ひと日記

お気に入りのモノ・ヒト・コト・場所について超マイペースで綴ります。

Fugeeの時計ベルト

2009-11-10 01:25:52 | お気に入り
  
 
 暦は立冬を過ぎましたが暖かい陽射しの続く今日この頃・・・渋谷のオーダー鞄のお店『Fugee』さんにお願いしていた腕時計のベルトを受け取りに行ってきました。『Fugee』さんは完全オーダーメイドの手縫い鞄の製作をメインとされていますが、革小物の類も充実しています。中でも今回私が心魅かれたのは腕時計のベルト。

 

 このブログに頻繁に登場していただいている信濃屋の白井さんを筆頭に信濃屋流スタイルの方々は決まって革ベルトの腕時計をシャツのカフの上から巻いていて(但しこのスタイルは信濃屋流だけに限らないようで、有名な方ではイタリアFIAT社オーナーの故ジャンニ・アニエリ氏や、名門テキスタイルメーカーCARLO BARBERAのオーナー、ルチアーノ・バルベラ氏などもこのスタイルですね!)、ステンレススチール製のスポーツウォッチを虎の子の一本としている私は、彼らのスタイルに以前から密かに憧れていました。

 

 ただ、ベルト一つで大袈裟なことですが、私には悩みが一つありました。それは私の時計はスポーツウォッチで、方々の嵌めている腕時計は皆ドレスウォッチという点。やはりカフの上から巻くのであれば薄く作られたドレスウォッチが品良く様になるのは必定、ということが一般的に言われています。かといって高価なドレスウォッチは高嶺の花、若僧の自分には今の時計がお似合いさ、と自嘲気味に半ば諦めていました。

 

 ですが最近、壮年の頃のジャンニ・アニエリ氏がステンレス製ベルトのスポーツウォッチをカフの上から巻いた姿が写っている一枚を偶然ネット上で発見し、『うわ!なんだアリなんじゃん!』と勇気づけられると同時に、氏の自身のスタイルへの拘りに一種の凄みも感じ、一般論や潜入観に囚われ小さな差異に思い煩い、愛着ある時計を軽んじていた我が不明を恥じました。

 

 そのようなあれやこれやの思案と、やはり秋冬の装いには温もりを感じさせる革のベルトを巻いてみたいという想いと、昨年から『Fugee』さんを知るに及び、そのモノ造りへの姿勢に感銘を受けていた私としては、是非この職人さんの作ったベルトを腕に巻いてみたい!、という気持ちが重なり今回作製をお願いした次第です。

 

 『Fugee』さんの革ベルトは職人の藤井さんが独自に研究し完成させた『設計図』に、計測した時計の各所の寸法、腕の太さ(下の写真の4枚目は藤井さんお手製の革の計測用腕模型です!)などの数値を入力し、その人の腕に時計が巻かれた時に最も美しく映えるベルトの形(長さ、幅、厚みと時計本体からベルト先端にかけてのテーパード具合など)を導き出してから作製するというシステムです。もちろん全て手縫いですから依頼主の意向も十分に反映してもらえますし、ステッチの色、革のバリエーションは豊富であることは言わずもがな。尾錠は自分の好きなものを持参することもできますし、『Fugee』さんオリジナルのもの(各種ゴールド、スターリングシルバー、ステンレススチール)も選べます。

   

 また藤井さんには『うちのオーダーならベルト穴一つがカッコいい』と奨められ、これには驚きました。ハンドメイドなんだから穴の数は自由に選べるのはある意味当たり前のことともいえますが、藤井さんはその時計が最も美しく見え尾錠が腕の内側の真ん中にぴたりと収まるように計算され穿たれる『一つ穴』を誇ってらっしゃいました。『かっこいいとはこういうことさ』と言わんばかりの潔さです汗。ただし今回は、まだまだ自分のスタイルが確立できていない未熟者の私用ですので、穴はジャストワンの両脇に一つづつ計3つ空けていただきました汗。

 

 さらに『一つ』繋がりでもう一点、『Fugee』さんのベルトにはベルトループ(サル革と言うそうです)も一つしかありません。こちらについては藤井さんのアシスタントのKさんが、『ベルトがジャストサイズならサル革は二つも要らないでしょう。』と静かに力説していました汗。『Fugee』まさに恐るべし汗。因みにこのサル革、通常はベルト部分に簡便にボンドで固定するメーカーが殆どだそうですが、『Fugee』さんではサル革も糸留めされています。これも手縫いに拘るこちらならではのディティールです。

 

 さて、昨年鞄を購入したときは、その鞄は既に完成品でしたので良かったのですが、今回は自分で素材選びからしなければならず非常に悩みました。ベルトの形状は藤井さんにお任せで問題ないのですが、はてさて素材をどうしたものか・・・最初は無難にクロコダイルで、色は私が茶の靴を好んで履くことや時計の文字盤が黒ということもあり焦げ茶で行こうと考えていたのですが、耐久性に優れエイジングが最も楽しめるボックスカーフにしようか、オーダーならではの素材であり独自のエイジングをするというエレファント(ワインレッドのステッチが施されたサンプルの墨色のエレファントがまた実にカッコいい!)しようかと、悩み始めたらキリがなく頭を抱てしまいました。ですが、私がさんざん悩んでいる様を見て藤井さんが最後に控えめに『僕はクロコが一番綺麗だと思ったよ』と仰った言葉に背中を押される形で焦げ茶のクロコに決めました苦笑。

 

 裏打ちはボックスカーフの茶、尾錠は『Fugee』さんオリジナルのステンレススチール。ステッチの色はもちろん、かの名店のオリジナルシューズのステッチにしばしば見られる信濃屋流こだわりの白!これは最初から決めていました笑。

 

 また長々と書いてしまいましたが、最後に・・・藤井さんもKさんも時計に関しては全くの素人ですとご自身方が仰っていて、お二人が計測のとき私の時計をもの珍しそうに『うわ、重いなぁ!・・・』とか『あ!裏が透けてる!・・・』とか仰りながら(因みに私の時計は結構ポピュラーな方だと思います汗)覗き込んでいた姿が、不遜ですが、なんだかとても微笑ましく、と同時にそんなお二人が作り出した鞄やベルトが異彩を放つほどに美しく、生命を宿すがごとき温もりを感じさせ、私の心を捉えて離さない理由や、『モノづくり』の本質の一端が垣間見れたような光景でもありました。

 

 また一つ私のワードローブにパーマネントコレクションが加わりました笑。今回も無理をお願いして『Fugee』さんの店内での撮影です。藤井さん、Kさん、お仕事の邪魔ばかりして本当に申し訳ありませんでした。そして、ご協力有難うございました。年内にもう一度伺って経過報告をしたいと思います。
 
 FugeeさんのHPです→http://www.fugee.jp/