英語が全く話せないA君と向き合い、やっと色紙で接点を見つけ問いかけをした先生。それに対し、不安いっぱいの中で、A君は言葉を返す。「赤」、「黄い」・・・。そして、先生も気を取り直し・・・やっと心理療法の必要にして充分な6条件の4、5番目のステージに入ってきたようだ。
先生はこのロジャーズの6条件を理論的に当時知っていたかは不明である。1950年台後半の時期であったので、ひょっとしたらロジャースの理論を知っていた可能性はある(ロジャースは1950年台はじめに論文を発表)。それは、ともかく。先生は私の発する「赤」、「黄い」・・・を心をこめて静かに聴いてくれた。途中で遮ったりすることもなく、淡々と。
その時の、先生の表情は、私の気持ちを反映しているようで、不安げで、私の感情に共感しているようであった。恐らく、その時間は1-2分だったのだろうが、とても長く感じた愛の傾聴の時であった。
愛の傾聴とは、やはり普段の生活ではなかなかできないものだ。このブログで8月18日から23日にかけてお話した傾聴の6ポイント、①無防備②共感性③受容性④間⑤理解力⑥熱意を意識して傾聴する必要がある。簡易版として、「生き甲斐の心理学」135ページに、その極意が出ているので、こんな感じだと理解していただければ幸いである。
①無防備・・・かまえや、かざりがなくリラックスしていた。
②共感性・・・あたたかみと共感性があった。
③受容性・・・相手のあるがままを受け入れ質問にも嫌みがなかった。
④間・・・・・・・ゆったりと間をおいて応対した。
⑤理解力・・・相手の要点を的確に把握した。
⑥熱意・・・・・相手に興味、関心をもち、かつこれを相手にも態度で示した。
そして、先生は置かれた私の境遇を感情の深い理解を通し、嫌味のない感情表現で応えてくれたようだ。
因みに、ロジャースの4,5番目の条件を次に記す。明日で6条件となる。蛇足だが、ロジャースの6条件は、どんな人でも適応できる理論で、むずがっている幼児、不安定な認知症の方、意気消沈している方等、身の回りで応用できる機会は結構多い。ただ、初心者には難しいので、『生き甲斐の心理学』勉強会等で学ぶと力がつく。9月30日(日)にも公開の気楽な勉強会を企画していますのでどうぞ!
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<治療者はクライアントに対して、無条件のPositive Regard(好意、肯定的な配慮と関心)を経験する。>
<治療者はクライアントの内的枠組みについてのempathic(共感的、感情移入的)な理解を経験し、この自らの経験を、クライアントに伝達しようと努力する。>