クワガタ~スズメバチ等の覚書

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朽木屑を運ぶオレゴンルリクワガタ♂

ネプチューンは日本で暮せるか?

2016-02-13 18:44:12 | ネプチューン

ネプチューンオオカブト Dynastes neptunus



 

ネプチューンオオカブトは(以下ネプチューン)南米のアンデス山脈西側に分布し

ヘラクレスオオカブトと混生していますが本種の方が個体数は少ないようです。

↓左:ネプチューン  右:ヘラクレス


また、鈴木知之 著「クワガタ・カブトムシ飼育大図鑑」によると

標高2000m付近で日中でも23度くらいの湿度の高いところで発見されたり

明け方の気温の低いとき(14.8度)にライトに飛来することもあるそうです。



これらのことからネプチューンは比較的耐寒性があり

高温には弱い種ではないかと想像するのですが

実際に生存可能な温度範囲は判りそうで案外判らないのです。

これは多くの種で言えると思います。

2015年1月までに飼育するのに十分な数の卵が得られました(48卵)





これらの卵(幼虫)を15~23度くらいの温室で管理すると

翌春の餌追加時(2015年5月)には2~終齢へと育っていました(密飼)

気になっていたプチューンの生存可能な温度範囲を探ろうと思いついたのはこの時です。



実験は、2齢~終齢幼虫28頭を自然温度で飼育するという単純なものです。

環境

期間=2015年5月GW~2016年2月7日

n =春~夏期:28(2~終齢:密飼)・盛夏以降~冬季:10(終齢)

場所=屋外軒下   容器=約45L(容器蓋ロック)

餌 =市販のカブトマット  温度=自然温度

その他=床コンクリート・周囲封さ・ブロック塀有り・雨水、雪浸入無し・直射日光ほぼ無し





最初は高温・日本の夏~2015

近年、日本の夏は非常に暑く、30度は当たり前です。





35度を超えることも珍しくなくなってきました。

こうした温度帯でネプチューン(2~終齢幼虫)は生存できるのか?



9月に入り、盛夏を超えたと思われるのを見計らって幼虫の確認をしました。

最初に見えたのは動く終齢幼虫でした。

最終的に2~終齢幼虫と思われる5頭の死亡を確認したたものの

多くの個体が盛夏をやり過ごしていたのです。

この時の生育ステージは、終齢前~中期にかかった感じで

盛夏を終齢というステージで過ごしたものと思われました。

盛夏を生き延びた幼虫から10頭をランダムに選び

餌追加した容器に入れて所定の場所に戻しました。

実験の継続です。



そして、実験対象外の幼虫は虫友二人が引き受けてくれたので安心です。


次は低温・日本の冬~2016


私の住む地域は、冬季に何度か池の水が氷るときがあります。


氷点下になるのです。

今年の冬は、暖冬と思わせながら奄美に雪を降らしたり

台湾でも降らない地域で降雪があるなど

記録的な寒波がやってきた日もありました。


↓↑寒波による金魚船の氷結


ネプチューンの保管場所は、上記金魚船のすぐ近くです。

10頭の幼虫が気になります。

記録的寒波が過ぎた2月7日

恐る恐る容器内のマットを掘ってみました。

半分くらい掘ったところでなにやら黒みがかったものが・・・

出てくる幼虫全てが少し黒ずんではいるものの白い部分も残しており

スプーンでそのまま取り出せました。

動くことは有りませんが、どれも原型をとどめて見えるため

色形だけで生死の判断はこのとき出来ませんでした。

取り出した幼虫の弾力なども確かめたとき

表面が凍っている様子こそありませんでしたが

10頭すべて死亡していることが判りました。

(この時の画像は撮っていません)



外観から生死の判断が付き難かったのは

低温のせいか、死後さほど経過していないためかは不明ですが

感覚的な印象として、早い時期に死亡したようには思えませんでした。

また、マット内に空洞らしきものは見当たらず

幼虫はマットに埋まったような状態でした。

ネプチューンは日本で暮せるか?



2015年の夏、30度超でも生存する幼虫がおり

快適であったかどうかは別として

ネプチューンは思いのほか高温に耐えることが判りました。

一方、2016年2月の調査では終齢幼虫10全てを失いました。

原因は低温によるものと考えます。

今回の実験で終齢幼虫のおおよその耐寒温度も判ると思ったのですが

厳寒期まで掘り出し調査を延期してしまったためそれは叶いませんでした。

私たちの暮す日本には、冬季に氷が張るような地域が沢山あります。



少なくともそういった場所では

ネプチューンオオカブトDynastes neptunusは生存できない」と

今回の実験で判断するに至りました。


最後に

今回の実験は非常に大雑把で、また酷な結果を招いてしまいました。

今思えば気温5度くらいが続いた時にも調査をしておくべきでした。

虫友の手元に行った幼虫が本来の雄姿を魅せてくれることを楽しみに

これをもってネプチューンの飼育を終了します。



参考文献:
鈴木知之,2005,クワガタ・カブトムシ飼育大図鑑.世界文化社.


