が特定物の引渡し債権では、相殺ができない。
③双方の債権が弁済期にあること
債務者は契約で定めた弁済期が来るまで、弁済しなくてもよいという利益を有する(期限の利益)
Ex)前例においても、一方の弁済期が到来していないのに、相殺しなければならぬとすば、一方の期限の利益を損なう
※〔136②〕期限の利益を放棄することができる
So_)まだ払わなくていい一方が、期限の利益を放棄して、自ら相殺することを得
【効力要件】
〔506①本〕相手方に対する意思表示
【効果】
双方の債権はその対当額において、消滅す
Ex)前例では、A⇒B 100万のみ残る
When)債権消滅の効果は、相殺の時点ではなく、双方の債務が相殺適状を生じた時点に遡及して、生じる〔506②〕
なお)相殺の相手方が相殺適状にある複数の債権(受働債権)をゆうしていて、その総額よりも自働債権の額が少ないとき、相殺の充当の問題が生じるが、民法は〔512〕充当の規定を準用する
★相殺の禁止
①債務の性質による相殺禁止
〔505①但〕同種の目的を持った債務同士でも、債務の性質によっては、、相殺がゆrつされない
Ex)お互いに騒音を出さない不作為
②当事者の意思表示による相殺禁止
〔505②本〕当事者が債務の現実の履行を求め、相殺を禁じる旨の意思表示をしたときは、相殺できない
※この禁止の意思表示は、善意の第三者に対抗できない
∻)債権譲渡の禁止特約と同じ
③法律による禁止
㋐不法行為に基づく債権を受動債権とする相殺
Ex)Aが運転する車でBをはねたが、加害者Aは被害者Bに貸金債権を持っていた。
(Bに対して、貸金債権を有するAが交通事故でBにけがをさせ、不法行為にもとづく損害賠償がBにしょうずるとき)
⇒不法行為に基づく損賠債権を受働債権として、相殺できない
Why)被害者の現実の救済
So)被害者Bから不法行為の損賠債権を自働債権として、相殺することは差し支え無し
なお)双方の債務がいずれも不法行為債権であっても、相殺できぬ
※いずれの場合にも、当事者が合意すれば、相殺契約をして、差額だけを支払うことはOK
43.差し押さえられた債権を受働債権として相殺することができるか、できるとすればその要件は何かについて、判例・学説の考え方と問題点の概要を、具体例に即して説明することができる。
「差押」と「相殺の優劣」の問題
EX)A⇒B 300万(貸金)
B⇒A 200万(売掛)
このとき)Aの債権者Cが、AのBに対する貸金債権を差押えしたとき(差押されるとその債権は勝手に弁済したりできなくなる。差押えた債権者Cは、その弁済を差止めた債権200万に対し執行し、自己の債権を回収する)、
㋑Cの差押えが優先して、BはCの債権執行に服さなければならないのか?
㋒Bはなお相殺して200万の優先して回収できるのか?
民法)第三債務者(AとCの関係では、Bが第三債務者となる)は、支払いのさし止めを受けた後に取得した債権により相殺をもって差押債権者Cに対抗できない〔511〕
Mean)Cが先にAのBに対する債権に差押えをして、その後にBがAに対し反対債権を有しても相殺できない。
=Aの債権に差押えがないうちに、BはAに対する債権をしゅとくしたなら、CがAの債権を差押えても、Bは相殺可能となる。
Why)支払いのさし止めを受ける前に取得した債権については、相殺により回収できるという期待を保護し、他の債権者の債権執行に優先させるという主訴。
But)相殺をするためには、双方の債権が弁済期にある必要がある。
判例)
1)相殺を制限する説
制限説)自働債権の弁済期が到達していたらOK
反対債権が先であればNo
2)相殺の期待を保護する方向へ
⇒差押えの時点でとにかく対立する債権がある限り、相殺が優先する。
第五節 その他の債権消滅原因
44.更改とはどのような制度であるかを、具体例を挙げて説明することができる。
45.債務免除とはどのような制度であり、その効果を生ずるためにはどのような要件が備わっている必要があるかを具体例を挙げて説明することができる。
46.混同による債務の消滅が生ずるのはどのような場合か、またその例外はどのような場合に認められるかを、それぞれ具体例を挙げて説明することができる。