クワガタ~スズメバチ等の覚書

   Photo & Text by こよみ

ルイスツノヒョウタンクワガタ・2-成熟速度

2019-04-21 23:13:30 | ルイスツノ(和歌山)

今日はルイスツノヒョウタンの割り出しを行いました。



*タイトルにNo.がある記事は
カテゴリから入ると飼育過程などがつながります。


ルイスの成熟速度

管理温度:16度前後~26度前後(緩やかな季節感)

飼育規模:2Lブロー容器(白枯れ朽木発酵マット埋め)

記事の期間:2018年9月~2019年4月21日



         

2018年4月中ごろに羽化した個体(野外個体)の

次世代新成虫が本日得られました。





ルイスの性成熟速度は速く

羽化から5か月経過した9月中旬には既に次世代幼虫が見られ

容器側壁では卵の確認もできました。


↓ 底部の卵(画像中央)2018年9月16日撮影 

↓ 側面の卵 2018年9月16日撮影



9月の自然温で卵から孵化までは19日でした。

↓ 9月17日産卵~10月6日孵化





卵は親虫が作った坑道付近に比較的接近した状態で産み付けられていました。

また、坑道内を移動する親虫の姿もありましたが

与えていた昆虫ゼリーは食べた痕跡らしきものがありませんでした。


↓ 卵は近い場所に集中 2019年9月16日撮影

↓ 左下方には初齢幼虫(2019年9月20日撮影)



4月21日

割り出すために容器のふたを開けてみると

レンコンのようになった朽ち木が見えかなり利用された感じでした。


↓ 割り出し直前(2019年4月21日)



水分多めのマットと朽ち木を崩していくと

次から次へと新成虫が出てきます。







↓ 羽化当日と思われる個体

↓ 羽化中





今日の割り出しで得られた新成虫は28頭

親虫と合わせると31頭がブロー容器でひしめき合っていたことになります。


↓ 黒い3頭が親虫



次世代のほとんどは蛹室から発見したテネラルでどれもこれも赤みがあります。







また、親虫より大きく育っていました。

ルイスは、赤みの残ったまま活動に入るため

次の割り出し時には色による親子の区別は難しいかもしれません。


↓ 4頭いた親虫は3頭になっていた







先述の温度管理ではルイスツノヒョウタンクワガタは

羽化から4か月ほどで産卵をはじめ

その卵は半年ほどで羽化に至りました。

今日割り出した新成虫は

おそらく秋までに産卵をするものと思われます。


↓ 今日から新しい環境でスタート



親虫とともにこれまでより少し広い容器で飼育を続けます。


おまけ

下の画像の大きいハサミは

以前から気になっていた割り出し専用具です。

3000円以上もするため購入には躊躇していた品です。




今日グランディスの割り出しに初めて使ったので

その感想を・・・

重いですがざっくり崩すときや硬めの材割りには向いていました。

繊細な崩しが必要な場面では先が丸いので使いこなせず

ホームセンターの 〜300円ハサミのほうが重宝しました。


グランディス(インド)のほうは昨年秋から軒下自然温管理でしたが

母虫と初齢が1頭出てきました。




日本の寒い冬を親子でやり過ごしていたのです。

暖冬だったとはいえ氷点下の日もあったはずです。

この耐寒性は想定外でした。


ルイスツノヒョウタンクワガタ

2018-06-03 22:49:55 | ルイスツノ(和歌山)

フィグルス系 FIgulusのこと

クワガタムシの中には*チビクワガタ亜科というグループがあり

日本には下記の2属7種が知られています。

*ここでは下記の種をチビクワガタ亜科FIGULINAEとしましたが
研究者によって考えは異なり、定まっていません。


ツノヒョウタンクワガタ属

ルイスツノヒョウタンクワガタ Nigidius Lewisi
体長:12.0~18.0mm
羽化後3~4か月ほどで繁殖可能
孵化から羽化まで約6か月
成虫の寿命は複数年

↓ 奄美大島産


チビクワガタ属

オガサワラチビクワガタ  FIgulus boninesis boninesis
体長:約17.0~20.0mm
幼虫期間は3~半年ほど
羽化翌年の春に繁殖すると思われる
成虫の寿命はチビクワガタ等より短い

↓ 母島産


ナコウドジマチビクワガタ(妁島亜種)FIgulus boninesis Karubeei
体長:18.5~20.0mm
基亜種に比べ、黒味が強い

チビクワガタ  FIgulus binodulus
体長:約9.0~16.0mm
卵から羽化~活動まで約2か月半
成虫の寿命は複数年

↓ 兵庫県産


マメクワガタ  FIgulus punctaus
体長:約8.0~12.0mm
年2~3化の発生
幼虫期間は3~4ヶ月
親虫は幼虫が終齢になるとコロニーから出ていく


