ひと日記

お気に入りのモノ・ヒト・コト・場所について超マイペースで綴ります。

マティーニ

2009-11-03 19:12:57 | お気に入り


 昨日は日中銀座を散歩した後、夜から突然振り出した冷たい雨に誘われてか、急に一人飲みたくなり久しぶりに西麻布へ向かいました。

 西麻布は私が20代前半の頃、職場がこの街にあったのでたいへん思い出深い場所です。私が向かったのはオーナーバーテンダーのSさんがお一人で切り盛りされているカウンターだけの小さなBarで、私の唯一の行きつけのBarです。Sさんとはもうかれこれ20年近いお付き合いになります。

 Sさんと久闊を叙しつつ、このブログのために写真を一枚撮らせていただきました。携帯電話のカメラなので写りはイマイチですがマティーニです。マティーニは最近やっとその美味しさがわかるようになってきて、今では最もお気に入りのカクテルの一つですが、未だにオリーブは先に食べるべきか後に食べるべきか、はたまた中頃に食べるべきか、そして種はどこに置けばいいんだ!と一人悩んでいます汗(因みにこちらでは小皿を添えてくれますので安心です)。その後、ヨコハマ、それからハイネケンと赤ワインをいただきました。

 17年前にSさんとこの店と、最初に出会ったときの衝撃は今でもよく覚えています。その頃まだ社会に出たばかりの私は知人に連れられこの店に来たのですが、看板の無い店の扉を開けた先に待っていたのはまさに大人の世界でした。青い照明(私は色の中で青が一番好きです)に照らされ壁に並んだボトルやグラス、漆黒のカウンター、豊かに飾られた大きな活花・・・店の姿は今も当時と変わらず、ここだけ時間が止まっているかのように大人のための時間と空間を提供し続けています。Sさんは私とほぼ同世代なのですが、当時、若くして既にオーナーとしてカウンターに立つ姿は凛として、それもまた今でも全く変わりありません。

 そういえば、ボルサリーノの存在を最初に知ったのはこのお店でした。もうそれこそ20年近く前になるのでしょうが冬の時期だったでしょうか、仕立ての良さそうなコート(今思い出してみるとカシミアのチェスターだったでしょうか)に鍔つきのグレーの帽子を被り一人でふらりとやってこられた老紳士がいて、Sさんがさりげなく『素敵なお帽子ですね。ボルサリーノですか?』と訊ねていた光景が一幅の上等な絵画のように、当時まだまだ小僧だった私の目に焼きついて、以来ボルサリーノにはずっと一種憧れのようなものを抱いていました。

 邂逅以来そんな風に多くのことを学んだ場所ですが、その中で最も大切なことがSさんに教えてもらったことです。お店とお客さんの関係について話をしていたときだったと思うのですがSさんは私にこう言いました。『その人にとって最も大切な場所は、そのひとを知ってくれている人がいる場所』と。他愛の無い雑談の中の言葉だったのかもしれませんが、今でもこの言葉は私の大事な人生哲学であり続けています。マティーニ一杯で大袈裟かもしれませんが、そんなことを改めて思い出した夜でした照。もちろんこのお店を知っていることそのことが私の貴重な財産の一つであることは言うまでもありません笑。