青春時代、父親の存在はうっとうしかった。何か言うと「屁理屈は言うな」とか「掃除しろ」とか「逃げるな」とか・・・
何か理不尽でわけがわからない頑固おやじと感じたことも正直あった。
ところが、今、この年になり、生き甲斐の心理学を10年以上学んでくると、うむと唸ることがある。頑固おやじも一理あるのだ。
人間の心の健康には大切なのだが、人間の成長に障害になる心の仕組みがある。心理学者フロイトが言い出して近年有名になった「防衛機制」だ。14の防衛機制(抑圧・抑制・昇華・合理化・感情転移・置き換え、知性化、退行、逃避、同一化、摂取、投影、反動形成、補償)として有名だが、これが実に問題なのだ。
青春時代で知的にも育ってくると、例えば知性化、退行、逃避など、それゆえに人間の成長の壁となってしまうものもある。自分の青年時代を振り返ってみても、自分の五感や体感から離れ、観念にはまってしまい、根なしぐさのように彷徨ったことも。その危うさを父親は見抜き頑固おやじに徹する。理屈を理屈で対抗しても余り意味はないのだ。ダメはダメ。
自分の頭で感じ、考え、行動するという成熟さにまで行き着かないとき(今の自分でも結構多いが)。どこかに自分が消えて本来の回答が見えないのにうごめいている時。きっと父は悩み頑固おやじを選択したのかもしれない。
可愛い子には旅をさせろということわざは、人類の歴史ほど昔から語り継がれている大切な知恵だ。旅に出て、五感と体感を成長させること(生き抜く上では、単なる観念だけでなく五感や体感が実に重要)。そして旅を経験をする中で、自分の中の知性の無力さを知り、感情や身体の意外な側面(知性より優れている面)を知ったりする。
ひびきあう旅④ 9/10