↓ 兵庫県産


ダイトウマメクワガタ  FIgulus daitoensis
体長:約8.5~13.0mm
親虫は幼虫期間内にコロニーから出ていく
羽化した新成虫は2~3か月で繁殖可能

フィシコリスマメクワガタ(イオウマメ)FIgulus fissicollis
体長:約7.0~10.0mm
分布地へは関係者以外入れない
イオウマメクワガタとされていた個体群

↓ 東京都硫黄島産飼育個体



これらの種は生涯の多くを朽ち木の中で暮し幼虫の保護や養育を行う

家族性(亜社会性)を持つ種がいることも知られています。

↓ オガサワラチビ・ルイスツノ・チビ・マメ


フィグルス系は、どれも小型で雌雄よく似ており

人目にも付きにくいせいかあまり人気はありません。

しかしながら、それらの生態は未知なる部分が多くあると思えるだけに

興味の絶えることはありません。


↓ 手前からマメ・チビ・ルイス・オガワサラ・ヒョウタン

↓ 左:マメクワガタ 右:チビクワガタ

↑ 今のところ同属

チビクワガタ・ルイスツノに関しては過去にも飼育したことはあるのですが

その時はただ漠然と飼っていたみたいで特別なことを得た記憶がありません。

また、チビクワガタ属ではありませんが台湾や大陸に広く分布する

ヒョウタンクワガタ Nigidionus parryi という種は

オガサワラチビを巨大にしたような形をしており

これもまた朽ち木内を主な生活場所としています。

幼虫も細長系です。


↓ ヒョウタンクワガタ(台湾産)



↓ *幼虫は細長系で雌雄判別しやすい

↓ 判別結果




「世界のクワガタムシ大図鑑・6(むし社)」によると

ヒョウタンクワガタは1属1種で、触覚の第8-10節形状等の違いにより

チビクワガタやマメクワガ等とは別属と考えられています。


↓ ヒョウタン・オガサワラ・ルイス・チビ・マメ

↓ ヒョウタンクワガタ34+㎟ オガサワラチビ15+㎟

↑ 大きさは違うがよく似ている

↓ *蛹化~羽化(ヒョウタンクワガタ)





ヒョウタンクワガタは野外では30㎟強、飼育では34mmを超える個体も出てきます。

過去の観察では、坑道内での生活ぶりや幼・成虫ともに通信手段と思われる発音など

非常に興味深い生態の持ち主であることがわかりました。

↓ *オス 羽化直後は交尾器露出


↓ 腹部や中胸に発音の秘密があると考えられる



ルイスツノヒョウタンクワガタ

ここからがやっと本題です。

今年の1月に和歌山県の太平洋側で採集された幼虫を

無添加のマットに入れて飼育したところ4月には羽化が始まりました。


↓ 幼虫はマメクワより細長い(2018年2月17日) 




↓ 蛹室は狭い(2018年3月28日)



チビクワガタやルイスツノのように

形態に性差の少ない種は、幼虫・蛹期に交尾器形態で判別すると確実ですが

人工蛹室での羽化は、共生酵母菌類取り込み(メス)の観点からあまりお勧めできません。


↓ ルイスツノ蛹 上:オス 下:メス


↓ 2018年3月30日



↓ 独特のオオあごが見える







↓ 蛹と部屋の隙間はあまりない



↓ 前胸背板が茶色く色づき始めたら翌~翌々日に羽化



↓ 羽化・メス(2018年4月15日16:20)







↓ 中央の個体は死亡





↓ 羽化から約24時間経過・オス(2018年4月22日)


↓ 羽化から28時間経過・メス



ルイスツノは、蛹から羽化までの期間は20日前後でした(管理温度22±℃)

羽化した4頭の成虫は2Lブロー容器で飼育を開始しています。

容器の中にはシイと思われる白枯れ朽木とゼリーを入れ、周りを発酵マットで埋めました。





現在は少しずつ坑道が増える感じで

3頭ほどが一か所に集まったり、離れたりする様子が見て取れます。

これからどうなるかはわかりませんが

フィグルス系は場所をとらないので管理は楽です。


↓ ルイスツノとマメクワガタの飼育



*はアナログ写真複写

参考文献:

藤井弘・発音源の調査及び資料提供 / 永井信二, 2002.

「発音するクワガタムシ ヒョウタンクワガタ」
 LUCANUS WORLD No33,株式会社環境調査研究所.

藤田宏,2010,世界のクワガタムシ大図鑑6,むし社.

岡島秀二・荒谷邦雄 監修,2012.日本産コガネムシ上科標準図鑑.
 株式会社学研教育出版.