ネプチューン・3

2015-01-04 15:01:09 | ネプチューン

1月4日、いよいよ正月休み最後の日

気になっていたネプチューン3回目の掘り出しを行いました。

オスはすでに☆になって土の中。




メスもマットに頭を突っ込んだ状態で☆になっており

そこで力尽きたようです。

☆メスを庭に埋めた後

容器に8分目ほど入ったマットを注意しながら掘っていきます。

ふわりとしたマットの部分からは何も出てきませんが

固く敷き詰めた底部に差しかかったあたりから

徐々に初二齢幼虫が出てきました。




その数8頭、そして黄色味がかった卵も一つ出てきました。

↓ 中央部に卵



出てきた卵は産卵から恐らく1か月前後経過していると思います。

今回の9頭(1卵)とこれまでの分39卵を合わせると 

計48の産卵が認められました。




そのうち前回取り出して残しておいたものと

今回分を合わせた計28頭が手元に残りましたが

管理スペースからして密飼いしかできないので

タイミングを見ていくつかを手放すことにします。

これらの幼虫が羽化するのは再来年のことで

気長な飼育の始まりです。


ネプチューンオオカブト

2014-10-05 15:24:13 | ネプチューン

今日、ネプチューンの産卵状況を確認しました。

ネプチューンの産卵セットをしてから47ほど日経過しています。 

最初の産卵確認は9月2日

産卵確認数7個でした。

それから33日後の今日、10月5日 

産卵確認数は32個でした(幼虫0頭)

47日間ほどで39個の卵を産んだことになります。

一日の産卵指数は0.82個




もちろん この間餌を絶やしたことはありません。

卵の状態を観察すると、大きさや色に違いがあります。

小さいものは白く、米粒のような楕円形で

大きなものは丸みがあり黄色がかっています。

それが 成長している証です。




産卵数39個が多いのか少ないのかは判りませんが 

飼育するには多すぎ、出来てもせいぜい ”10”。

最初の卵7個は里親に出ましたが、残り20個以上が問題です。

またネプチューンオオカブトは幼虫期間が1年以上あるので飼育は気長です。


残念ながら親♂は☆になりましたが 

羽化から5か月以上生きてくれました。



それにしても綺麗で立派なカブトムシでした。 




一方 ♀の方は39個の卵を産んで 

動きこそ鈍くなりましたが生きています。

この状態でまだ産むのだろうか? など思いながら




回収した卵を別容器に移し、♀を再びセットした容器に戻しました。

*最初の産卵確認は「南米の大きなカブトムシ」で書いています。


南米の大きなカブト虫

2014-09-02 11:23:46 | ネプチューン

南米にはヘラクレスオオカブトやゾウカブトなど

非常に大きなカブトムシが分布しています。


画像奥がヘラクレスオオカブト・手前がネプチューンオオカブト



今日はその中のネプチューンオオカブトを載せてみます。



今年7月中頃に展示会用としてオスを入手しました。

大きさは体長約135mm、まあまあの個体です。






一週間の展示会が終わり

さて このネプチューンどうしたものか?

少し悩みましたが とりあえずは飼育することにしました。

が、どうせ飼うなら♀も一緒にということで 

8月上旬にメス到着!


点刻が多い! 上翅中央付近に微毛が二筋



このぺアは同腹で、コロンビアのサンタンデール産です。





一週間ほど別々に飼育して

その後2回交尾、そして産卵セットを組みました。




セットから10日ほど経過した今日

産卵の確認をしたところ

7個の卵を見つけました。

一日の産卵指数は0.7個位でした。




母虫が誤って潰してしまわないように7つの卵は回収し

別の容器で管理します。

そして、母虫の容器にはマットを追加し

底から10cmほど固く詰めて

その上に軽くマットを載せ、再び母虫を入れました。

次の産卵床の出来上がりです。

卵の大きさは米粒より少し大きく楕円にした感じです。

卵は新しいものほど白味が強く、

日にちが経つにつれ、クリーム色がかってくるようです。




このカブトムシのグループは体に微毛が多く

特に♂の胸角や、頭部・お尻の付近は顕著です。


♂ 頭部


♂ 腹部末端


♀ 腹部末端



♂胸角下部のライン状にある微毛は

フェロモンを出しているとの説もありますが 

詳しくは判りません。

個人的には体の微毛が果たす役割の一つに

害となる生物の付着防止と

湿度・水分との関係があるのでは? と思っています。


また、♂は気性荒く

少し触るとシューシューと威嚇発音し、独特の臭いも出します。


♂ 正面1


♂ 正面2



甲虫類は、胸部と腹部との接合部が急所で

そこに刺激を与えると画像のように強い力で挟みます。

場合によっては人の指が切れてしまうほど恐ろしい場所です。

試しに500円コインで触れてみると

がっちり挟んだまま離しませんでした。

市場流通量の多いコーカサスオオカブトなどは特に注意が必要です。





それでは ネプチューンの現地生態についてザックリと・・・

ヘラクレスと混生していますが 

本種の方が個体数は少ないとされています。


高温を好みません。 

標高2000m付近の湿度の高いところに棲息しており

気温は日中でも23度くらい

明け方の気温14.8度の時でもライトに飛来したことがあるそうです。


発生期は雨季の始る4月から7月初めころ。

野生での寿命は不明ですが

飼育では上手に飼うと1年くらい生きます。


参考文献:鈴木知之,2005,クワガタ・カブトムシ飼育大図鑑,世界文化社.